雨漏り

作品集: 最新 投稿日時: 2009/11/21 20:32:22 更新日時: 2009/11/21 20:32:22 評価: 25/25 POINT: 119 Rate: 1.11
木造の神社、
 天気が不自然な事件の関係で崩壊した神社も元に戻り、しばらくがたった。
 秋の雨は長い、雨の度に気温は下がり最近では息が少し白く見える。
 博麗神社の居間、そこには数人が何かを囲むようにして座っていた。
 皆は一様に天井を見上げている。
「あー、その…まぁ…受け皿もう一つくらい必要じゃないかしら………?」
 十六夜咲夜が天井を見上げながら言った。
「変えって事ですよね、畳…ダメになっちゃいます」
 東風谷早苗も困り顔で天井を見つめる。
「だそうですよ霊夢さん?」
 射命丸文は霊夢の顔を覗き込むようにして彼女を窺う。
「………………」
「あ、あとで補強しよう…皆でやればすぐだ」
「……は、早く雨止んでほしいよね…雨漏りしてたってことは今日行き成りじゃないだろうから…屋根がもろくなってないといいけど」
 妖夢と鈴仙も半笑いである。
「この前直したばかりなのにな、貧乏っぽさが一段と上がって見えるぜ…霊夢…お察しするz」
「うっせぇっ!」
 魔理沙の憐れみを全開に含んだ表情を見て、雨森のおかげで頭に来ていた霊夢がついにキレた。
「雨漏りですって!?マジふざけんなよ!この前直したばかりじゃない!?なんでこうも毎度毎度あたしの神社がこんなことになるの!」

 今日は宴会だった。
 若者同士が集まって楽しくやろうという交流の場である。
 事件はその時起きた。
 皆で鍋などをつついている時だ。
 小さく音を立てて卓袱台に雫が落ちて来たのだ。
 初めは誰も気がつかなかった、皆が持ち寄った食材について楽しく会話しながら、またどこで採って来たのか、今度行ってみようだとか、少女達は楽しい宴の最中だったからだ。
 鍋の中身の追加を咲夜が入れようと、野菜に手を伸ばしかけた。
「あら?」
「どうしたの咲夜?」
 霊夢が尋ねると咲夜は小首を傾げながら言った。
「誰か水を零したかしら?駄目よちゃんと拭かないと、ここは畳の家なのだから…」
「ん?おかしいですね…水なんてこぼした覚えないですよ?それに水はそっちに置いてある鍋の追加の水だけです。こっちにはお酒しかないですよ?」
 文も首を傾げた。
 確かに来れているそれは純粋な水である。
「あの………」
 いったいどこから水が来たのか…新たな異変か?などと言葉を交わし合っている中で早苗の手が伸びた。
 人差し指で天井を指さす。
「ん?どうしたんですか早苗さん?」
「えっと…雨漏り……してます……」
 それからの皆の行動は迅速だった。
 口に入るだけ鍋の中身を詰め込んで、余りを捨てて雫が垂れるその下に鍋を置いた。
 そして、鍋を囲むようにして座り、天井を見上げている。

 事件発覚から既に一時間近く経つ、鍋の中の水がいっぱいになりつつあった。
「中の水、捨てたほうが……」
 妖夢がつぶやいた…
 霊夢が天井を見る。
「そうね……いい加減だわ…(次の水を受けると同時に鍋を引いて流し台に捨てる、そしてすぐに戻せば畳は濡れないはず…水が落ちてくるまでの差は十数秒、私ならできる……大丈夫大丈夫やれる、気持ちの問題、ミスさえしなければ…)」
 雫が垂れると同時に霊夢は鍋を掴んだ。
 鍋を持つと同時に立ち上がり、立った状態で雫を受けた。
(流石霊夢、鍋を立った状態で受けることにより水が落ちてくるまでの時間をコンマ数秒縮めるだなんて…!)
 皆の関心の視線を横目に、霊夢は流し台に走った。
(すごい!あの勢いで水を一滴もこぼしていない、普通あのように曲ったら水が零れてもおかしくは…)
(いや違うっ、見ろ!中で水を回している!)
(そ、そうか!水に円運動をさせることで波を無駄に立てないようにしているのかっ!)
「私も行くぜ霊夢」
 魔理沙が立ち上がって、台所に向かった。
 そこで魔理沙は霊夢の苦虫を噛み潰したような顔を見た。
 誤算だったのだ、最近この台所は水が流れにくいのである。何かが仕えているらしいが別に使えるので放置していたのだ、だがここで問題が出るとは思ってもみなかった。
「くっ!」
 霊夢が苦悶の声を漏らした。
「天井から落ちる滴を決して畳に落とすな!何としても死守しろ!」

「くっ!だから変えの入れ物を用意しろと言ったのよ!」
 メイド長が畳を蹴り、ヘッドスライディングの様な格好で宙を飛んだ。
 がむしゃらに腕を伸ばし、瀟洒の欠片も見せずに手を開いて空を飛んだ。
(間にあわない!?雨粒が畳に落ちることを許すというの?たかが雨粒一つ受けられないというの!?この私が?いえ、そんなことがあってはならないわ、私は紅魔館のメイド長…メイドの中のメイド…十六夜咲夜よ!)

 幻世「ザ・ワールド」
 
 時が止まる、世界の全てが停止する。
 咲夜以外誰も動くこともなくまた、雨粒も畳に落ち行く前で停止している。
 すくい取るように雨粒を握り、咲夜の手に収まった。それと同時に、時は動きだす。
「っ!」
 雨粒を手に畳を転がり、辛うじて握りしめたソレを身を横たえたまま突き出した。
「霊夢まだかっ!」
 魔理沙が霊夢に叫ぶ、
「まって、この台所…最近水の流れが悪くて、ゆっくり流さないと溢れるのよ…」
「ちぃっ、この前、生ゴミ諸共流したのが悪かったか!私が外に捨ててくる、その鍋を貸せ!」
 鍋を奪い取った魔理沙は勝手口を開けると同時に中身の水を外に放り出しそれを背後に投げる。
「妖夢!」
 鍋は回転し、妖夢に一直線に飛んだ。
 無言のまま楼観剣でその鍋を受け、白楼剣でそれを居間へと打ち出す。
 天井からは容赦のない雨漏りの雫が落ちてくる。
「だ、だめです!強すぎます!」
 早苗が叫び目を瞑った。
 妖夢の打った力が強すぎたのだ。鍋は回転しながら雫の下を通過…
「任せてください!」
 鈴仙の声が響いた。
 親指を立てて人差し指を伸ばした。
(弾いて止めるだけ、妖夢はきっとそれを見越して強くそして早く打った…私はその期待に応えられるだろうか…いやここで答えないでどうする!たかが数メートルの精密射撃、私には簡単すぎる仕事だ。取っ手に一発撃ちこんで回転を停止させ鍋の面を並列に二撃打てば完全に威力は消える。撃つなら今しかない、今なら確実に止められる!)
 弾丸が一発飛び、それから一瞬置いて二発同時に弾丸が発射される。
 正確に飛んだ弾丸は鍋の取っ手に当たり回転が止まる。そしてそれと同時に二撃の弾丸が鍋を叩き鍋は雨粒が落ちる下で停止した。
 カンッ、と水気を帯びた音が響いた。
 鍋底が雨粒を捉えたのだ。
「まだです!鍋がっ!」
 文が叫ぶ、皆が安堵しかけたその時、まだ宙にあった鍋は体制を崩し始めていたのだ。
 確かに鈴仙が撃った弾は正確だったが撃ちこんだ面が少しだけ傾いていたのだ。その為鍋は地面と平行になることができずに畳に落ちる、その後は日を見るより明らか、鈍い音とともに先程捉えた水滴を畳にぶちまけることになるだろう。
「私がっ!」

 奇跡「神の風」

 早苗目を閉じ、一度が祈祷棒を構えそして振る、風が起こり鍋の落下が緩やかに変わった。
 落ちる速度が緩やかになると同時に、鍋は姿勢を取り戻しゆっくりと畳に降りた。
 全員が肩でため息をついて首を垂れる。
「おお、お前ら凄いチームワークだったな!」
 魔理沙が勝手口を閉め、台所から戻ろうとしたがそれは霊夢の腕に阻まれた。
 腕に停止させられたのではない、進行する魔理沙とは逆方向に力強く振るわれる腕が魔理沙の首元を捉えて魔理沙の体は反転しつつ後方に吹き飛んだのだ。
「うちの台所詰まらせたのはお前かっ!」
 声もなく吹き飛んだ魔理沙だったが、そこは持ち前の頑丈さで数回の痙攣の後覚醒した。
 一瞬で状況を確認すると魔理沙は座ったまま後ずさりつつ、手を前に出して額に汗を浮かべつつ叫んだ。
「わ、悪かった!今度から生ゴミは霊夢にやるからっ!」
「いらないわ!この白黒!その白を紅く染め直してくれようかっ!」

 台所の方で嫌な音が響く中、居間の五人は別の意味での冷や汗を流していた。
「……雨粒の落ちる速度…上がってません?」
 早苗の言うとおり、速度が上がっていた。
 鍋を叩く雨粒の音が明らかに早くなっていた。さながら、4ビートから8ビートに変わったかのように速度変化がわかる。
「……この分だとどこか別のところからも雨漏りし始めそうですね…」
 霊夢と魔理沙以外は鍋を囲んで正座をしたまま、力なく肩を落とした。

「さぁ、雨粒を上から下へ眺める作業を再開するわよ」
 一仕事終えた女性の顔を携えた霊夢は台所から魔理沙の襟首を掴んで戻ってきた。
 右手には先ほどの教訓を生かすために変えの茶碗を持っている。
「あら霊夢、御茶碗でいいのかしら?屋根裏から滴る水というのは想像以上に汚いものよ、それをいつも使う茶碗で受けるのは…」
 咲夜がそれを指摘しかけると、文が一瞬霊夢に憐憫の眼を向けた後、咲夜の服の裾を少し引いて首を横に振った。
 それに皆、はっ、と気づいたような顔の後全てを悟ったかのような顔になると泣き笑いのような笑顔を浮かべて霊夢に言うのである。
「霊夢、白玉楼は幽々子様が無駄な買い物をして今食器類が余っているんだ、後で持ってくるから使うといい」
「永遠亭もね結構大所帯だからさ、あまってるものとかいっぱいあるの、だから必要なモノとかがあったら言ってね?」
「神奈子様も諏訪子様も博麗神社とは良い関係でいたいとおっしゃっていました。お暇なときはいつでも足を運んでくださいね」
 妖夢は正座のまま、鈴仙は目尻の涙を拭きつつ、早苗は既に涙を流していた。
「うちのお譲様も霊夢には協力的よ、いつでも力になるわ……」
 流石の咲夜も霊夢の瞳を見ると途端に顔を伏せて涙を拭う様に手で目を擦った。
「はぁ?」
 霊夢だけがきょとんとしている中、皆が一人のために協力していこうという空気をいい意味で、また悪い意味で読み取った魔理沙が目を覚ました。
「うぅ、何やら地獄を味わったぜ…死ぬだとか生きるだとか、そんなちゃちなもんじゃ断じて………?お前ら何やってるんだぜ?ああ!」
 魔理沙が霊夢を中心として創られた、優しさとか慈しみとか憐みとか、心からの善意や偽善で作られた温かい輪を渾身の力でぶち抜くかのように割って入った。
「おいおい霊夢、なんだこれは!こんな茶碗で雨漏りを防ぐ代わりにするつもりだったのか?駄目だぜ、こんな小さいのじゃ、もっと大きいの持ってくればいいじゃないかっ!」
 魔理沙は台所に走って行く、その他は皆が皆この後起こりえるであろう惨事に冷や汗を流すのである。
「ないぜっ!おい!ここはその鍋の他に受けられるようなモンが一つもないぜ!」
「魔理沙さん!」
 文が事態を察し、飛びだすように魔理沙の口を塞ぎつつ耳打ちをした。
「霊夢さんだって馬鹿じゃないです、茶碗じゃ事足りないくらいお察しが付いていることでしょう、ですがそれを分かって尚、茶碗を持ってくる理由があるのです」
「………も、もしかしてだぜ?」
「はい、これ以外の調理道具を持っていないのかもしれません……ですから……わかりますね…」
「…じゃ、じゃぁ私は…何てことを……」
 射命丸は頷いて元の位置に戻った。
 そして、魔理沙は目に涙を浮かべ、泣き崩れるようにして霊夢に膝をついて頭を下げた。
「霊夢ぅぅっ!ごめん!ゆるしてくれぇっ!」
「な、なに!?どうしたの魔理沙!」
「私は霊夢が、そんなに困ってるとは知らずに…心ないことをっ……」
 文も咲夜も、息を飲んだ。
 瞳孔が開き、そのままの視線を魔理沙に向ける。
 副音声をつけるならば(こ、こいつ…死ぬ気かっ!?)
「は、はぁっ!?」
「お前、調理器具もまともに買えないんだろう?それなのに私はもっと大きいのを出せだの私が探すだのなんて、そんなつもりじゃなかったんだ!もっと効率を上げようと思ったんだ、その方がいいと思って!」
 察したかのように皆ゆっくりと霊夢の周辺から後ずさるように身を引いて行く。
「…………っ!」
 既に魔理沙と霊夢の間はモーゼが割った海の如く阻むモノがない、皆一様に壁に向いてぶつぶつと念仏を唱えたり目を閉じて自分の世界に入ったり、鏡を見て紅い瞳で自分から狂ってみたりと現実逃避を試みている。
「でも大丈夫だっ!お前があんまりにも不…いや違う、友人として何か手伝わせてくれ!何でもいい、それで少しでも霊夢の負担がなくなるなら安いものさ!」
 霊夢はゆらり、ユラリと立ち上がると、魔理沙を眺めた。
「へぇ?いつもは遊ぶだけ遊んで帰るだけのあんたが、今日はどういう風の吹き回しかしら?正直に言いなさい、魔理沙、今私のことどう思ってるの?」
 霊夢の声は幾分か震えている。それは怒りから来るものなのか、魔理沙の優しさに打ち震えているのかは言わずとも察することは容易である。
「とても憐れだとおもってr…」
 言いきる前に霊夢の蹴りが炸裂した。
 1フレームに一体何回入力を繰り返せばこのような動きをするのだろうか、などと感嘆するほどの打撃や暴力では収まらない制裁が魔理沙に降り注いでいた。
「……雨漏りがこんなに恐ろしいものだと…私は初めて知りました幽々子様…」
「雨は恐ろしいですね…一見爽やかに見えてもここまでの悲しみを運んでくるだなんて…」
 無理やり雨に罪を着せているように見えるが、この悲しみと恐怖を受け止めるには少女達の胸では小さすぎたのである。
 雨は変わることなく、冷たく振るだけである。本来この季節、日に日に冷たくなる秋雨に身を震わせるはずだが、博麗神社では魔理沙の叫び声と、霊夢の怒号が彼女達の肩を震わせ続けた。

「実際、早くこの雨止んでくれないと屋根の補強の仕様がないわ」
 魔理沙が悲鳴を上げずに、殴っても痙攣するだけになった頃、霊夢は平静を取り戻した。
 拳や頬に飛んだ紅い飛沫を早苗や鈴仙が冷や汗を浮かべながら拭いている。
「本当ね、この雲さえ晴れればいいんだけど、もう今日中に止む気配はないわね」
 縁側で雨の様子を見に行っていた咲夜が困り顔で言った。
「せめて一時間くらい止んでくれれば補強くらいできるんだけど…」
 霊夢も小さくため息を吐いた。
「天候のことですので流石にこればっかりは…」
 早苗も苦笑いである。
「あの…文さんの風とかで雲を退かせる事とかってできないんですか?」
 妖夢が口を開いた。
「風を操る文さんだったら、あるいは…と思ったのですが…風の力で雲を押し流すこととかはできないんでしょうか?」
「ふふ、強引なことを考えるわね」
 咲夜さんが小さく笑った。
「私ですか?うぅん…流石に全部は無理です私とて一介の烏天狗に過ぎません自然を大きく操るなんて流石に……」
 外の具合を空いた障子から少し眺めて首を振る。
「あ、全部どかさなくてもこの神社の周辺だけでいいんじゃない?この人数ならすぐに補強くらいできるんじゃ?」
 鈴仙が部屋の隅で転がっている魔理沙を看ながら言った。
「あぁ、なるほど!それだったら…駄目もとで一度やってみましょうか?」
 天狗の団扇を手に持つと静かに雨が吹く外で勢いよくそれを振る。
 風が起こる、という言葉では形容しきれないほどの暴風が雨を落とす空に向かって放たれた。
 だが、空は厚い雲に覆われているためか一向に晴れ間が見えない。雨を数秒遮断するだけでそれ以上の効果は得られない。
「あやややや…もう少し雲に近づかないとだめみたいですね…」
「文、もういいわ服が濡れるから戻ってらっしゃい」
 縁側で履物を脱いでそれを揃え、また居間へと戻る。
「お役に立てずに申し訳ありませんね」
 頬を少し掻きながら苦笑いを浮かべる。
「まぁ流石に天候を操ろうなんてズルはだめってことね」
『はぁ…』
 全員でため息をついてまた濡れた天井を眺める。
「……ぅ」
 部屋の隅で声が上がった。
「あ、魔理沙大丈夫?」
 魔理沙を看ていた鈴仙が顔を覗き込んだ。
「何故か体の節々が痛いが、なんとか大丈夫だぜ、これはあくまでも夢なんだが赤と白の鬼に殺されそうになる夢を見たんだ、あんな怖い夢は久しぶりだったぜ」
「怖い夢だなんて魔理沙もまだまだ子供ね」
 霊夢が「ふふふ」と笑う。
「ははは、まだまだ想像力が衰えていない証拠だぜ」
 霊夢と魔理沙は笑っているがその他は嫌な汗を頬に垂らし、苦笑いを浮かべるだけである。
「で、何の話をしていたんだ?皆暗い顔じゃないか」
「実は…」
 早苗が魔理沙が寝ていた時の会話を掻い摘んで教えた。
 時折魔理沙が何故自分が寝ていたのかという疑問を持ったが、すべてスルーを決め込んで事と次第を告げた。
「そうか、文の風で雲を晴らそうとしたが無理だったのか」
 妖夢は席を立ち、鍋をどけて茶碗をずらし水を捨てに向かった。
「もっと空の高いところでできればいいんですが、この雨じゃびしょぬれになっちゃします、服も乾かしにくいですしそれは少し…」
 魔理沙はにやりと笑った。
「なら、適任がるじゃないか、要はこの神社の上の雲をなくせばいいんだ。無理やり撃ち抜けばいいってことだろう?」
 ミニ八卦炉を取り出し魔理沙は笑う。
「雲だろうが、何だろうが、私の力で撃ち抜けないモノはない」
 三角帽子を被ってその唾を指で弾く、
「力技なら、この私だ。雨雲撃ち抜くのだってパワーだぜ!」
 
 魔理沙は博麗神社の屋根の上に立っていた。
 爛々と輝く澄んだ瞳には、雨雲が映っている。
「雨は嫌いじゃないが、今は少し邪魔だぜ、来るタイミングが悪かったな」
 呟くように空に向かって声をかけた。
「いいですか、魔理沙さん私が下から風を起こして雨粒を少しだけ退かせますから、そのタイミングで空を撃ってください」
 屋根の下で文の声がする。
 一時的に雨を退かすのは雨でマスタースパークの威力を落とさせないようにするためである。
「私がカウントするわ、」
 咲夜がカウントを始める。
「三十秒前」
「ふっ、思えば今日の私はどうにも空回りしていた。やっぱりこういう分かりやすい方がいいに決まってるぜ」
 魔理沙は屋根の上で一人、独り言を言う。
 下ではは成功を確信した霊夢や妖夢、優曇華や早苗が屋根の修復作業用の道具を用意しているころである。
「二十秒前」
「やっては殴られ、謝っては殴られ、調子に乗っては殴られていた今日の私とはこの一撃でおさらばだ。全部この雨が私達を貶めたと言っていい。」
 足を前後開いて、ミニ八卦炉を空へと向ける。
「不幸を呼ぶ雨は今すぐ消えろ!」
「十秒前」
 咲夜のカウントが十を数え始める。
「八、七、六、」
「行きますよ、魔理沙さん!」
「五、四、」
「任せろ!」
「三、二、一」
「いけぇぇぇぇえええ!!!」
 咲夜がゼロをカウントすると同時に、文の掛け声と共に、疾風が奔った。
 噴き上がる風、視界を狭くしていた雨は風の外側へと追いやられた。
 魔理沙の服の間、体の間を風が吹き抜けていく、髪を乱し、帽子をはためかせながら空へと立ち上っていくのである。
恋符「マスター……」
 そして魔理沙は、力を解放する。
 これまですべてを邪魔してきた雨雲を消すために、今日の自分の失敗を挽回するために、そして何より楽しい宴会をまた始めるために…
「スパークッ!!!!」
 八卦炉の前に大きく魔法陣が展開され凄まじい衝撃とともに、空へと放たれる光の渦は、一瞬にして空へと駆けのぼり、雲を掻き消し、暗い夜空を照らしだすかのように迸った。
 真上に放つその力の反動は大きい、足元に強い衝撃を受けつつ魔理沙は魔砲を放ち続けた。
「はっ!やって、やったぜ…」

 
 結果的には、大成功だった。
 魔理沙のマスタースパークは空へと駆けのぼり、神社の上で固まっていた雲を撃ち抜いて、一時の晴れ間を博麗神社に与えた。
 だが、その代償はあまりにも大きかった。
「ず、ず……ずず…随分な威力だったようね…」
 霊夢の声は震えていた。
 それが恐怖によるものか、寒さによるものか、嬉しさから来るものか、はたまた怒りから来るものかは、霊夢の顔を見れば容易に想像がついた。
「ちっ、違うんだ霊夢!こんなつもりじゃ、いやこんなつもりじゃなかったんだ!こんなことになるものだとは誰にも想像がつかないだろう!たとえ神だろうと妖怪だろうと誰もこんな結果になるだなんて予想がつかないし、そもそも誰も望んでなんかいなかったんだ!今からだっていい!ちょっと山に登って八坂の神様に聞いてみようぜ!神だって分からないことはあったんだと!そしてこれは誰のせいでもない!不慮の事故だったんだ、なぁそうだろう霊夢!?まさか私が撃っているその真下がたまたま雨漏りで脆くなっていた位置で、私のマスタースパークの衝撃でその屋根に足が埋まってそのまま居間まで落下して屋根ごと空を晴れさせただなんてっ、そんなこと、誰の悪意でもなければ、誰のせいでもないんだ!わかってくれ霊夢!コレは皆の善意から成った悲しい事故だったんだ!恨まないし誰も恨めない、だって誰のせいでもないんだからな!だから霊夢分かってくれ!屋根をぶち抜いたことは謝る!そして復旧作業も手伝おう!だからその手に構えたそれを下ろしてくれ!」
 そうである、ほとんど魔理沙の口が語ったが、要は魔理沙が格好良く立っていたのは老朽化が進んでいた博麗神社のまさにその脆くなった部分の真上だったのだ。魔理沙はそれに気づくことなく、魔砲を撃ち、その威力に脆くなっていた屋根が絶えることができずに魔理沙は魔砲を撃ちながら居間に落ちた。そしてそのまま屋根ごと撃ち抜いて、現在博麗神社は半壊状態の屋根なし状態で、佇んでいるのである。
 魔理沙がしてやったり顔で天を仰ぎながらにやり浮かべた笑顔が凍りついて行く様は、各人が背筋を震わせる程で早苗は貧血を起こし、鈴仙は八意印の精神安定剤を自身に投与し、妖夢は剣の稽古を始める。咲夜は懐中時計を握ったまま停止し文は穴の空いた博麗神社を写真に収めいち早く飛び去ったそうだ。
「話せばわかる!武力行使はいけないと思うんだ!圧政はいずれ民からの反感を買うだろう、そしてその通例として支配者の地位は地に落ちてゆくんだ。霊夢は違うよな、お前はそんな奴じゃない、長く友人をやっていれば分かることさ!」
「言いたいことはそれだけ?」
 魔理沙は腰が抜けたのか座ったままじりじりと後退し霊夢はさながら小動物をゆっくりと追い詰める用に歩みを進めていた。
「いや、ごめんなさい!ほんと、ほんっとすいませんした!マジごめん!これはマジで!ガチで謝るこんなことは今後ないようにする!ごめんなさい!」
 霊夢はにこりと笑った。
 そして満面の笑みでこう言った。
「ん、ダメ☆」
「………………!!!!」
 魔理沙の声にならない声が幻想郷中に響き渡った。

 博麗神社の修繕など、色々と面倒事はあるが、秋めく幻想郷は概ね平和だった。
 そして、魔理沙はこの秋、心身共に大きな傷を負った。
 初投稿です
 生暖かい目がうれしい今日この頃
のスケ
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/11/21 20:32:22
更新日時:
2009/11/21 20:32:22
評価:
25/25
POINT:
119
Rate:
1.11
1. 3 百円玉 ■2009/11/27 22:27:55
バイオレンス霊夢さん、鬼巫女と称しても言い過ぎではなさそうです。
お話的には面白いと思うのですが、最初の二行で損をしている気がします。
もっと簡単に表現しても良かったような。『我が侭天人が起こした事件』とか『ドMちゃんの謀って要石ッ☆』とか。ごめんなさい。
僕も人の事は言えませんが、ちょっと読みづらいのと、誤字脱字が目立ちました。
2. 5 S&B ■2009/11/28 14:52:48
終始魔理沙が迂闊だったw
もっと描写の書き込みをすれば綺麗になりそう?
3. 6 バーボン ■2009/12/10 19:56:09
前半、鍋の中の水を巡っての場面は、何でもない事を大袈裟に書くギャップが上手く表現出来ていたと思います。ニヤリとさせられました。
惜しむらくは、誤字や脱字が少し目立ちすぎる事。読んでいて一々気になり、せっかくのテンポの良いギャグの流れが損なわれている気がしました。
4. 1 神鋼 ■2009/12/13 21:47:25
ギャグだからと割り切って読んでも荒すぎてなんだかなあといった感じです。
5. 6 ユッキー ■2009/12/19 22:23:41
血の雨が降ったんですね、わかります。
6. 7 静かな部屋 ■2009/12/21 14:29:27
すごい空回りしてるな

さすが魔理沙。

貧乏ネタはよく見るけど皆の優しさが素敵
7. 3 藤木寸流 ■2010/01/04 02:03:53
 ちょっと誤字多いかな。
 あと霊夢暴力的すぎてちょっと引く。このへんの線引きは個人的な好き嫌いもあるから微妙なのですけども。
 大真面目に馬鹿なことやってるっていう雰囲気は好きです。
8. 8 名前が無い程度の能力 ■2010/01/05 02:25:34
たかが雨漏り、されど雨漏り・・・
雨漏り(と憐れみ)によって生み出された人妖の強固な団結力に戦慄しました。
9. 6 文鎮 ■2010/01/07 21:22:49
畳と雨漏り、最悪の組み合わせですね。畳が腐ると目も当てられません。
鍋に全力を投入した彼女たちに乾杯。
10. 1 パレット ■2010/01/10 05:12:49
 謎のチームワーク。
 なんかいろいろと十六夜さんちの咲夜さんがやれとのツッコミ待ちなんだろう。
11. 5 白錨 ■2010/01/10 10:34:33
笑えました。
私ならできる〜の心の中の叫びとか、魔理紗の大失敗→リンチの下りの笑いのセンスが良かった作品でした。
12. 3 椒良徳 ■2010/01/11 18:50:11
初投稿ですか。お疲れ様です。
基本的な文章の書き方を守っていない、描写が薄っぺらいなど色々と言いたいことはありますが、
記念すべき初投稿ですので仕方ない。
とはいえ、たかが雨漏り相手に能力を遺憾なく発揮する主人公達は面白かったので、
控えめではありますがこの点数でご了承ください。

最後に。高い点が取れなかったとしても今後もめげずに頑張ってください。
13. 6 詩所 ■2010/01/13 22:09:10
 屋根の上に立った時点で誰か止めてやって下さい……。
14. 2 ホイセケヌ ■2010/01/13 22:40:05
、チ、遉テ、ネユ`ラヨ、莖モ專e、、ャカ爨、壥、ャ、キ、゙、ケ。」ウヘカク螢ィウSS」ソ」ゥ、タ、、ヲ、ャ。「ス~拳、ヒヘニヌテ、ケ、、ミ壥、ャ、ト、ッ・・ル・。」、ウ、ホ、ス、、ロ、ノ餃、、ヤ彫ヌ、筅ハ、、、ホ、タ、ォ、鬢筅ヲ、チ、遉テ、ネ壥、ナ荀熙゙、キ、遉ヲ、陦」

モ、ュ、ャ、ソ、ッ、オ、、「、テ、ニテ豌ラ、ォ、テ、ソ。」、゙、、ヌツサュ、メ侃ニ、、、、゚、ソ、、。」
15. 5 deso ■2010/01/14 01:00:22
なんてバイオレンス!
こういう力技は好みです。
16. 8 Lu ■2010/01/14 03:09:43
王道な展開ですかっと笑える軽快な作品で楽しませていただきました
最初の霊夢のキレっぷりが味があっていいですね
17. 7 零四季 ■2010/01/14 23:38:24
――――……(生暖かい目)
読みながら口元に笑みが。面白かっただけに、オチが読みやすかったのでもう少しひねって欲しかったなぁと強引に思ってしまうのでした。
ところで霊夢……。
18. 6 やぶH ■2010/01/15 00:26:00
なんというバイオレンス霊夢! は面白かったので問題はありませんねw
軽くさっくり読める楽しい内容でした。雨漏りという使い方は見逃していましたねぇ。
19. 7 2号 ■2010/01/15 10:05:54
雨漏りを受け止めるところで大笑いしました。
気楽に楽しめる高品質なコメディですね。
オチだけちょっと弱かったかな?
20. 3 八重結界 ■2010/01/15 15:43:42
 馬鹿なことに一生懸命な人達は見ていてとても面白いものです。
21. 2 時計屋 ■2010/01/15 22:41:51
 文章が読みづらいです。もう少し推敲を頑張ってください。
 ギャグも空回っている印象です。
 勢いも大事ですが、ちょっと腰を落ち着けても良いかと。
22. 4 焼麩 ■2010/01/15 22:57:47
>>若者同士が集まって
>>若者同士
>>若者
ダウトォーーー!!

無駄にアクロバティックな鍋回しは楽しめました。それに比べると後半はやや力不足かも。
もっと行間空けたほうがテンポよかったと思います。
しかしなんでこうも不憫な目に逢うんだ、博麗神社……
23. 6 如月日向 ■2010/01/15 22:58:35
 勢いが良かったっ。でも誤字も目立ちました。ここまで多いとちょっとテンポ悪く感じてしまいます。話は面白かっただけに残念です。

〜この作品の好きなところ〜
 鍋ひとつ運ぶのに、とんでもないチームワークを発揮するところっ。

〜誤字かな、違ったらごめんなさい〜
雨森
来れているそれは純粋な水
何かが仕えている
日を見るより明らか
変えの茶碗
お譲様
冷たく振る
etc...
24. 6 774 ■2010/01/15 23:01:51
何をそんなに全力で盛り上がってるんだという感じで面白かったです。
若干ベタかなー、と思いつつもきれいにオチてるのも良い感じ。

「雨森」は誤字ですね。
25. 3 木村圭 ■2010/01/15 23:09:57
いちいち突っ込み入れてたら楽しいんだか疲れるんだか、そんな感じでとにかく楽しかったです。
巷に溢れるツッコミキャラの方々は大変だなぁ。
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