化雲「空前絶後の大お化け!」

作品集: 最新 投稿日時: 2009/11/21 18:21:31 更新日時: 2009/11/21 18:21:31 評価: 22/22 POINT: 149 Rate: 1.51
 




「ああ、ひもじいなあ」
 秋の宵にカランコロンと下駄の音を響かせながら、一人人気の無い道を行く少女がいる。
 雨が降っているわけでもないのに、茄子のような紫色した傘を差して歩く彼女は、唐傘お化けの多々良小傘である。
「第一、最近は人間と妖怪の仲が良過ぎるような気がするのよねぇ。里の夜店じゃ一緒になって騒いでるくらいだし」
 里外れの方角へ向かいながらそう独りごちる。先程まで飲み屋の前で待ち構え、人間と見るや出会い頭に脅かしてみたのだが……お酒をたらふく飲んですっかり出来上がっている彼らには、どういうわけか全く通用しなかったのである。
 精一杯怖い顔をして「うらめしやー!」と力んではみたものの、「おう嬢ちゃん腹減ってるのかい? ならこいつでなんか食ってきなよ、ほら裏の飯屋でさぁ」なんて駄賃を渡され、挙げ句の果てにわしわしと頭を撫でられる始末である。流石にこれは精神的ショックが大きかったようで、彼女の心には一足早く真冬の寒風が吹き荒れた。
 堪らず里の商店街から逃げ出してきたが、胸の内にぽっかり空いた風穴は埋まるべくもない。
 ――せめてこう、誰か一人でも驚かせてやりたい。
 そうすれば少しは気も紛れるのにな、なんてとぼとぼ進んでいると。ふと、真新しい平垣の屋敷が目に入った。
 こんな大きな家を建てるなんて、一体どんなお大尽が住んでいるのか。
 そしてそういう類のお金持ちは、物を大事にする心なんて持ってやしないんだろうなと思い至ると、彼女はどうにかしてこの屋敷の住人を驚かせてやりたい気持ちになった。
 心なしか重たい身体に鞭打って、門の正面まで駆け寄る。と、そこで表札が目に留まった。
「なになに……命蓮寺?」
 見れば彼女の背丈の倍は有ろうかという木製の扉は開かれていて、その門構えの向こうには石畳が真っ直ぐに伸びている。目で追った先にはなるほど仏閣がそびえていた。
 ははあ、と一人頷いて、
「ここが、最近噂のお寺ってわけね」
 風の噂に聞く限りでは、なんでも若くて美しい尼さんが住んでいるとのこと。そして寺の癖に、人間のみならず妖怪たちにも評判が良いらしいのである。
 彼女もその風聞に興味を抱き、一度どんなものか見に行ってみようと思ってはいたのだが……古典的妖怪にあるべき「人間の驚かせ方」の勉強に忙しく、ついぞ忘れてしまっていたのである。
「!」
 ふと視界の内に動くものの気配を認めて、小傘は息を呑んだ。とっさに門戸の影に身を潜め、注意深く様子を窺う。
 ……こちらに背を向けて立つ一つの人影。どうやら黒っぽい頭巾を被っているらしく、男か女かまでは判別出来ないが……箒を手にして、境内を掃き清めているようだ。
(この寺に住んでいる尼さんかなあ……うん、これはチャンスだわ!)
 目の前の光景と聞き及んだ噂とからそう判断して、小傘は人影に忍び寄った。
 石畳に下駄の音を響かせぬよう僅か宙に浮いて、尼さんに気取られぬよう息を潜めつつ。
 そうして背後から、
「うらめしやー!!」
 腹の底から声を張り上げ、傘をふりふり恨めしげなポーズを取る。
 途端、尼さんの動きがピタリと止まった。
(ふふふ、あまりの恐ろしさに声も出ないみたいね)
 胸中でそうほくそ笑む小傘。果たしてどんな顔をしているのか、この目で確かめてやろう――そう思って尼さんの肩を掴む。
 すると彼女はゆっくりと振り向き、
「……私に何か用ですか?」
 ――ギロリ、と。
 剛殻鬼眼、大迫力の禿親父が、食いしばった歯も剥き出しに小傘を睨み付けてきた。
「……っ、きゃああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
 血も凍るような叫び声を上げたのは、果たして小傘の方である。



「……ああ、びっくりした」
「いきなり人を脅かそうとした罰ね。自業自得だわ」
 思わず腰を抜かし、もんどり打って倒れた小傘。それを介抱しつつ、頭巾の尼さんこと雲井一輪は苦笑した。
「うう、せっかく人間だと思ったのに……まさか妖怪だったなんて」
 恐怖に歪んだ表情を期待して振り向かせてみたら、そこにあったのはいかつい禿親父の怒り顔である。その眼光の鋭さだけで人も殺せそうな勢いに、小傘としてはただただ震え上がるしかなかったのだ。
 彼女を心底怯えさせた禿親父面――雲山という名の入道らしい――は掌サイズに縮んだかと思うと、一輪の顔から離れ今はその肩口にふわふわと浮かんでいる。力感無くたなびくその姿は、なるほど雲霞のようだと小傘は思った。
 一方苦笑しつつ彼女を見下ろしている一輪はといえば、恐ろしい親父の面が剥がれると何のことはない――生真面目そうな雰囲気を湛えた少女の容貌をしていた。
「残念だったわね。ついでに言うと、ここのお寺に住んでいるのは皆妖怪よ」
「ええっ、そうなの? ……がっかり」
 一輪の言葉に項垂れる小傘。さも残念そうに肩を落として、しょんぼりしてしまった。
「まあそんなに落ち込まなくても。失敗は誰にでもあるものでしょ?」
 小傘の放つ無念オーラに憐れみを催したのか、一輪は彼女の肩を叩いてそう慰めてやる。
 すると小傘は伏していた顔を上げ、涙ながらに語り出した。
「……一度や二度ならそうかも知れないけど……もうこのところずっと、人を驚かせられないの。このままじゃ私、力を無くしてただの傘に戻っちゃうかも。ああ、人を驚かすことだけが、私の生き甲斐だっていうのに」
「……ああ、貴方は人の身体じゃなく心を糧にする種類の妖怪なのね」
「うん。その為に日夜努力してるんだけど、どれもこれも上手くいかなくて。私、他の妖怪みたいに強いわけでもないし、そこの雲入道みたいに怖い顔してるわけでもないし。ううう」
 そうして再び顔を伏せ、さめざめと泣いた。
「人を怖がらせる方法、ねぇ。困ったわ」
 腕組み思案する一輪だが、にわかには思いつかない。第一、彼女を始め命蓮寺の妖怪たちは皆、寺の主であり彼女が姉御と敬う尼君――聖 白蓮の意向に従い、不必要に人間と事を荒立てないよう言われているのである。千年の昔時ならまだしも、妖怪を見慣れているこの里の人間たち相手に恐怖心を煽る方法など彼女には見当も付かなかった。
「……って、雲山? なに?」
 ふと一輪は肩口の雲山へと視線を向けると、そのままふんふんと頷いた。ややあって、彼女は再度小傘へと向く。
「……最近の妖怪にしては感心なことだ、なんとか協力してやりたい、と雲山が言っているわ」
「え?」
 その言葉に目をしばたかせる小傘。一輪の肩に留まる雲山へと視線を向けると、彼は鷹揚に頷いた。
 時代がかった気質の雲山は、顔こそ恐ろしいものの根は優しい親父なのだ。妖怪としての本分を全うしようと努力する小傘の心意気に賛同し、その助けになってやりたいのだという。
「でも急にそんなこと言われてもねぇ……私にも寺の務めが有るし」
 小傘に雲山の意思を通訳しつつも、しかし自身の役目上逡巡する一輪。
 その様子を見上げていた小傘は不意に立ち上がると、ふるふると左右に首を振って辞した。
「ううん、その気持ちだけで嬉しいから。……それじゃあどうも、お邪魔しました」
 二人に背を向け、傘を掲げて歩き出す小傘。
「あ……って、なに? ここで見捨てちゃ漢が廃るですって? ああもう判ったわよ雲山……貴方、ちょっと待って!」
「?」
 一輪が制止の声を掛けると、小傘が立ち止まって振り向く。
「ご免なさいね、雲山がどうしてもって言うものだから……はい、これ」
 一輪は言って懐から金の輪っかを取り出すと、なにやら念を込めてから、小傘へと手渡した。
「これは……」
 首を傾げる小傘に、一輪が説明する。
「入道を操れる道具よ。しばらくの間、貴方に雲山を貸してあげるわ」
「えっ、いいの?」
「勿論……というか、むしろ押し付けるみたいで悪いけど。ただし全部じゃないわ、貴方に貸すのは半分だけ」
「半分……?」
 一輪の言葉に再度疑問符を浮かべる小傘。
「そう。私にも仕事があるから、雲山を手放すわけにもいかないのよ」
 一輪はそう言って、先から携えていた輪っか――小傘に手渡したのと全く同じ意匠のものだ――を見せる。
「でも雲山は雲で出来た入道だから、複数に分けることが出来るの。だから半分。期限は……そう、貴方と雲山が協力して人間を驚かすことが出来るまで。それでいいわよね、雲山?」
(うむ、心得た)
「っ!?」
 その時、何者かの声が頭の中へ直接聞こえてきて、小傘はぎょっとした。
「貴方にも聞こえたでしょう? それが雲山の声よ」
 言いつつ呆れたような笑みを浮かべる一輪。
「首尾良く事が運んだら、その法輪を返しに来てね。さあ、姐さんに見つからない内に行った行った」
(応。さあ行くぞ唐傘の娘よ)
「あっ、う、うん」
 一輪にお辞儀をし、命蓮寺を後にする小傘。
 こうして、唐傘お化けと雲入道という奇妙なコンビが結成された。





 明くる日。
「雲山を借りたのはいいけれど、はてさて一体どうしたものやら」
 一際高い木立の上から人里を眺めつつ、思案する小傘。手にした金の輪っかからは掌サイズの雲入道こと雲山――厳密にはその分身みたいなものらしいが――が顕現しているのだが、彼も小傘同様眉間を顰めて困り顔だ。
 最初は、手っ取り早く雲山を巨大化させその恐ろしげな容貌で人々を怖がらせようと考えた。だが、それでは人間たちを驚かせているのは結局雲山のみであって、問題の根本的な解決――小傘のこれからに対し何かしら指針を示すようなものとは成り得ない。
 外見のインパクト抜群な時代親父を拝借したはいいものの、その使い道に返って頭を悩ませる羽目になってしまった。
 こうして一晩中うんうん唸っている内に、いつの間にやら朝になってしまっていたのだった。
「うーん。人を驚かすにも意外と知恵が要るものねえ」
 小傘と雲山、二人揃って溜息を吐く。
 とそこで、不意に何者かの影が彼女らの頭上へ差した。
「唐傘お化けに雲入道……あやや、何とも珍しい組み合わせで。こんな朝も早くから一体なんのご相談ですか?」
 そう言って二人の目の前に現れたのは、
「……天狗?」
「はい。鴉天狗の射命丸 文です。以後お見知りおきを」
 宙に浮いたまま、文は慇懃に一礼する。
「はあ、どうも……多々良小傘です」
 呆気に取られて気の抜けた返事をする小傘。
 対して文は頭を上げると、懐から手帳とペンを取り出しつつ雲山の方へ視線を向ける。
「えと、こっちは……入道の雲山だ、って言ってるわ」
 そう雲山の言葉を代弁する小傘。身体が雲で構成されていて且つ不定形な雲入道は、肉声で喋ることが出来ないらしい。小傘が手にした法輪は彼の制御装置であると同時に、意思疎通用の器具でもあるのだった。
 一方文は手帳を開いて紙面にペンを走らせつつ、
「唐傘お化けの多々良小傘さんに雲入道の雲山さん……っと。さて自己紹介も済んだところで、先程の質問についてお答え願えませんか?」
 愛想の良い笑みを浮かべてそう尋ねる。天狗と比べて明らかに格下な妖怪たち相手にこの態度、どうやら文は彼女らを取材する気満々らしい。
「え? ええと……」
 顔を見合わせる小傘と雲山。
 もっとも初対面である小傘らからしてみれば、天狗の挙動が不審なものとして映るのもやむを得ないことである。
 しかしそんな警戒心を目敏く感じ取って、文は素早く言葉を繋いだ。
「あ、申し遅れました。私、新聞記者をやってるんです。それで何か記事になりそうなものごとを探して、色んな方々からお話を伺うのが仕事でして……。だからお二人に何か悩み事が有るのなら、是非お聞かせ願えないかなと。もしかしたらお二人の力になれるかも知れませんし、それで私も新しい記事が書けるかも知れないので」
(どうしよう。信用していいのかな?)
(まあ、話したところで不利益となるわけでもあるまい。ならいっそ助言を請うのも手だろうて)
 小傘は雲山と思念で意見を交わし合うと、文に向き直って話してみることにした。
「私、人間を驚かせる方法を探してるの」
「……はあ」
 予想外の答えに、今度は文が間の抜けた声を発した。が即座に気を取り直してその意図を検める。
「ええと……それはこう、人間をうわっとかきゃあっとか言わせて怖がらせたい、ということですかね?」
「そう。でも最近の人間は化け傘くらいじゃ驚いてくれなくて……おかげで私は、ずっと寂しい思いをしているの」
「ははあ、成る程。それでその方法を雲山さんと相談していたわけですか」
「うん」
 こくこく首肯する小傘。一方文は顎に手をやって、考え込む素振りを見せる。
「ふむ……。ではお二人の得意なことを教えて貰えますか? それを参考に、私も何か考えてみましょう」
「本当!?」
「ええ」
 頷きニコリと微笑む文に、小傘もようやく明るい表情を見せた。
「えっと、得意なこと、得意なこと……うーん?」
 が、そこで小傘は考え込んでしまう。
「あー、じゃあまずは普段どうやって人間を驚かせようとしているのか、試しにやって見せて下さい」
 浮かべた微笑を苦笑に変えて文が提案すると、早速小傘は木立を離れ宙に浮いた。
 そして息を大きく吸い込むと、
「当たって砕け、うらめしやー!!」
 それまで畳んでいた傘をぱっと開き手足を目一杯広げて、あらん限りの大声で叫んだ。
 しかし、それを間近で観察していた文の反応は薄い。眉一つ動かさず、小傘に訊いた。
「……それだけ?」
「うっ……こ、これだけ」
 言葉尻が小さくなっていったのは、意気消沈の現れなのだろう。文はやれやれと肩を竦める。
「それじゃあ誰だって驚きませんよ。ちっとも怖くないし迫力も皆無……それどころか、むしろ可愛らしく思える程です」
 言いつつ内心写真に収めておけば良かったかと悔やむ文だが、一方小傘は愕然と叫んだ。
「がーん! なんと、わちきが可愛いともうすか?」
「……ショックのあまりキャラ変わってません? まあでも、それじゃあ通用しないのは確かですよ」
 小傘と文のやり取りを端から見ていた雲山までもが、うんうんと頷き同意する。
「そ、それじゃあ一体どうしたら……」
 頭を抱えて暗くなる小傘。文はそんな彼女に近付くと、小さく震える肩へとそっと手を置いた。
「うう、慰めてくれるの?」
 感激しつつ顔を上げる小傘だが、
「ひっ!?」
 見上げた先の文の表情はしかし、悪鬼羅刹の如くであった。
 泣く子も黙るを通り越してショックで永眠してしまいそうなくらい剣呑な眼光、それで小傘にガンくれつつ底冷えするような声音で一言、
『恨めしい……!』
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
 声にならない叫びを発して、恐慌に陥る小傘。
「と、どうですか? このぐらいやれば怖がって貰えるんじゃないかと……って、聞いてます?」
 空中にも関わらず腰を抜かしてしまった小傘は、必死に手足をばたつかせて文から距離を取ろうと試みる。
 それに文は「ちょっとやり過ぎましたかね」なんて後頭部を掻きつつにじり寄ると、逃げる小傘をふん捕まえて言い聞かせた。
「大丈夫ですよ、さっきのは飽くまでお手本です。ああいう風に不意を突いて凄めば、それなりに相手を驚かせることが出来るでしょう。まあその怯えぶりを見るにつけ、身を以て理解出来たかと思いますけど」
 小傘は涙目でこくこくと頷くが、
「でも、貴方みたいな怖い顔出来る自信が無い……」
 なんて情けない声を上げた。
「そうですか? じゃあそれはこれから練習するということで……他に特技は?」
「えっ? ……ああ」
 話題が逸れたことに胸を撫で下ろしつつ、小傘は答えた。
「そうだ。光れるわ、ぴかーって」
 小傘は言って文から離れると、技の名前を高らかに宣言した。
『からかさ後光!』
 応じて彼女の後背から眩い光が生じ、辺り一面を真白く照らした。
「へぇ、こっちは大したものですね」
 腕を翳して光を遮りつつ、一転感心する文。まもなく発光が止むと、今度こそ得意げな様子でウインクする小傘が目に入った。
 しかし化け傘が何故光れるのかしらなんて疑問に思いつつも、取り敢えず手帳に書き留めておく。
「よしと。あと他には?」
「え……これで全部、かな?」
 一変気まずそうに声を上げる小傘。
「そうですか……」
 前途多難と嘆息しつつ、文は気を取り直して雲山へと向く。
「では、次は貴方です。どういったことが得意でしょうか?」
 文の問いに雲山は承知したとばかりに頷くと、その掌サイズの身体をたちまち膨れ上がらせた。
 小さな禿親父の顔だけだった先程までとは異なり、果たして彼が変じたのは――身の丈五丈の逞しい図体に巌の如き両の拳を備えた、憤怒の形相露わな大魔神である。
「おー、まるで巨人ね。河童の蒸気人形ほど大きくは有りませんが、迫力はこちらの方が上でしょうか。……でも」
 文が手でひさしを作って見上げる先の入道は、その体格の立派さに反してあまりに希薄であった。
「薄過ぎて、空が透けて見えちゃってますねえ」
「ほんと、水に濡れた船幽霊の服みたいにスケスケだねぇ。……え、雲が足りないせいだって?」
 雲山曰く。雲入道である彼は、雲塊ひしめく高所や湿度の高い雨の日は強く大きくなれるものの、反面晴れの日や乾燥した場所では薄く小さくなってしまうのだという。その上今は一輪と小傘の下へ二分割されている状態だから尚更なのだった。
「これじゃあ自慢の拳もすり抜けてしまうわい、だって」
「うーん、まあ驚かすだけなら大きいに越したことは無いんですが……もう少し密度上げられます?」
 文に請われて雲山は頷くと、今度は身の丈八尺程度の大男になる。真っ白い身体は光を通さず、不意の風にも揺らぐことは無い。流石にここまで縮むと、叢雲といえど十分な密度を持っているようである。
「あ、ちゃんと触れる。いやそれどころか結構硬いんですね、これで殴られたらかなり痛そうです。メモメモ、と」
「おー、今度は透けないのね。じゃあこれならどう? 『からかさ驚きフラッシュ』!」
 雲山へ向けておもしろ半分に閃光を放つ小傘だが、それにも動じる素振りは見えない。光を透過するどころか雲山そのものに影が出来、また彼の至近で背後から光を浴びた文の影も、雲山に映って……。
(んっ? ……雲、光、影が映る、巨人、驚く……あ!)
「そうだ、これです!」
 その光景になにかしらのインスピレーションを得たのか、突如快哉を叫ぶ文。
「えっ? なになに?」
 それに不思議そうな視線を向ける小傘と雲山だが、文は実に楽しげな笑みでそれに応えた。
「妙案ですよ。これなら、お二人の力でどんな人間だろうと震え上がらせることが可能でしょう」
 そう豪語する文に小傘は目を輝かせて食い付いた。
「どんな人間でも……? じゃあ例えば、私のことを鼻で笑ったあの巫女とかでも怖がらせてやれるかな!?」
「博麗の巫女ですか? そうですねえ、修行をサボりがちで妖怪についての知識も半端な彼女なら、引っかかってくれるかも知れません。……なに、そんな不安げな顔をしなくとも大丈夫です。以前同じような相談を持ち掛けてきた妖精たちに助言をしてあげて、まんまと巫女を嵌めてやった経験も有りますし。私に任せて下さって構いませんよ」
 胸を張って笑う文に、小傘は感極まって抱きついた。
「ああ……! やっと、やっとあの憎い巫女をぎゃふんと言わせてやれるのね? お化けやっててよかったわ!」
(……上から78のB・54・79ってとこね。後ほど、この娘のプロフィールに書き加えておきましょう)
 そんな不埒な考えをしかしおくびにも出さず、文は小傘の背中をぽんぽんと叩きながら耳打ちする。
「それでは、雨の日を待って予行練習、然る後に決行といきましょう。段取りは私が立てておきますので、次に朝から雨が降り続く日の、昼前にここで落ち合うとしましょう。いいですね?」
「ええ!」
「そうと決まれば、早速準備に取り掛からなくては。それでは失礼します」
 文は小傘から離れると、踵を返してその場から飛び去った。
 途中手帳を開いて覚え書きに目を通す。そうして思考を整理しつつ、不敵な笑みを浮かべて呟く。
「ネタは……これでいきましょうか。さて、上手くやらないとね」





 博麗神社。
 その日は朝から雨が降り続いていて、冷え込みもいつにも増して厳しい。
「……うう、今日は一段と冷えるわねぇ。肩が」
 そう言って、特に意味も無く露出された両肩をさするのは神社の巫女さん博麗霊夢である。こんな雨の日は掃除をする気にもなれず(元々無精なような気もするが)、居間にて熱いお茶を啜っていた。
「――ああ、お茶がおいしいわ」
 それからお茶請けに用意した砂糖菓子を摘んで口に放ると、控えめで上品な甘さがじんわりと広がった。
「…………」
 うっとりと至福の笑みを浮かべる霊夢。その光景を目に出来ないのが口惜しい限りではあるが、ともかくそんな穏やかな空気を突如として破る者が現れた。
「れ、霊夢! 大変だぜっ!!」
 すぱーん、と障子を開き血相を変えて飛び込んできたのは、普通の魔法使い霧雨魔理沙である。
「ちょっといきなりなんなのよ、騒々しいったらありゃしないわ!」
 憩いの一時を邪魔されて、不機嫌も露わに怒鳴る霊夢。
「ああもう、その上濡れ鼠じゃないの! 畳みが濡れちゃうから出て行ってよ」
「いやそれどころじゃないんだよ。いいから私の話を聞いてくれ」
 魔理沙はよほど慌ているのか、雫の滴る帽子を脱ぎもせずに続けた。
「巨人だ巨人、巨人の妖怪! 見たんだよ、この神社の側で!」
「え? 巨人?」
「そうそう、こないだ天狗から貰った新聞に書いてあったあれだあれ……「たいさいなんちゃら」ってやつ! きっとあれに違いないぜ」
 そこで、居間の隅に積んであった新聞の山を見つけた魔理沙は、寄ってごそごそと漁り始める。
「おっ、あったあった。ホラこれだよこれ」
 言って魔理沙が差し出すと、霊夢も渋々受け取った。
「――ああ、これね」



 思い返せば数日前のこと。
 その日も特に異変が起きることもなく、霊夢は暇を持て余していた。仕方無しに落葉の溜まった境内を箒で掃き清めていると、そこへ天狗の射命丸 文がやってきた。
「文々。新聞号外だよー。そこな巫女さんもお一つどうぞ」
「ええ、要らないわよ。読まなきゃその内悪さをする新聞なんて厄介でしかないもの。……よくよく考えてみれば、そもそも受け取らなければいいだけなんじゃないかと」
 妖怪『紙舞』の事を思い出し渋い顔をする霊夢だが、文は負けじと食い下がる。
「なにを仰います、本当にタチの悪い新聞は窓を突き破って勝手に入ってきた挙げ句、目にしただけで寿命が縮む始末なんですよ。誰の手にも渡らず恨みを募らせた新聞紙は、一層凶悪な妖怪に姿を変えてしまうのです。私のやっていることは、それを未然に防ぐ意味もあるわけで」
「じゃああんたら天狗が新聞作るのやめればいいだけなんじゃあ……」
「それとこれとは話が別です! というわけではい、今ここで読んじゃって下さいな。そうすれば後で面倒くさがる羽目にはならないでしょう?」
 旗色の悪くなった文は慌てて誤魔化すと、霊夢に新聞を押し付けた。
 仕方無く、その紙面に目を落とす霊夢。
「なになに……霧の山麓に太歳星君現る?」
 なんでも、正体不明の巨大妖怪が幻想郷中のあちこちに出没しているらしいのだ。紅魔館の門番曰くそれは『太歳星君』という名の凶神で、凶兆の前触れとされる恐ろしい化け物とのこと。
「巨人って、何を今更。これ、こないだの河童のバザーで使われた蒸気人形のことなんじゃないの?」
 霊夢が嘆息しながらそうぼやくと、文は不服げに口を尖らせた。
「いいえ、記事をもっと良く読んで下さいよ。確かに『非想天則』はそれを知らない者たちから巨大妖怪と誤認されたようなのですが、肝心なのは『それとは別に、やっぱり巨大妖怪が居るんじゃないか』ってことなんです」
 霊夢が再度記事に目を通すと、確かにそんな風に書いてある。やれ巨大な人影を魔法の森で見たとか、紅魔館近辺に出没したとか。また里の人々も山間に巨大な黒い影を目撃との証言をしており、状況からいってどうやら河童のアドバルーンとは別物のようである。
「ふうん……」
 が、どうにも胡散臭いといった顔付きの霊夢である。それを見て文が更に補足した。
「どうにも、事件はまだ解決していないようなのですよ。森の人形遣いさんも、来るべき日に備えて対策を練っていると言っていましたし、門番さんもお昼寝の時間を返上して功夫を積んでいるとのことですし……。これは、異変解決の専門家たる博麗の巫女として見過ごせない状況なのでは?」
「そう言われてもねぇ。自分の目で見てみないことにはなんとも……。まあ、遭ったら遭ったでその時どうするか決めるわ。物騒な奴だったら懲らしめればいいしね」
「……はぁ。貴方は本当お気楽ですね。ともかく、雨の日に現れるそうなので。用心していて下さいね」



 改めて新聞を読みつつ、文とのやり取りを思い出す霊夢。
「で、魔理沙はそいつを見たっていうのね?」
「ああそうだ。神社の側まで来たらさ、階段横の林の中に黒い影がぬぼーっと突っ立ってるもんだから、慌てて近付いてみたんだが……不意に消えちまってさ。仕方無く地面に降りて林の中を探してたら、出くわしたんだよ。見上げるぐらいにでっかい、一本角の黒い巨人に」
「……」
 興味深そうに聞き入る霊夢に、魔理沙は身振り手振りを加えつつ説明する。
「そこで私は、天狗の記事を思い出してな。ここは一丁霊夢より先に退治して、名を上げてやろうかと思ったんだが……どういうわけか、効かないんだよ攻撃が」
「へえ、どうして?」
「どうしてって……そんなの判らんが、とにかく全部すり抜けちまうんだ。まるで手応えが無くてさ。どうしたものかと考えてる内に、今度はあいつの目玉がびかーって光ってな……うっかり雨具を焼き払われて、それでこうして濡れ鼠ってわけだ」
「それでこうして逃げてきて、うちの畳を濡らしてるってわけね。なるほど」
「うぐ……」
「それなら仕方無いわ。私が様子を見てくるから、魔理沙はお風呂にでも入っていて」
「お、おう」
 霊夢は居間を後にすると、早速妖怪退治の準備を始めた。
「さて出発……って、およ?」
「――ああ、居た居た!」
 意気揚々と出掛けようとした霊夢の前に、突如として射命丸 文が降りてくる。
「大変です、神社の側に『太歳星君』が出ました!」
「知ってるわよ。言われなくても、そいつを今から退治しに行くわ。……で、なんであんたはそいつの取材もせずにここに来てるわけ?」
 行った先で出くわすならともかく、事件の現場を離れるなんて格好のネタをみすみす見逃すような行動を取るとは、一体どういう風の吹き回しか。そこに疑問を抱いた霊夢は眼光鋭く文を見据えるが、
「写真を撮りたいのはやまやまですが、生憎こういう有様で」
 と、文は無残に破壊された写真機を霊夢に見せる。
「それと、あまり猶予が無いので手短に教えますよ。あれから『太歳星君』について調べたのですが、どうやら本当にタチの悪い奴らしいのです。地面から掘り起こされて目覚めてしまうと大地震を始め様々な凶事を引き起こすのですが、それを阻止出来るのはごく限られた期間だけ。曰く、人々の前に姿を現している内に、お札を百枚貼り付けて封印してしまわないといけないらしいのです」
「百枚!? なんて面倒臭いのかしら」
「驚くところはそこですか!? ともあれ、一刻も早く対処しなければとんでもない災禍を振りまくでしょう。場所が博麗神社の側なら尚更、貴方に退治して貰わなくては」
「と言われても、私はそんな変な奴掘り起こした憶えは無いし……そもそも百枚もお札有ったかなあ」
 言いつつ懐を探る霊夢だが、文は尚も真剣な口調で彼女を諭す。
「何度も言いますが、そんな悠長なことを言っていられる場合じゃありません。もしかしたら、件の間欠泉から出てきてしまった可能性も考えられますし……それに要石が挿さっているとはいえ、どうなるかは判りませんよ。また神社が丸潰れ、なんてことになったら困るでしょう?」
「……九十九、百っ、と。大丈夫ね、その倍は有ったわお札。じゃあ行ってくる」
「……まったく、判っているのかいないのか……」
 嘆く文を尻目に、霊夢は神社の軒先から飛び立った。





「それにしても、わざわざ雨の日なんかに出てこなくてもいいのに」
 雨足は朝方よりかは弱くなってきており、せいぜい霧雨といったところである。それでも濡れてしまうのに変わりはないわけで、天を覆う暗雲へと恨めしげな視線を送る。
「っと、あれね」
 まもなく、蠢く巨大な影を眼下に認める。しかし不意にその影が消えてしまったので、霊夢はやむなくその付近に降り立つことにした。
 神社の敷地内に鬱蒼と茂る木立。しかしそれはどこか整然とした気配があり、人の手によって植樹されたものであろうと霊夢は考えている。立ち並ぶ木々は一定の間隔を保っていて、程良く歩きやすい斜面ではあるが……どうしたことか霊夢が降り立つや否や辺りに濃い霧が立ちこめ始めたではないか。
 たちまち自分の向いている方角も判らなくなると、霊夢はいよいよ怪異の登場を察して身構える。
「さあ、来るなら来なさい『太歳星君』!」
 ――その呼び掛けに応えるが如く。
 霊夢の目前に霧がわだかまったかと思うと、そいつは真っ黒い闇のような巨体を現した。
 背の丈およそ三丈程度。見上げるばかりの巨体はしかし虚ろで、その輪郭はぼやけている。さながら影の集合体とでも呼ぶべき奇妙な姿だった。
 霊夢はその全貌を捉えるべく、注意深く観察する。
 巨人は虹のような光輪を背負っており、なるほど神様の端くれなのだと思わせる威厳がある。見上げた先の頭上には二本の角が生えていて、そこで霊夢は魔理沙の言葉を思い出した。……一本角と言っていたような気もするが、それは彼女の見間違いかなにかだろう。
「さて。それじゃあ早速、魔理沙の仇を取らせて貰うわよ!」
 幸い、巨人の方から仕掛けてくる気配が無い。霊夢は文の助言通りに懐からお札の束を取り出すと、その巨体相手に頭の先から爪先まで、万遍なく投げ付けてゆく。
 巨人は霊夢の攻撃にやや後退ったかと思われたが、回避行動を取るでもなくお札の群れを甘んじて身に受ける。……が、
「すり抜けた!?」
 巨人へと殺到したお札、そのことごとくが黒い身体に飲み込まれて消える。思わず攻撃の手を止める霊夢だが、果たして巨人は身動ぎもせず立ちはだかったままだ。
 文曰く「お札を貼り付ける」必要が有るというのに、これではまるで効いていないように思われた。
「それなら、直接貼り付けるまで……って、きゃあっ!」
 巨人の足下に走り寄ろうとした霊夢だが、直後彼女の目前に巨大な拳が振り下ろされる。
 寸でのところで踏み止まり事なきを得た霊夢だが、彼女の足下には拳骨型の深い窪みが刻まれていた。……まともに食らえば危ういだろう。そう霊夢は戦慄して、雨だか汗だか判らないもので背中を一層冷たくした。
 巨人からの第二撃に備える霊夢だが、しかし待てども攻撃を仕掛けてくる気配が無い。
「どういうことなの……?」
 正体不明意図不明の敵を前にして困惑する。だがこのまま睨み合いを続けていても埒が空かない。
 数分後、とうとう痺れを切らした霊夢は、叫んで攻撃を再開する。
「ああもう、こうなりゃヤケよ!」
 護符に退魔針、陰陽玉から大幣による打撃まで、およそ思いつく限りの武器を叩き込んでみる彼女だが、どれもこれもまるで手応えが無い。
「はぁ、はぁ……一体なんだってのよこいつ」
 徒労に終わって足が止まったその瞬間、久方ぶりの拳が飛んでくる。
「くっ!」
 ギリギリのところで亜空穴に飛び込むと、空間を渡って巨人の頭上へと移動する。そのまま急降下蹴りを見舞うつもりが、
「消えた!?」
 亜空穴から飛び出した霊夢の視界からは、綺麗さっぱり巨人の姿が失せていた。慌てて周囲を見渡すと、
「きゃ……!」
 突如下方から光線が飛来し、霊夢の脇を掠めた。運良く直撃は免れたものの、巫女服の片袖とスカートの布地が半分くらい消失してしまう。
 空中で体勢を崩した彼女は再度亜空穴を経由し辛くも地面に足を着けるが、そこを待ってましたとばかりに四方八方から拳の乱打が降り注ぐ。
 体裁を気にする暇も無く、それらを必死に躱す霊夢。
「うわっ! こ、このままじゃやられちゃう……! 神技『八方鬼縛陣』!」
 追い詰められ、あわやというところで結界の展開が間に合った。
 流石の拳も博麗の巫女渾身の結界には太刀打ち叶わず、弾き返される。
「ふう……」
 一息吐いて、改めて状況を確認する。しかし黒い巨体は何処にも見当たらず、周囲は依然濃霧に包まれたままだ。
「く……」
 呻いて、霊夢は八方鬼縛陣を解除する。彼女の技の内でも上位の術だけに、その維持には莫大な霊力を要するのだ。
(この状況はあまりにも不利だし、そろそろ一度引き上げた方が……!?)
 そう戦略的撤退を考え始めた霊夢だが、
 ――ぺちょり。
 と、何か冷たくてぶよぶよしたものが、唐突に彼女の肩口へと張り付いた。
「っきゃああぁぁぁぁっ!?」
 想定外の事象に思わず叫んで、慌ててその何かを振り払う。
 するとべちょっ、と地面の水溜まりに落ちたそれは、
「……こんにゃく?」
 突然降って湧いた、あまりにもこの場にそぐわないそれ。思わず呆気に取られた霊夢だが、――それが致命的だった。
 直後、どこからともなく現れた巨大な拳が彼女の真上から振り下ろされたのだ。



「…………ん」
 気付くと、霊夢は地面に倒れ伏していた。
 自分の周囲には窪みが出来ていて、茶色く濁った雨水が溜まっている。
(あれ……なんで私、水溜まりの中で寝て……って、)
「そうだ! 『太歳星君』は!?」
 叫んで半身を起こす霊夢だが、それによって身体のあちこちが軋みを上げる。
「いっ……!」
 全身を駆け巡る痛みに顔を顰めて、それでも気丈に周囲を窺う。
 何の変哲もない林の中。濃霧は晴れ、雨は既に止んでいた。おそらく自分に一撃喰らわせたであろう巨人の姿ももはや見えない。
「もしかして、もう消えちゃったとか? ……ど、どうしよう」
 出掛ける間際に文から聞いた話の内容を思い出して、身震いする。あれだけ厄介な奴なのだ、文の言葉もにわかに真実味を帯びてくるというものである。
「へ、へっくしょん!」
 身震いそのまま盛大にくしゃみをして、そこで霊夢は全身に奔る寒気を自覚した。
「か、風邪引いちゃうわ! 取り敢えず帰らなきゃ」
 震える身体を抱いて立ち上がる。と、その時上空から声を掛けられた。
「おーい霊夢ーって、うわ!? どうしたんだその格好!?」
 箒に跨って降りてきた魔理沙は、霊夢の見るも無惨な姿を目にして仰天する。
「全身どろんこ塗れじゃないか……えんがちょだぜ」
「うるさいわねっ、っくしゅん! と、とにかく帰るわよ魔理沙ぁ!」
「お、おう」



「――いやはや、上手くいきましたね」
 巫女と魔法使いが連れたって神社へと逃げ帰る様子を上空から眺めながら、文は愉快げにそう笑った。
「うん。ああ、あの時の巫女の表情ったら……思い出すだけでご飯三杯分の幸せが」
 うっとり呟くのは小傘である。人間の驚愕や恐怖の念を糧とする彼女にとって、博麗の巫女のそれは天上の甘露にも匹敵する。それが、自分が背後から投げ付けてやったこんにゃくに拠る成果なのだから、喜びもひとしおというものである。
 対して、小傘の側に浮かぶ雲山はというと、眉を顰めて複雑な表情をしている。
「雲山さんも大活躍でしたよねえ。――それとも、何か不服が?」
 文が雲山を覗き込むと、彼は静かに瞑目した。正々堂々を好む昔気質の頑固親父としては、このような奸計を好まないのである。だが喜色満面の小傘の手前水を差すわけにもいかず、その思いを胸の内に飲み込んだ。
「宜しい」
 文はそれを見透かしてか顔に笑みを戻すと、
「予行練習中にあの黒白魔法使いに目撃されてしまうという想定外の部分も有りましたが、概ねつつがなく進行しましたね。事前に綿密な計画を練った甲斐があったというものです。とはいえ、それをきちんと実行出来たのは小傘さんと雲山さんの連携プレーが有ってこそ。いやはや実にお見事でした」
 言って小傘と雲山に惜しみない拍手を贈った。
「そ、そこまで褒められると照れちゃうけど……。そうだ、それより貴方のアイディアの方が凄いと思うわ。私じゃ絶対、あんな複雑なやり方思いつかないもん」
「それだって、貴方の技からヒントを得ているんですよ。後光……私たちは『御来迎』と呼んでいますが、それの自然現象版を応用したに過ぎません」
 特定の条件下において、雲や濃霧は日光を背にして立つ人物の影を大きく映し出す事がある。その時映し出された影の周りに虹の輪が出来るのだが、それが神仏の持つ後光とよく似ているのだ。
 山間に棲まう天狗たちはこの現象を古くから知っていて、時にはこれを利用して悪戯したりする。自らの影を見て驚く人間たちを物陰から嘲笑しつつ、神仏の降臨を装い威厳に満ちた声音で「お告げ」をしたりして遊ぶのである。勿論、そんな事がバレたりしたらいろんな方面から睨まれるので、そういうマズい部分は伏せたままだが。
「今回は貴方たちの特性を活かして、小傘さんには光源役を、雲山さんにはスクリーンの役を担って貰ったわけですね」


 この度文が立案した段取りはこのようなものである。

『御来迎』を再現するにあたり、まず雲か霧が必要となる。雲も霧もその本質は細かい水の粒なので、霧が出ていなくとも雲山の身体を濃霧代わりにすれば良い。
 雲山曰くそれなりの体積を保つには高い湿度を要するとのことなので、決行には降雨の日を選んだ。
 充分にその規模を拡大した雲山にはまず、林一帯を覆う希薄な霧として待機していて貰う。必要に応じて霧を部分的に濃集・身体の一部を具現化させることで標的をおびき寄せ、霧の中に誘い込む。
 そうして雲山の身体の中に取り込まれた相手は、常に見えない敵に囲まれた状態に陥るのである。無闇に攻撃しても雲粒には効果が無く、反してこちらからは好きな時に拳を現し打つことが出来る。

 次は光源側。こちらは林の中に小傘を待機させ、標的が現れ次第その背後から光で照らしてやる。
 同時に雲山と連携を取り、標的から任意の距離に密度を高めた霧のスクリーンを発生させ、自在に大きさを変化させる「真っ黒い影の巨人」を生成する。
 標的はその威容に釘付けとなり背後の小傘に気付くことも無いまま、実体を持たない影に向かって無意味に攻撃を繰り返す羽目になるのである。
 ここまで運べば、後は煮るなり焼くなりお好きなように。
 小傘が発光を止めれば巨人は消え失せ、また現れては攪乱し、標的に疲弊が見えたら剛拳や目からの怪光線を浴びせればよい。

 そして最後に文が巨人の噂を吹聴することで、果たして『太歳星君』の出来上がりとなる。


「巫女も泡を食って逃げましたし。あとは最後の締めとして、この手段を取るのをこれ一度きりにしてしまえば完璧です」
「えっ?」
 文の口から発せられた予想外の言葉に、小傘は首を傾げる。
「どうして? 『神出鬼没の大巨人』なんて、人間を驚かすのにぴったりなのに」
 せっかくこんな上手い方法を見つけたのだから、これきりで辞めてしまうなんてあまりに勿体無い話だ。
 小傘の疑問はもっともだが、しかし文は首を振った。
「『太歳星君』は消え去るまでに封印してしまわないと駄目なのです。このまま二度と現れなければ、巫女はいつ訪れるとも判らぬ災厄に怯えて暮らすこととなるでしょう。ですが、これ以降も調子に乗ってノコノコ現れるようですと、それこそ総力を以てして幻想郷中から追われる羽目になりかねません。――いいですか、今回私が貴方たちに助言したのは、飽くまで『能力は使いよう』ということを知って欲しかったからなのです。現に、知恵というエッセンスを加えるだけで、小傘さんは巫女を心底震え上がらせることが出来た」
「う……」
 困ったように呻く小傘。その隣で雲山が感心したと言わんばかりに瞠目している。文のやり口は好かないが、天狗の思慮深さに感じ入るものがあったようだ。
「雲山さんは納得して下さったようですね。そういうわけで、小傘さんにも承諾して戴きたいのですが。この件は他言無用、私も記事にするのは見送りますので」
 そうやって諭す文だが、しかし小傘には諦めきれない未練が有った。
「……まだ、だもん」
「えっ?」
「まだあの巫女を驚かせていないのに!」
「…………ああ」
 そこで文は、この幻想郷に住むもう片方の巫女――東風谷早苗のことを思い出した。
「もしかして、私の早合点でしたか?」
 小傘から『巫女を驚かせたい』と聞いた際、真っ先に博麗の巫女を指しているのだと思ったのだが……もしかしたら標的を取り違えたのだろうか。そう心配して小傘に問うが、
「ううん、もう一人居るってことなの。紅白の巫女と緑色した髪の巫女、私を怖がりもせず馬鹿にしていったのはその二人よ」
「ああ、最初から複数形だったのですね。ですが、それでも……このやり方はもう辞めておいた方が賢明かと。もしも相手が『御来迎』の正体を知っていた場合、簡単に看破されてしまいますからね」
 博麗の巫女も守矢の風祝も、今では普通の友達感覚で接している。どこで情報が漏れてぼろが出るか判らない以上、文としては考え無しに推奨出来ない。
 頑なに是としない文だが、そんな彼女へ小傘は懸命に食い下がる。
「お願い、あともう一度だけ! これで最後にするから!!」
 緋と翠の美しい双眸に大粒の涙を浮かべて懇願する小傘。その姿に流石の文も憐れを催したのか、
「……そうですか。ではもう何も言いません」
「え、じゃあ……」
「気は進みませんが、もう一人の巫女の耳にも入るよう、それとなく噂を流しておくとしましょう」
「あ、ありがとう!」
 小傘は叫んで、深々とお辞儀する。
 それに文は肩を竦めて溜息を吐くと、
「勘違いしないで下さい、どうなっても責任は取らないということですから。それではお元気で」
 それだけ言い残し、山の方へと飛び去っていった。
 残された小傘と雲山。
「雲山も、あと一度だけ協力して。お願い」
(…………)
 雲山は憂慮の表情で、これに静かに頷いた。





 数日後。
「こんにちはー」
 言って博麗神社の軒先に上がったのは、守矢神社が風祝東風谷早苗である。雨に当たらぬよう自身の周囲を覆っていた風の結界を解くと、人の気配のする部屋の障子戸を引いた。
「どうも」
「あ……早苗じゃない。ごほごほ」
 部屋の中では、霊夢が布団に横たわっていた。常はリボンで結んでいる髪も解き、心なしか赤い顔をしている。
「風邪引いたって聞いたので、お見舞いに来ましたよ」
 身体を起こそうとする霊夢を手で制して柔和な笑みを浮かべる早苗。携えていたカゴを持ち上げ霊夢に示すと、
「リンゴ持ってきました。今剥いてあげますね」
 そう告げて霊夢の傍らに正座して、その顔を覗き込んだ。
「……うん。でも、あんまり近付くと伝染るわよ」
「病人はそんな細かいこと気にしなくてもいいんです。それより、熱はどうですか?」
 言うが早いか早苗は霊夢の額へ手を当てる。
「ああ、ちょっと熱いかな……。冷やした方が良さそうですね。今水を汲んできますから、少し待っていて下さい」
「ちょっと、そこまでしてくれなくても……ごほっ」
 早苗は霊夢の制止も聞かずに部屋を出て行く。
 五分ほど後、手洗と手ぬぐいを携えた早苗が再び霊夢の枕元へやって来た。
「井戸水汲んできたから冷たいですよ」
 手洗の中に手ぬぐいを浸し、水気をぎゅっと絞ってから、霊夢の額に置いてやった。
「……ひんやりして気持ちいいわ」
「それは良かった。あ、そうだ。リンゴリンゴ……っと」
 カゴの中から一玉取り出し、一緒に放り込んであった果物ナイフを使って器用に皮を剥いていく。
 雨音に混じって、しょりしょりと小気味のいい音がする。霊夢は早苗の様子をぼんやりと眺めていたが、その手が赤くかじかんでいるのに気が付いた。――おそらく、冷水に手を突っ込んだせいだろう。
「はい、出来ましたよ。どうぞ」
「……ありがと」
 霊夢は早苗を見上げて礼を述べる。すると、早苗が驚いたように目を見開いた。
「うわっ、霊夢さんがやたら素直だ。どうしました、風邪ですか?」
「あんたねえ……」
「ふふっ、冗談ですよ冗談。だからそんなに睨まないで……。そうだ、お詫びにリンゴ食べさせてあげますね。はい、あーん」
 綺麗に八等分されたリンゴを一切れ摘んで、霊夢の鼻先に差し出してきた。
「ちょっ、恥ずかしいからいいわよ。自分で食べるから」
 霊夢は堪らず半身を起こすと、早苗の手にしていない別のリンゴを摘んで齧り付く。
「……うん、おいしい」
「ちぇー。もう少しからかいたかったんですけどねぇ」
 早苗は苦笑して、行き場を失ったリンゴを自分の口へ運んだ。
「それより、何か用が有るんじゃないの? わざわざ雨の中ここまで出張ってきて」
 屈めた腰元あたりに落ちた手ぬぐいを拾って額に押し当てつつ、霊夢は早苗に改めて問う。
「あ、判りますか。それでは本題に入らせて戴くとして……。霊夢さん、最近このあたりに巨大な妖怪が出たって聞いたんですけど」
「ええ出たわよ、『太歳星君』って厄介な奴がね。私も退治しようとしたんだけど、うっかりやられちゃったってわけ」
 それでおまけに風邪引いちゃったのね、と肩を竦めて霊夢がぼやく。
「『太歳星君』……確か天狗の新聞に載っていたアレですよね」
「そうよ。……そういやあんたのとこの蒸気人形、河童のバザー以来動かしてないのよね?」
 念のため、確認を取る霊夢。早苗は勿論と頷き、
「やはり、『非想天則』とは別の巨大妖怪がいるみたいですね。……ふふ、面白くなってきました」
「面白い、ですって?」
 早苗の頓珍漢な態度に気色ばむ霊夢。
「あれは私ですら手こずるような相手なのよ。それに攻撃が全然通用しない上、ほったらかしにしておくと何か酷い災厄を呼ぶらしいの。出来れば今すぐにでも封印しに行きたいくらいなんだけど、風邪っぴきじゃあ戦うだけ無駄だし……」
 そのまま言葉尻を溜息に変えて嘆く。しかし早苗は、霊夢の落胆にも構わず尋ねる。
「そうです、その話ですよ。その巨人が『太歳星君』だって、誰から聞きましたか?」
「誰って、そりゃ勿論文からよ。あいつが書いた新聞に載ってたし、退治に出掛ける前にもわざわざ対処法を教えてくれたわ」
「ああ、やっぱり」
「?」
 一人得心いったと頷く早苗に、霊夢は疑問符を浮かべる。
「霊夢さん、怪しいと思わないんですか? 退治しようと思った矢先に天狗が飛び込んできて、どういう風に戦えばいいかアドバイスしてくれるなんて。そんなの、あまりにタイミングが良過ぎるでしょ」
「……そう言われてみれば、そうかなぁ?」
 異変が絡んでいるならともかく、平時の霊夢は案外鈍い。早苗はそれに呆れた溜息を吐くと同時に、またある確信を抱いていた。
「それ、本当に『太歳星君』なんでしょうか」
「?……どういう意味よ」
 そんな厄介な化け物が現れて幻想郷を脅かしているのなら、この博麗の巫女がこんなにとぼけている筈が無い。早苗は逆説的にそう思い至り、この事件に疑問を抱いているのだ。
「もう少し詳しく、特に天狗から直接聞いたことあたりを中心に教えてくれませんか?」
「まあ、いいけど」
 そこでかくかくしかじかと、霊夢は早苗に話して聞かせた。
「……ふむ。天狗の行動を鑑みるに、どうも霊夢さんの不安を意図的に煽ろうとしているように思えますね。それと、雨の日にしか現れない、とも?」
「うんまあ、だいたいそんな感じに言ってたかな?」
 文は一度ならず二度までも、霊夢に対して『太歳星君』の情報を直接与えている。しかも一度目は、渋る霊夢に無理矢理新聞を読ませてまでだ。
「となると。私が思うに、天狗は貴方にどうしても『太歳星君』を退治しに向かって貰わなければならなかった。また、正体不明の巨大妖怪を最初から『太歳星君』だと思い込んで貰わなければいけなかった、そう考えることが出来ますね」
「……ねぇ早苗、一体何が言いたいのよ?」
 勿体振った早苗の様子に痺れを切らした霊夢が口を尖らせる。応じて早苗が単刀直入に答えた。
「つまり、貴方は天狗に一杯食わされた可能性が高い、ってことです」
「なっ!?」
 今まで思ってもみなかった言葉に吃驚する霊夢。早苗はそこでおもむろに立ち上がると、霊夢を見下ろしこう告げた。
「では、これから行って確かめてきます。巨大妖怪の正体を」



 十一月の雨に煙る薄暗い空を飛び、博麗神社境内の林を見下ろす早苗。と、まもなく、彼女のお目当てであるそれらしき影が眼下に現れた。
「見つけた!」
 しかし早苗が近寄った途端、林の間から白い頭を覗かせていた巨人の姿が掻き消える。……これも話に聞いた通りだったので、彼女は細心の注意を払いつつ林の中へと降り立った。
 天には暗雲が垂れ込め、弱いながらもしとしとと雨を降らせ続けている。背の高い木立に囲まれた緩やかな斜面は一層暗く、周囲数間を見渡すこともままならない。
「いや、それにしたってこの暗さはおかしいですね。もしかして……霧が立ちこめてる?」
 状況を訝しむ早苗。だがそうこうしている内に彼女の周辺がぼうっと明るくなったかと思うと――目の前に、身長およそ10メートル程度の黒い巨人が現れたではないか。
「……来ましたね」
 静かに構えて、その様子を窺う。
 見上げるばかりの巨体はしかし虚ろで、その輪郭はぼやけている。背後に虹のような光輪を備えており、暗闇の中それだけが眩い輝きを放っていた。追って頭上を見上げると、丸い輪郭の右側に小さなこぶが付いている。
「……確か、魔理沙さんが見たのは一本角。霊夢さんは二本角。そして私の前に現れたのは、まるでカエルの髪留めみたいなこぶ付きの巨人……と」
 そこで早苗は懐から御幣を取り出すと、垂直に立てて額の前に翳した。――すると、
「やっぱり!」
 彼女の前に無言で佇む巨人にも、一本の大きな角が生えたのだ。
 次いで早苗が右手を挙げると巨人は左の手を挙げて、左腕を上下に振ればやはり巨人もつられて右腕を振るのである。それはあたかも鏡に映った自分の様に……。
(人によって見るシルエットが異なることといい、この周囲に満ちる濃霧といい……ええ、間違い有りません。目の前のこいつは、単なる巨大な影法師。魔理沙さんは帽子が、霊夢さんはリボンの先端がそれぞれ巨人の角に見えていただけ)
 この状況下で起こり得る怪異――濃霧に映る巨大な影の化け物といえば、彼女の知る限り一つしかない。
「ふふふ……残念でしたね。私はこんな手には引っかかりませんよ?」
 早苗は笑んで、高らかに宣言する。
「さあ、その正体を現すがいい『ブロッケンの妖怪』め!」
 叫んで彼女は、風祝としての「風を鎮める力」を逆に用いて林の中に強風を巻き起こす。
 すると見る間に霧が吹き飛ばされてゆき……。
 目前に立ちはだかっていた巨人は、そのシルエットが揺らいだかと思うと次第に薄れ霞んでゆき、ついには消滅してしまった。
 そうして、早苗は背後を振り返る。そこには眩い光を放つ小さな人影が一つ、ぽつんと佇んでいたのだった。
「ど、どうして……?」
 紫色した趣味の悪い和傘を手に、身体を震わせるのは小傘である。既に萎縮しているらしく、彼女の『からかさ後光』は瞬く間に消え失せていた。
「あら……お久しぶりね、化け傘さん」
 早苗は以前通りすがりに懲らしめたことのあるその妖怪少女に声を掛けると、歩み寄って傲然と言い放つ。
「怪物の正体見たりお化け傘……と。『ブロッケンの妖怪』なんて、古くさいお化けの割には上手く考えましたね。あ、もしかして天狗の入れ知恵ですか? でも、茶番はこれで終わりですよ」
 早苗は夏頃起こった『非想天則』騒動の折り、祭神である八坂神奈子から霧に映る巨大な影こと『ブロッケンの妖怪』について聞き及んでいたのである。
 訳の判らない相手ならまだしも、正体の割れた妖怪ならば――特に小傘のような雑魚であれば尚更――まったく恐るるに足らない。
 早苗は手にした御幣をビシッと小傘に突きつける。すると小傘は早苗に対するトラウマ故か早々に腰を抜かしてしまい、その場に力無くへたり込んだ。
「人々を謀ったばかりか、霊夢さんに風邪まで引かせて……その悪行、絶対許すわけにはいきません! さあ、覚悟するがいいわ!!」
「さ、さでずむ反対ーっ!?」
 鬼の形相で迫る早苗、頭を抱えて蹲る小傘。

 ――しかし。彼女らの間を裂いて、突如空中から巨大な拳が振り下ろされた。

「なっ!?」
 驚き飛び退る早苗。その目の前で瞬時に霧がわだかまったかと思うと、筋骨隆々としたシルエットを持つ一人の禿親父へと変化した。見る者を射殺さんばかりに鋭い眼光、魔神の如き憤怒の形相で敵――早苗を見下ろす、身の丈2.5メートルのむくつけき大男だ。
 しかしその恐ろしげな容貌にも、早苗は一向にひるむ気配を見せない。
「ははあ、霊夢さんを殴りつけたのは貴方ですか。実体の無い霧の幻に雲入道を混ぜて怪物に仕立て上げるなんて、思わず感心しちゃいますねそのアイディア。でも、正体が判ったからには怖くありません。いきますよ!」
 叫んで手にした御幣を翳すと、雲山目掛けてスカイサーペント――蛇の形をした弾だ――を無数に発射する。
 対する雲山はファイティングポーズを取ると、次いで人頭大の拳を無数に打ち出した。早苗の放った弾幕は、雲山の拳によってそのことごとくが叩き落とされる。
「ああっ、ペ○サス流星拳! 感激です、それっぽいの初めて見ました!」
 早苗が嬉々として蛇弾の射出数を増やすと、その一部が雲山の拳をすり抜け彼の身体に到達するようになった。
(ぐ……小傘よ、儂が引き付けている間に逃げよ!)
 被弾によるダメージから僅かに顔を顰めつつ、呻くようにその意思を伝える雲山。
「で、でも私腰が抜けちゃってて……」
 だが小傘は立ち上がろうにも飛び上がろうにも身体に力が入らず、動くこともままならない。
(むう……)
 見る間に劣勢に陥った雲山はそこで攻撃を中止し、両腕を胸の前で交差させ防御に専念し始める。にわかに食らいつく蛇が増えるが、彼は一喝の下にまとわりつくそれらを吹き飛ばした。……防戦に回る代わりに、少しでも長く攻撃に耐えるつもりなのである。
 その意図を悟った小傘は驚き、狼狽しつつ雲山に呼び掛ける。
「ど、どうして? 動けない私なんか放っといて、貴方だけでも逃げればいいのに……!」
 雲山は彼女の声に振り返ることもなく、ただ前方の敵のみを見据えたままに答える。
(儂に、おなごを見捨てて逃げよと申すか? ……それに、短い時間とはいえ儂とお主は苦楽を共にした仲間ではないか)
「……!」
 仲間。その言葉に小傘は、自分の胸中へとなにかが込み上げるのを感じた。
「あれ、やり返してこないんですか? つまんないなあ……。まあいいです、だからといって手加減するようでは幻想郷の巫女は務まりませんもんね。秘術『グレイソーマタージ』!」
 早苗は雲山の様子に不平を漏らしつつ、スペルカード使用を宣言する。応じて展開された五芒星の弾幕が、一斉に動けない雲入道へと殺到した。
(ぐおっ……!)
 身体を構成する雲粒を徐々に削られ、苦悶に顔を歪ませる雲山。
「も、もういいよ! ほら私傘だし、弾をはじくのにも馴れてるから!」
 小傘の、半ば悲鳴にも似た懇願を、しかし雲山は是とせず耐え続ける。
「むう……雲の塊の癖になかなか粘りますね。入道雲は盾のまねごとなんかしてないで、空の上で大人しく雨でも降らせてればいいんですよ。秘法『九字刺し』ッ!」
 悪態と共に技を切り替える早苗。彼女の放った光の網目が、巌の如く立ち塞がった雲山の身体へと突き刺さる。
「さあ、後ろの化け傘ともども穴だらけになるがいい!」
 神通力によって生じた烈光が彼の身体を瞬く間に削り取り、もはや人型の体裁を取らなくなり始めている。しかしそれでも雲山は、その場から――敵の前から、守るべき仲間の前から、一歩たりとも動こうとしないのだ。
「雲山……雲山っ!」
 宝玉のような両の瞳に涙を湛えて、小傘は頑固親父の背中へ呼び掛ける。
(小傘よ……心配は無用ぞ)
「でも!?」
(雲が雨を降らすものと、傘が雨に打たれるものと誰が決めた? この身はしがなき雲霞なれど、降り注ぐ害意の弾幕(あめ)からお主を守り抜いてみせようぞ!)
 雲山は両目を見開き声無き声で咆哮する。
(喝ッ!!)
 裂帛の気合いによって彼の身体を苛む光条が消し飛び、またその余波が衝撃となって早苗へと向かう。
「くぅっ……!」
 実害は無いものの、そのあまりの圧力に呻く早苗。しかしそれは、彼女の憤りを増長させる助けにしかならなかったようだ。
「この……! さっさとやられちゃって下さいよ! 奇跡『ミラクルフルーツ』、神徳『五穀豊穣ライスシャワー』!」
 早苗は怒りに任せて矢継ぎ早に技を放つ。
(ぬわあああ!!)
 押し寄せる怒濤の攻撃にさしもの巌もくずおれる。足が用を為さなくなると、彼は人の形を放棄して一枚の壁と成り――決して通してなるものかと、自身の雲粒一滴と弾の一発を相殺し合い、

 果たして。文字通り己自身と引き替えに、その全てを防ぎきったのだった。

「あ……」
 眩い光の炸裂と共に跡形もなく消え去った雲山の姿。小傘はそれの意味するところを理解するや、涙ながらに絶叫した。
「うん、ざん……うんざーーん!!」
 一方早苗は、目障りな障壁が無くなったのを見て取ると、荒い息を吐きつつ笑った。
「はあ、はあ……、あはは、雲散霧消しちゃいましたね、雲だけに」
 そして今なおへたり込んだまま慟哭する小傘に目標を切り替えると、静かに歩み寄っていく。
「う、う……ううう」
 俯き大粒の涙を降らす小傘。その小さな姿を見下ろし、早苗は御幣を突き付ける。
「さて、チェックメイトですね。これで霊夢さんの無念も晴らせますよ」
 言って神通力を繰り、高威力の一撃を放つ準備を始める。
「さようなら、化け傘さん。次はせめて、もうちょっとマシな見た目の傘になれるといいですね」
 早苗が別れの言葉と共に神通力を解き放ち――


 ――その時、一陣の風。


 小傘を貫く筈であった必殺の一撃はしかし、何も無い地面を穿った。
「!?」
 吃驚し刹那の出来事に目を見張る。突如として彼女の前に青白い軌跡が駆け抜けたかと思うと、今まさに仕留めるつもりであった獲物が掻き消えたのである。
 慌てて周囲を見回すと、果たして早苗から三間離れた先にそれは居た。
 真紅の魔力光を身に纏い、凛とした気配を以て佇む女性。その両腕に唐傘お化けの少女を抱いて、彼女へと慈愛に満ちた笑みを向けている。
「良かった、なんとか間に合ったみたいね」
「え……?」
 何が起こったのか理解出来ず、呆気に取られる小傘。
「もう大丈夫よ。貴方は私が助けてあげるから」
「う、うん」
「貴方は……命蓮寺の!?」
 早苗が発した誰何の声に反応し、その女性は顔を上げる。たおやかな笑みはそのままに、しかし眼差しに剣呑なものを宿して口を開いた。
「はい。尼僧の聖 白蓮です」
 そう自身の名を名乗ると、白蓮は身体強化の魔法を解いた。たちまち真紅の魔力光が消え失せるが、その得体の知れない力感は衰えないままだ。
「流星拳の次は界○拳かあ……流石は幻想郷ですね。あ、次はセ○シーコマンドーあたりが見てみたいかも」
 なんて少々ズレた方向に感心して軽口を叩きつつも、早苗は間断なく構えて白蓮に対峙する。少なくとも、油断の出来る相手ではないと判断した為だ。
 と、そこで、新たな人物が林の中へと舞い降りてきた。
「姐さん! ――ああ、良かった無事だったのね」
「あっ! 貴方はこの前の」
 突然現れた黒頭巾の少女を見て、小傘は声を上げる。そこで小傘は彼女からその名前を聞いていないことに気がついたが、同時に、彼女を守って果てた心優しき時代親父を思い出して、
「それより大変なの! 雲山が、雲山がぁ!」
「ああ、彼なら大丈夫よ。ほら」
 黒頭巾の尼僧こと雲井一輪は金色の輪っかを取り出すと、頬を濡らした小傘へ向けて差し出してやる。
 するとそこから、まるで何事も無かったかのように小さな禿親父の顔が現れたではないか。
(案ずるな小傘よ。儂は息災ゆえ)
「う、うんざっ……、良かったぁ」
 その言葉を聞いて、小傘はまた泣き出してしまう。
「まあ、雲山は雲の入道だからね。半分くらい無くなっても平気なのよ。貴方の危機を彼が教えてくれて、且つ時間を稼いでくれたおかげでこうして駆け付けることが出来たというわけ」
 一輪が説明すると、それで小傘はようやく安堵の息を吐いた。
「あのー、お取り込み中のところ申し訳ないんですけど」
 にわかに漂い始めた和やかな空気を押し破るように、早苗が白蓮ら一行へと声を掛ける。
「ああ、これはすみません。……貴方は、確か山の神社の巫女さんでしたね?」
 そう白蓮が問うと、早苗は胸を張って答える。
「ええ、守矢神社が風祝にして現人神、東風谷早苗です。以後お見知りおきを」
「こちらこそ。……さて、それでは本題に移りましょうか」
 白蓮はたおやかに一礼して、話を進める。
「この度は私どもの一員が貴方にご迷惑をお掛けしてしまったようですね、誠に申し訳御座いませんわ」
 言って白蓮は再度頭を下げる。
 対して早苗は鷹揚に頷くと、しかし険悪な雰囲気を改めもせずに応えた。
「素直に謝って戴けるとは殊勝な心掛けですね。ですが、何故神仏に仕える尼僧の身である筈の貴方が、妖怪の為に頭を下げるのですか? それがどうも、私には解せないんですけど」
 面を上げた白蓮は一変、こちらも穏やかならぬ気配を纏って早苗を真っ向から見据える。
「私は人間だろうと神だろうと、また妖怪であろうと皆平等に扱います。身内の非礼ならば詫び、また過ちを繰り返さないよう叱り、然る後には許します。いかに悪行を働いたとはいえ、貴方のように改心する機会も与えず一方的に退治するなど、浅慮且つ野蛮な振る舞いと言わざるを得ません」
「へぇ……」
 白蓮の意見に早苗の眼差しが一層険しさを増す。
「それが、建立早々人妖問わず信心を集めていると聞く命蓮寺のやり口ですか。甚だ賛同致しかねますね」
「そうですか、それは残念です。もっとも、大和朝廷の侵略神を戴く守矢の社の方々には、私どもの志を容易に理解して戴けるとは期待しておりませんでしたが」
「「…………」」
 しばし睨み合う二人。
 白蓮の胸に抱かれたままの小傘は成り行きが上手く飲み込めず、立ちこめる一触即発の空気にただただ戦慄するしかない。
 その身体が小刻みに震えているのに白蓮は気付いて、やむを得ず自分から口を開くことにした。先程大きな精神的ショックを被ったばかりの彼女をこの重苦しい雰囲気に長く留めるのは、あまりに可哀相に思えたからだ。
「では……どのようにすれば許して戴けますか?」
(……ふむ)
 それを聞いて、幾らか溜飲を下げる早苗。向こうから下手に出てくれたのだ、今なら多少の無理は通せるかも知れないが……。
「いえ、今回はこちらもやり過ぎた、ということにしておきましょう。ただ、そこの化け傘と入道さんたちには、二度と悪さをしないよう良く言って聞かせて下さいね」
「……判りました。肝に銘じておきましょう」
「ふん……守矢としてもそちらに色々思うところは有りますが、それはまた時と場を改めてからということで。今日はこれにて引き上げます、それでは」
 最後にそう、刺々しいものを含んだ台詞を言い置いて、早苗は林から飛び立った。
「……博麗神社の方へ向かうみたいですね」
「おそらく、あの巫女さんに事の顛末を報告しに行くのでしょう。長居は無用ですね」
 一輪の言葉に白蓮が頷き、そして笑顔の中に恐ろしげな雰囲気を漂わせて続けた。
「それと。一輪雲山、それに小傘さん、でしたね? 貴方たちにはお説教が有りますから、寺に戻ったら覚悟しておくこと」
「う……は、はい」





 命蓮寺の一室にて、白蓮のお説教は一晩中続けられた。
 一輪、雲山、そして小傘の順番で、やれ平等がどうの平和的解決がなんだのと話が続き。ようやく解放された頃には、まるでしなびた茄子みたいに小傘はへにゃへにゃになっていた。
「……ところで、これから貴方はどうするの?」
「あ、一輪」
 寺の縁側でしとしと降り続ける雨音を聞きながらへばっていた小傘に、一輪がそう声を掛けた。
 彼女は小傘の隣に腰掛けると、その顔を覗き込んで続ける。
「貴方に以前話した通り、ここは寺と言っても関係者は皆妖怪なの。姐さんの方針で人間たちとも仲良くやっていけるよう取り計らっているし、勿論里の近くの妖怪たちからも信心を集めているわ。……もし、貴方さえ良ければ、このままここに留まっても構わないのだけど」
 寺への帰依をそう婉曲に提案する。一輪としては、この事態の発端となった不用意な行動を白蓮に叱られた手前、責任を持って小傘を保護観察し、可能であれば改心させたいところなのだ。
「え……で、でも。それじゃあ人間たちを驚かせられなくなっちゃうし……」
 しかし人間の心を糧とする妖怪である小傘にとって、それは死活問題だった。
「そうね……結局はそこよねえ」
 腕組み唸る一輪。その頭上で掌サイズの雲の塊――雲山も、同様に顔を顰めていた。
「……」
 一輪から与った法輪は既に返却してしまったので、もう彼の言葉が直接小傘に届くことは無い。それに一抹の寂しさを覚えながらも、されど小傘にはどうしてみようも無かった。
 彼女が化け傘として生きる為には、人間の恐怖心が不可欠だ。そしていたずらに人を脅かすことは、白蓮の目の届く範囲では叶わないであろう。
「なにか無いものかしら、平和的に人を驚かせて、かつ許される方法が……あ!」
 そこで一輪がふと、何かを思いついたのか鋭く声を上げた。
「な、なに?」
 それにびくりと身体を震わせる小傘。彼女の方がよっぽど、人間などより驚きやすい質なのかも知れない。
「そうよ、縁日! この手があったわ!」
「へ? えんにち?」
「そう。里の人たちと交流を深める為、このお寺では屋台を始め色々と出し物をするのよ。そこに、今度からお化け屋敷を加えれば……」
「……お化け屋敷。そんなの何処に……?」
 思わず境内を見回す小傘。
「いえね、その時だけ小屋を用意するの。そして、貴方みたいな人を驚かすことに喜びを覚える妖怪たちに協力して貰えば……」
「怖いもの見たさの人々からも喜んで貰えるし、妖怪たちも心の養分を得て満足出来る、というわけね。流石は一輪、頭が良いわ」
「あ……姐さん」
 微笑を浮かべつつ会話に入ってきたのは白蓮である。
「ごめんなさいね、なんだか賑やかだったものだから。でも……そのアイディアはいいと思うわ?」
「じゃあ……?」
 白蓮は一輪に頷くと、
「そうね、今度試しにやってみましょうか。それでいいかしら、小傘さん?」
「あ……う」
 しかし小傘はどうしたものか、わたわたと戸惑ってしまう。
「……え、なになに? 『小傘よ、この寺に留まるとよい。縁日までの間儂が稽古をつけてやろう』って雲山が言ってるわ」
「あ……そうなの雲山?」
 小傘が目を向けると、彼は瞑目し深く頷いた。
「『妖怪としての力を磨けば、自然と貫禄も備わり人々からの畏怖の念をも集め易くなるだろう』ですって。確かに、それも一目置かれるというか怖れられていることになるかしら」
「そうなんだ……。じゃ、じゃあ」
 こわごわと、小傘は上目遣いで白蓮の様子を窺った。
「ええ、受動的に人々から畏敬の念を集めるのなら、比較的問題は無いでしょう。考えてみれば、神仏も得てしてそういうものですし。それでは――改めて」
 そう言って小傘へと手を差し伸べる白蓮。小傘がそれに手を伸ばして、ふと雲山の方を向く。
 彼が再度頷くのを見ると、小傘も笑んで白蓮の手を取った。
「ふふ、ようこそ命蓮寺へ。私たちは貴方を歓迎するわ」
「は、はい。これから宜しくお願い……します」


 小傘は知った。
 自分のようなぱっとしない妖怪にも、親身になって手助けしてくれる者たちが居ることを。
 その優しさに報いる為、また身体を張って自分を守ってくれた雲山へ恩返しをする為、
 ――自分以外のなにかの為に頑張ろうと、彼女は初めてそう思ったのである。
 しとしとと降り続ける秋の雨。そして唐傘お化けの自分もいつか、冷たい雨に打たれて震える誰かへと、この手を差し伸べられますように――。





(了)
思わず惚れてしまいそうな、カッコいい雲山が書きたかった。

キャーウンザーン!

お題的には、「雲と傘との間には、冷たい雨ばかり降るものでも無い」ってとこでしょうか。
主に中島み○き的な意味で。
きつつきけい
http://3.5aeons.nth.jpn.ch/
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/11/21 18:21:31
更新日時:
2009/11/21 18:21:31
評価:
22/22
POINT:
149
Rate:
1.51
1. 10 角煮 ■2009/11/28 01:54:39
ウホッ、いいウンザン。
2. 7 バーボン ■2009/12/03 18:26:04
小傘が雲山を操ると言う発想は面白いと思いましたし、非想天則と絡めた話の展開にもニヤリと来る物がありました。最後も綺麗に終わっているし、良いと思います。
ただ……欠点が無い代わりに、大きく心を動かされるような所も殆ど無く……。「ああ、上手く纏まってるな」で終わってしまった印象なのが残念です。
小傘を庇う雲山は非常に格好良かったです。早苗のジャンプを意識した台詞は、個人的には無い方が良かったように感じますが、それは採点基準には関係しない程度のものでした。
3. 7 幻想郷住民A ■2009/12/06 23:23:51
何と言うカッコよさ!キャーウンザーン
小傘は星さん辺りを驚かしてもいい気がする
4. 9 はば ■2009/12/08 19:32:00
キャーウンザーン
東方SSでカッコいい男キャラははじめて見た
5. 8 神鋼 ■2009/12/08 20:10:12
早苗さんのあまりにも板に付いた悪役っぷりに涙を堪えるので精一杯でした。

……なにこの雲山カッコイイ……惚れそう。
6. 10 nns ■2009/12/12 21:26:58
雲山はいい男
7. 8 静かな部屋 ■2009/12/30 23:07:49
「小傘について話す雲山と一輪」パート
とか
もっと読みたかったな、と。

なんだかんだでノリノリな雲山すてきでした
8. 5 藤木寸流 ■2010/01/04 01:46:35
 スリーサイズが瞬時にわかる流石あやちゃんえろい。
 早苗さんと白蓮さん反り合わないなぁ。ぷんぷん!て天然な怒り方じゃないからちょっと刺々しくは見えました。
 雲山かっこいいです。
 わりと最後は綺麗に締められましたけど、よく考えると結構取って付けたような締め方だったような気も。霊夢を驚かした段階で、早苗さんの展開はある程度読めましたし。展開が読めてなお楽しい、というほどでもなかったような。雲山かっこいい。
9. 3 パレット ■2010/01/10 05:06:24
 珍しい組み合わせ。というかまともに描かれてる雲山を久々に見たw
 珍しい組み合わせという出オチに終わらず、全体的に丁寧に書かれていたなあと思います。
 ただ二点ほど。(どちらもあくまで個人的な感覚です)
 まず一つは、早苗さんの悪役(?)っぷりのさじ加減がちょっと行き過ぎたというか、せめてフォローがほしかったなあというか。これ早苗さん視点だと雲山ぶっ殺して小傘も殺そうとしてるわけですし。そこらへん、あくまで自分の中のイメージとですが、少しぶつかりました。
 そしてもう一つ、縁日は話に出すだけじゃなくて、実際にその場面も描いて欲しかったなーというのが。なんとなく足りないというか、途中でぶつ切った感すらありました。
10. 8 白錨 ■2010/01/10 09:19:57
おもしろかったです。
小傘の悩みをポジティブな方向に解釈した結果、こうなった。という感じの作品でした。
妖怪の大先輩である雲山と小傘のコンビはマッチしていると思いました。

最後に、雲山。かっこよかったですよ。
11. 8 椒良徳 ■2010/01/11 18:30:54
お見事! と手を叩いて喝采したくなります。とても面白い作品でした。
いやはや、貴方の他の作品も読んでみたいですね。
12. 3 ホイセケヌ ■2010/01/13 21:54:37
・ュ・罕鬣ッ・ソゥ`、ホ・ケ・ン・テ・ネ・鬣、・ネ、ホオア、ソ、キス、ャ楼カヒ、ハ、ホ、ャイミト。」
ホト、マミアP、ヌヨリメェ、ハ・ン・ク・キ・逾、ユシ、皃ニ、、、、ヒ、筅ォ、ォ、、鬢コ。「矣ーメヤスオネォ、ッウキャ、マ殪、ッ。「ト讀ヒーラノ商マミアP、マネォ、ッモー、簟ホ、簫慣ア、ソ、鬢ハ、、、ホ、ヒ。「・鬣ケ・ネ、ヒ、メ、遉テ、ウ、ウ、ニ、ュ、ニ。「ヤ彫ホセ、皃ホヨリメェ、ハメロトソ、メサネヒ、ヌ、ウ、ハ、キ、ニ、、、。」ラウ、ヒウ、ニ、ュ、ソメサン、マ、筅テ、ネ・ュゥ`・ムゥ`・ス・、ヒ、ハ、熙ヲ、、ォ、ネヒシ、、、ュ、茖「ーラノ商ホオヌ因、ヒ、隍テ、ニ。「モー、ャ、皃テ、ュ、ア。、ッ、ハ、テ、ニ、、、。」
フリ、ヒ痩、ホ嘆、、、マ。「y、゙、サネョ+ヤ酖遉オ、、ホサクカ、アメロ、タ、キ。」ヤ酖遉オ、、簑イサセ。、ハ、ッ、鬢、、ホ杉メロ。」、筅ヲ、チ、遉テ、ネ・ュ・罕鬢ホハケ、、キス、ヒクッミト、キ、ニ、ロ、キ、、、ハ、ネヒシ、、、゙、キ、ソ。」メロクキヨオ」、ャ、ュ、チ、テ、ネ、キ、ケ、ョ、ニ、、、ニ。「、「、゙、・ュ・罕鬢ャノ、ュノ、ュ、キ、ニ、、、、隍ヲ、ヒクミ、ク、ハ、、、キ。」

、ソ、タ。「・ォ・テ・ウ・、・、ノス、マヒスラヤノウ、皃ニ、ハ、ホ、ヌ牢、キ、ォ、テ、ソ、ヌ、ケ。」
13. 7 詩所 ■2010/01/13 22:03:55
 ブロッケン現象ですか。
 雨というより雲って感じにも思えます。

 あと、お化け屋敷なら博麗と呼ばれる神社が天然のお化け屋敷と(ry。
14. 7 deso ■2010/01/14 01:11:37
雲山かっこいい!
個人的には、vs早苗戦では小傘に少し花を持たせてあげたらと思いましたが、面白かったのでこれはこれで。
15. 8 零四季 ■2010/01/14 22:25:50
そらーときーみとーのーあーいだーにはー。
雲山がこんなにカッコよくて良いのでしょうか? 惚れます
16. 6 774 ■2010/01/15 00:23:02
親父、渋いな。
ドタバタするだけの話と思いきや、なんだかいい話っぽくなってて予想を外されました。
17. 6 2号 ■2010/01/15 09:36:32
小傘と雲山、新鮮でいいコンビでした。
キャーウンザーン!
18. 7 八重結界 ■2010/01/15 15:15:45
 早苗さんさでぃずむ。それにしても雲山がここまで頼れる親父だったとは。
 堪え忍ぶ姿は、まさに親父の鑑だと思います。
19. 6 やぶH ■2010/01/15 20:28:43
なるほど、お化け屋敷! 直球ながらいい解決法ですねw カッコいい雲山です。
けど、稽古の末に小傘ちゃんが剛殻鬼眼、大迫力の禿親父並の迫力を身につけてしまうことを想像すると……ひいいいい!!(゚Д゚;)
20. 8 時計屋 ■2010/01/15 22:28:06
 キャーウンザーン!!
 キャーナムサーン!!
 もういくら叫んでも足りないくらい、出てくるキャラが愛らしいです。
 特に小傘が健気で可愛いですね。私も遭遇したら驚くより先にお菓子でもあげたくなります。
 でも早苗さんの容赦無さにもこっそり痺れました。ああ、やっぱり早苗さんはこうでなくっちゃ。

 さて。
 文章、構成ともどっしりとした安定感があって、相当に地力の高い方だとお見受けします。
 すらすらと内容が頭に入る読みやすい文章。全く長さを感じさせないテンポの良い展開。
 文句の付け所のない、上質のSSでした。ありがとうございました。
21. 5 木村圭 ■2010/01/15 23:04:25
個人的にはコメディ風味に締めて欲しかったなあ。
この筋書きだと早苗があからさまに悪者になってしまって何か可哀想。
白蓮サイドの物語だから仕方ないのかもしれませんが……。
22. 3 ■2010/01/15 23:55:23
順当、かなぁ?
まぁアイディアに穴は無かったような?
あとがきのコンセプトは達成しているからいいような気がする
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