朝露の花は

作品集: 最新 投稿日時: 2009/11/21 23:19:16 更新日時: 2010/01/17 01:51:34 評価: 17/17 POINT: 82 Rate: 1.19
T

「ねぇ、妖夢。あなたは、ハレの日とケの日。どっちが好き?」
 幽々子様の考えを読むのは至難の業である。けれど、あの日ほど幽々子様の気持ちを理解できたかもしれない、と思った日は無かった。

U

 その日は雨だった。小雨でも霧雨でもない。かといって、ざあざあと音を立てるほどの土砂降りでもない。ごく一般的な雨の日であった。
 私が住んでいる場所。幻想郷では冥界と呼ばれるこの場所は、白色や淡いピンク色が良く似合う場所である。だから、雪が降る日や桜が満開になった日の冥界は幻想郷随一の美しさであると思う。
 それを証明するかのように、春や冬は宴会で賑わう事が多い。
 けれども、それで私は雨の日の冥界が悪いと言いたい訳ではない。雨に濡れた風情ある花々や木々も見ると心落ち着くものだ。
 だが、私は雨が嫌いだ。
何故なら雨の日は私がやりたい事を全て邪魔するからだ。
 西行寺家専属の庭師をしている私にとって、雨が降ると言う事はすなわち白玉楼の庭の整理を出来ない事を意味する。
 不細工に伸びてしまった木々を整えたり、花々を貪り食う害虫の駆除さえもできなくなるのだ。勿論、地味だと言われるかもしれないが、草や木々、花達に水をやる事さえもできない。(雨だからやる必要も無いのだけれど、自分でやった方がやはり達成感がある)雨に仕事を全て奪われてしまうのだ。
 それだけが原因なら、私は雨を嫌いだとは言わなかっただろう。
 私にとって雨を嫌う理由は実はもう一つある。
 白玉楼の庭はかなり広い。中には空き地としか言えない場所も存在する。そして、その空き地は私にとっては大変重要な場所である。
 単刀直入に言おう。その空き地は私が剣術の稽古に使う場所である。私が所持する刀。「楼観剣」と「白楼剣」は性質も違えば、長さも違う。「白楼剣」を使った修行をするのであれば、その短さ故に屋敷の一室でも借りて修行をすれば良いのだが、私は弾幕ごっこ等に両方の刀を使うので「楼観剣」の修行をおろそかにしてはならない。
 しかし、そうなると長いリーチを持つ「楼観剣」を使う為にはやはり白玉楼の屋敷の一室では狭いし、仮にできたとしても周囲の物を破壊してしまう恐れがある。
それは従者にとってあるまじき行為である。
 そういう訳で私は雨が嫌いだ。だから今日の私のテンションは高いとは言えなかった。廊下を歩く足取りが心なしか重かった。
 私は何となく立ち止まって、縁側から外の様子を見た。
 鉛色の空から、雨粒は落ちてくる。どうやら今日は雨が止む事は無さそうだ。そう思うと、私の士気はますます下がるばかりだった。
「そういえば……」
 そんな時。ふと私は思った。
「今日は幽々子様から仕事をもらわないな……」
 全く不思議な事であった。
 私が仕えている西行寺家のお嬢様。西行寺幽々子様は、今まで仕えていても、何を考えているのか良く分からないお方である。
 それでもただ一つ分かる事は幽々子様が私に与える仕事は少なくないという事だ。 幽々子様はいつも突然に「ねぇ、妖夢。お腹空いた〜」「妖夢〜。喉が渇いたわ」という事を言い出す。
 けれども今日は、まだ一つも仕事をもらっていない。
 現在は巳の刻。山の現人神風に言うならば、午前11時である。いつもならば、ここまでに最低でも十個はお仕事をもらっているはずなのだが……。
 そう思うと、私は少し気になった。
 朝、布団から幽々子様を起こした時はいつも通り元気な姿だった。それを考えると、ますます心配になるばかりであった。
「あっ」
 ちょうどそんな時である。
 私は淡いピンク色の着物を着た幽々子様の姿を見つけた。雨だというのに、屋敷の縁側に座って外を眺めていた。
 その着物には五分輪の花が描かれていた。季節は五月だった。

V

 言うまでも無いが、私は幽々子様の従者である。
 したがって、私は幽々子様の身を出来る限り案じなければならない。だから、雨のこんな寒い日に幽々子様を縁側に座らせたままにしてはならない。
 万が一、風邪など引いたらそれこそ従者としての責任不足である。
 屋敷の中へ幽々子様を連れ戻すため、知らない間に私は幽々子様の下へ駆け出し、こう叫んでいた。
「ちょっと! 幽々子様!? こんな寒いのに何をしているんですか!? さあ、早く中に戻ってください!」
「あら、妖夢」
 幽々子様の対応はいつも通りだった。穏やかだが、暢気な声を上げて、私に顔を向ける。その顔には感情の読めない微笑が含まれていた。
「幽々子様、聞いていましたか? 寒いので中に戻ってください! 風邪引きますよ?」
 私の口調には焦りが出始めていた。
「ここだと雨が当たらないから大丈夫よ〜」
 と、幽々子様はいつもと変わらぬ調子で答えた。相変わらずテンポを乱される。でも、そのおかげで私も少し落ち着きを取り戻した。
そう言えば、幽々様が座る場所の上には屋根がある。
 雨避けになっていた。
 だからと言って、幽々子様を放置するのはどうだろうか? そう考えようとした時。
「ねぇ、妖夢。あなたは、ハレの日とケの日。どっちが好き?」
「ふえっ?」
不意打ちだった。おそらく変な声が出たのであろう。幽々子様はくすくすと笑っている。
「言い方が悪かったかしら。じゃあ、妖夢。あなたは雨の日と晴れの日。どっちが好み?」
 今度は少し優しく幽々子様は言った。
「そういう事ですか……」
 私は肩をすくめて、答えた。
「私は晴れの日の方が好きです。雨の日は庭師としての仕事も剣術の稽古も出来ませんし……。何よりも暇ですから」
「そう。じゃあ、今日は妖夢を嫌ほど働かせてあげるわ」
 と幽々子様は悪戯な笑みを浮かべて答える。
 私は「変な事は勘弁してくださいよ」と言うと、「冗談よ〜。妖夢〜」といつもの暢気な調子に戻った。
「幽々子様は」
 幽々子様に尋ねてみる。
「雨の日と晴れの日。どっちがお好きなんですか?」
「私?」
 きょとんとした顔を幽々子様は見せた。
「そうね〜。私は……」
 思案するような顔をした後で、
「どっちも好きよ」
 と笑顔で答えた。はっきりしない、いつもの幽々子様らしい答えだった。
「えっ? そういうのもありですか?」
「うん。そうよ。だって私。どちらか片方を選べ〜、なんて言ってないでしょ?」
「意地悪です」
「意地悪だもん」
 と、いつもの会話を続ける。けれど、そんな会話をしていても私は幽々子様の様子がいつもと違うのを感じた。どこか物寂しいというか、満たされてないというか、そんな雰囲気を感じた。
「でもね。妖夢。私は雨の日と晴れの日。どっちも好きなのは本当よ」
 そう言う幽々子様は私ではなく、外を見つめていた。
「昔ね。朝露に濡れた花は、夜明け方の桜に勝るって言った人がいたわ」
 誰に言う訳でもなく、ただ呟いてみたという感じだった。
「桜に勝る花……ですか?」
「ええ」
 私も幽々様も一番好きな花は桜なので、私にとっては何の花かというのは皆目見当も付かなかった。
「橘の花よ」
 幽々子様は見つめる先を指差す。そこには白い五分輪の花が雨露に濡れながらも咲いていた。
「妖夢は橘の花があそこにあるの。気付かなかったの?」
「……。恥ずかしながら」
 結構の間、庭師をやっているが、花の場所などはあまり詳しくは覚えていなかった。それよりも、木々や花々が成長していく様やレイアウトなどに私は気を取られていた。
「それは感心しないわね、妖夢。今度からは、花の位置をちゃんと覚えなさい。じゃないと、季節の美しさを理解できない子になっちゃうわよ?」
「……有難うございます」
 私は幽々子様に一礼する。庭師として、反省すべき点であった。そのためか、幽々子様の言葉が心に響いて、すぅっと体に染み込むような感覚を覚えた。
「もしかして、5月だから、橘の花が召された着物を?」
「あら、ばれちゃった?」
 悪戯がばれた子供のような無邪気な顔をする。
「うふふ。綺麗でしょう? 特注品よ? もっとも、大分と前に作ってもらった奴だけど」
「ええ、似合っています」
「ふふっ。有難う」
 幽々子様にお礼を言われると、照れるのを隠し切れない。そんな表情を幽々子様に見られると、またいじられるので、黙って外を見る事にした。
 外はやっぱり雨だった。

W

「ねぇ。妖夢」
 幽々子様は雨模様の景色を依然として見つめている。私も、幽々子様を屋敷に連れ戻す気が失せてしまったので、隣に座っていた。
 そんな時に幽々子様が、私に声を掛けた。
「どうされましたか?」
「私が、雨も晴れも好きな理由はね……」
 幽々子様の目線は橘の花だった。
けれど、私はそれを気にしなかった。それよりも、幽々子様から自分の話をする事が珍しく、そちらに気を取られていた。
「私も、朝露に濡れた橘は美しいと思うのよ」
「はぁ」
 私は相槌を打つ。
「でもね、朝露に濡れた橘を見るためにはその前日に雨が降らないといけないでしょ? でも、雨が降り続けてもだめ。橘が輝くためには、次の日は晴れないといけないの。だから私は雨の日も、晴れの日も好き」
 そういう事よ、と幽々子様は締めた。
「なるほど」
 幽々子様の意見に頷く。
 だけど、幽々子様が言いたいのはそれだけじゃないような気がした。
それは正直言って、私が幽々子様に仕えてきて培った直感に過ぎないが、それでも何となく幽々子様は何かを私に伝えたいのだろうという気がした。そうでもないと、自分の話を幽々子様の方からしないだろう。
「あの未確認飛行物体の事件。もう解決しちゃったみたいね」
 唐突に幽々子様はそんな事を言い始めた。
 感慨深そうに。
 未確認飛行物体の事件。
 それは私も勿論知っている。
 あの空に浮かんでいた船は星蓮船と言って、その中には、拳や船の錨を大胆にも弾幕に使う者がいた事や、その船が向かった先は魔界だった事。そして魔界には千年も封印されていたという元人間の魔法使いがいた事を、霊夢や魔理沙から聞いている。
 山の現人神がエイリアンとか言う生物について熱弁を振るっていた事もよく覚えている。
 それに私自身、里に出ていった時に封印されていた魔法使いである聖白蓮の姿だけは見ている。
 その時持った印象は、もの凄く母性的で優しさに溢れているのに、どこか惹かれる所はある女性というものだった。
 幽々子様とは似たようで似ていない雰囲気を持つ方だと思った。
 それでも私が慕うのは幽々子様である事に変わりは無い。
 けれども、どうして今頃になってそんな話をするのかと私は疑問に思った。
「どうしたんですか? 幽々子様?」
「う〜ん。それよりも、早く雨が終って欲しいわね〜」
 いつの間にか話題が変わっていた。
「さっきは、雨が好きだって言ったじゃないですか」
「ええ、雨は好きよ」
 さも自分は矛盾をはらんだ発言をしていないように幽々子様は答える。
「でも、止まない雨は意味が無いと思うわ」
「はぁ」
 幽々子様の言いたい事が未だに理解できない私がいた。ただ、首を傾げる事しかできなかった。
「もし、私たちが『雨』だとしたら……」
 幽々子様は屋敷の外を見つめて答える。
「『雨』が止むまで、映える事は無いわね。妖夢」
「つまり、どういう事ですか?」
「兎は寂しいと死んじゃう、と言う事よ。最も、永遠亭の兎達は寂しくても元気そうだと思うけど」
 幽々子様は私に微笑んだ。普通なら「察しが悪いわ、妖夢」という感じの嫌味の一つを言われただろうが、今日の幽々子様はどこか優しく儚げだった。
「さて」
 幽々子様は立ち上がる。それと共に着物に閉まっておいた扇子を取り出した。桜模様が描かれた美しい扇子である。
 長い間使っていると私は聞くが、その割には傷一つ見当たらない。新品同様といっても過言ではない美しさである。
 それは千年以上も亡霊であり続けて、なおもその美しさを保つ幽々子様本人を表すようだった。
「確かに、妖夢の言うとおり寒いわね〜」
 幽々子様は少し震えてそう言った。なんだかんだで、私の話は聞いていたようである。
「えっと、じゃあどうされますか?」
「とりあえず部屋に戻るわ。あっ、お昼ご飯になったら呼んでね。一食でも抜かすと私死んじゃうから」
 扇子で口元を覆いながら、幽々子様は自室へ戻って行った。その様子を見送って、私は外の景色に視点を変えた。やはり依然として雨であった、
 私は「雨は嫌い」だと言った。
 が、今思うと、雨も案外悪く無いかもしれない。
 それは幽々子様の意見に流されたというのもあろう。でも、理由はそれだけではない。
 確かに、雨は私の仕事だけではなく修行の時間までも奪っていく。
 けれど、この冥界の静けさに響く雨音は、冷静になって考えてみると悪くないかもしれない。この音を聞いていると、自らの精神が研ぎ澄まされていくような気分になる。
 いつの間にか集中していた。
 雨が地面を打つ音が思考をクリアにしていくのを感じていた。先ほどまでの、幽々子様との会話が自然と思い浮かびあがった。
 あの時、会話をしていた時は全く持って幽々子様の言う事を理解できなかったけれども、今なら幽々子様が言おうとしていた事がなんとなく分かるような気がする。
「幽々子様は……」
 頭の中に浮かんだ、ぼんやりとしたイメージを外の世界に吐き出す。
「暇なのかもしれない」
 口に出してみると、その推測が的外れではないような気がした。
 よく考えてみると、私達が率先して動いた大事件と言えば、あの永夜事件以来無い。強いていうならば、あの天人の気質の騒動があったが、あれを大事件と呼ぶかどうか聞かれれば、答えに迷ってしまう。
 そう考えると、幽々子様は暇を持て余しているとも考えられる。時々、紫様を初めとした客人が来るけれども、それはそれで、のんびりとしたものだし、刺激のようなものはほとんど無い。
 幽々子様は平和な日々を過ごしていた。
 それは決して悪い事では無いのだが、周りが楽しそうなのを――、霊夢や魔理沙そして早苗でさえもが、様々な事件を解決するのに勤しんでいるのも見ると、ある種羨ましくなったのかもしれない。だから、いきなり星蓮船の話を持ち出したのだろう。
 幽々子様は自分達は『雨』だと言った。それはつまり私たちは橘の花である事を暗示しているのではないだろうか。
 それはまさに、橘の花が雨の止むのを待つように。橘が自分を最も表現できる雨が明けた朝を待つように。
「よしっ」
 幽々子様の気持ちを考えると、私は無意識に立ち上がっていた。
「幽々子様の為に、何かおもしろい事件でも探してこよう」
 一度、私は天人の騒動の時に自ら幽霊が消えていく事件の真相を確かめたことがある。あの時は、冥界から出ようとした早々、幽々子様に呼び止められ、そのままの流れで弾幕ごっこにまでもつれ込んでしまったが、今日は流石に呼び止められないだろう。
 刺激は自分から求めていかないと、やって来ない。だから、お昼が過ぎた頃合を見て、博麗神社や人里にでも行って異変探しでもしてみようと思う。雨の日の人里は普通とは違う事が起こる気配がする。
 そう気持ちを切り替えた瞬間だった。
 案外、異変というか騒動というものは気持ちを切り替えるだけで勝手にやってくるらしい。
「ゴルァァァァ!! 紫! どうせ、ここに隠れてるんでしょ!!」
 突然、雨の日の空から怒鳴り声が聞こえてきた。
 良く聞く声だった。
 鉛色の空から、何かがふわふわと飛んできていた。
雨の日は鳥は空を飛ばない。こういう常識外れな空中飛行をするのは私も良く知っている奴しかいない。
「よっと」
 白玉楼の縁側に、幽々子様の許可を取ったわけでもなく、紅と白の巫女服を着たあいつが降り立った。
 博麗霊夢である。
「何しに来たのよ」
 思わず私は口走っていた。
「特に用が無いなら、ここで斬り捨てるわよ」
「あ?」
 鋭い眼光。思わず私もびくりときてしまった。情けない。少し足が震えている。けれども、今日の霊夢の目にはそれほどの恐怖心を相手に覚えさせるほどの邪気が溢れていた。
「なっ。何の用よ」
 咄嗟に言えた言葉はそれだけだった。
「ねぇ、ここに紫のババアが来てない?」
 怒りに満ちた声で、私に詰め寄る。
「紫様? 知らないわよ」
 正直言って、紫様はスキマで移動するから、もしかしたら幽々子様の部屋にいるのかもしれない。と付け加える。
「ふーん。そう。なら上がらせてもらうわ」
 霊夢はなりふり構わず白玉楼に侵入する。霊夢が一歩進む事にドスン、ドスンと言う音が響いていた。何があったのか分からないが相当、頭に血が上っているようである。
 触らぬ神には祟り無しだ。
「……。って、だめじゃない!」
 そう思い直した自分がいた。よくよく考えれば幽々子様に危機が迫っている事に気付く。
「あの、紅白巫女! やっぱり斬り落とす!!」
 私が幽々子様の部屋へ向かおうとした。その瞬間である。
 ビュン。という空を切る音と共に、私の目の前に何かが現れた。
「ああ」
 それが人の姿だと分かった時には、私はその人物が誰かを認識していた。その人物が頭を振ると、長い髪から雨の雫が散らばり一種の芸術を生み出した。
「冥界とはこんなに白く美しい場所だったのですね。人間をやめて分かる事もあるな……」
 その人物。聖白蓮は、突然に私の前に現れ、立ち上がり様にこう言った。感慨深そうな声を出して、その目は好奇心に満ちていた。
「お前は、聖白蓮!!」
 予期せぬ侵入者に私は楼観剣に手をかけた。威嚇の眼差しを聖白蓮に向けた。
「あら?」
 私に気付いた聖白蓮は私に振り向く。
「はじめまして……。ええと。幽霊さんでいいのかな? 私の名前を知っていてくださるなんて光栄です」
 聖白蓮は丁寧に私に向かってお辞儀をした。敵対心は全く感じられなかった。
正直言って、拍子抜けだった。気付いた時には刀から手が降りていた。
「何の用……ですか?」
 問いただすつもりが、思わず敬語になっていた。
「ああ、それを、忘れていました!」
 手を合わせて聖白蓮は言う。
「実は……」
 聖白蓮が何かを言おうとした。その時である。
「紫ィィィィィィ!! やっと見つけたわ! 私のようかんを今すぐ返せ!!」
 怒鳴り声が屋敷から聞こえてきた。霊夢の声である。
 方角は……幽々子様の部屋からだった。
「一個ぐらいいいじゃない。最近、私も頑張ったから、霊夢から私へのご褒美ですわ」
「アンタにあげるご褒美なんか一つも無い!!」
「あらあら、二人とも。相変わらずね〜」
 物が破壊される音が屋敷に響く。むごい音だった。それに対して幽々子様の声は何だか楽しそうだった。
「ああっ! もう!」
 これ以上聞いてられない、と私が屋敷に入ろうとした。その時である。
「全く……。相変わらず霊夢さんは……」
 隣にいた聖白蓮のオーラが変わっていた。怒りというか、閻魔様顔負けの説教が始まるようなオーラだった。
「今に生きる博霊の巫女は、全く持って妖怪に対し無慈悲で、頑迷固陋である――、いざ南無三ッ!! 幽霊さん! 勝手ながら、失礼します! ごめんなさい!」
 そう呪文のように叫ぶと、聖白蓮は文字通り目にも止まらぬスピードで白玉楼の中に入っていた。
私はその気迫に圧倒されていたが、
「ハッ! こんな事してる場合じゃない!!」
 と、すぐに聖白蓮の後に続いた。
 これは予想にしか過ぎないが、おそらく今日一日の被害の白玉楼への被害はとんでもない事になるであろう。屋敷の中にあるものの多くが無残にも破壊されるだろう。
 けれど――、
 今日は幽々子様も暇をせずに過ごせると思う。面倒な一日になりそうだけど、幽々子様の気分が晴れるのなら、まあいいか。と思う自分がいた。
                              「完」







 
最後までお読みいただき有難うございました。
要するに、ゆゆ様の出番をくれーーッ! という事です。STGでゆゆ様がまた使いたい……。
あっ、でも星蓮船組は大好きです。ひじりん可愛いよ、ひじりん。最後の聖は私の欲望です。申し訳ないです。


追記 誤字訂正。+たくさんのコメント有難うございました! 以下、コメント返しです。と私の感想です。

>静かな部屋様
点数が高い事に恐縮しております。
でも詰め込みすぎですね……。最も、滅茶苦茶なENDで終らせようというプロットを立てたのでこうなってしまったのですが、流石に唐突でおもしろみが無かったです。
リアクションが同じなのは、今見返して気づきました。完全にミスです(汗)

>神鋼様
妖夢にしても、藍にしてもねぇ。そう思うと、咲夜さんは結構気楽にやっているイメージがあります。

>バーボン様
お褒めの言葉有難うございます。プロット作成に使った、ネタ晴らしをすると清少納言の「木の花は」の風情がはまったようでこちらも嬉しいです。
ただ、後半の乱雑な終り方についてはバーボン様の言うとおりだと思います。まさに「ひどい」けど書いていた時の私はそう思わなかったみたいです(汗) というのもプロットの段階で「やかましく終らせる」にするか「しんみり」と終るかを考えて前者を選んだからです。皆様の批評を見るに、それは大きなミスでしたw とても参考になるアドバイスを有難うございます。

>藤木寸流様
あーそうか。妖々夢は、冥界を動いて無いだけで、春度を集めたりしてやらかしてましたね。盲点でした。
賑やかに終らせる事を選んだ私が馬鹿でした(汗) この雰囲気に慌しいのはダメですよね。なんで気付かなかったんだろう……。

>パレット様
統一感が無い、素晴らしい一言です。参考になりました。確かに、統一感が無いと読者は「ん?」と思ってしまいますね。言葉ではうまく言い表せませんが、感銘を受けております。これから先のプロット作りに役立たせていただきます。有難うございました。

>リコーダー様
全く収束させなかったのはミスでしたね(汗) 私もどの道を取るか迷ったのですが、これが読者の意見か。と思うと、これから先の参考になりました。


>椒良徳様
誤字のご指摘感謝します! 危機と聞きを間違えるとは……。情け無い。
えっととりあえず一つずつ分けて、返信させていただきます。
@幽々子について
彼女らしくはあったけど、おもしろくなかったか。実は、それは私個人も他の皆様の作品を読んでいて感じていました。こうなんか、切れがない。というか、楽しくない。というか……。はずしてたら申し訳ないです。
A聖白蓮について
登場の意味とか、登場する必要性とか全くもってありませんでした。完全に聖が好き過ぎて出したいのみの感情でした。 これは失態だったな……。でも、改めて言われることでしみじみと感じました。有難うございます。
作品のおもしろさが分からない、だけでなく、色々と細かくご指摘有難うございました。価値観が違う人の感想は本当に参考になります。視野がひろがるように感じます。

>詩所様
冥界組はゆゆ様ののんびりしているのと、妖夢の真面目さの調和で成り立ってると思います。
誤字報告感謝します!

>deso様
どうかんがえても白蓮は余計でしたね。俺の嫁は出したい! という感情で出したのは完全なる間違いでした。出すなら出すで、きちんと土台を作らないとな……。

>八重結界様
妖夢は本当に忠実な従者だと思います。健気かー。妖夢とかけ離れているようで、彼女を形容している言葉なのかも。

>2号様
風情があったと思って下さったなら光栄でございます。尻つぼみの理由は、統一感の無さが原因ですね。反省しています。

>やぶH様
ええと、どう返せばいいのでしょう。とにかく精進します(汗) 終り方を賑やかではなく「しんみり」と終らせたら少しはましになるのでしょうか(汗)

>零四季様
高得点有難うございます! 信じられない自分がいる。
個人的な幻想郷らしさでしたが、それが伝わってくれたと思うと嬉しくてたまりません。このらしさを崩さないようにしていこうと思います。


>時計屋様
しっとりを選ばなかったのは本当に後悔しております。雰囲気、崩しちゃったな……。
文章、構成共に可もなく。不可もなくは嬉しいです! 一つの通過点を通り過ぎた感じがする。これからも精進します!

>如月日向様
ドタバタが中途半端すぎるのもマイナスでしたね。「しっとり」か「賑やか」きちんと選ぶべきだと思いました。
好きな所なんて書いてくれるとは……、嬉しくてたまりません! 切り替えの部分は、彼女達らしさを出したかったので。有難うございます。
明らかに誤字です! ご指摘有難うございます。

>近藤@紫様
10点!? なんといっていいのか分からないほど嬉しいです……。感無量です。
ゆゆ様と白蓮は私も大好きです。今度はきっちりと二人を使えるようになるよう頑張ります!

感想。
自分のセンスの無さが浮き彫りになりましたね……。統一感が無い、どたばた、聖の意味が分からない。心に染みました。このこんぺ出て良かったと思います。
しかし、いや初投稿だったのですが、こんなに多くの感想と、アドバイスと、予想外の点数が出たのはどれも嬉しくてたまらないです。来年は受験なので今年は書くのは難しそうですが、また参加したいなぁ。とにかく、コメントを下さった皆様! 読んでくださった皆様! 本当に有難うございました! もっとおもしろいものは書けるように努力します!
最後に。この作品のベースは清少納言作「枕草子」の一節「木の花」でした。清少納言の機知に富んだ姿が素晴らしいので興味があれば、手にとって……。て、宣伝じゃねえか……。ごめんなさい! では!
白錨
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/11/21 23:19:16
更新日時:
2010/01/17 01:51:34
評価:
17/17
POINT:
82
Rate:
1.19
1. 7 静かな部屋 ■2009/11/28 17:03:02
自覚症状があるようですが、最後ちょっと詰め込みすぎな感じがしました。
二回とも妖夢のリアクションが同じだったのが。
2. 5 神鋼 ■2009/12/18 20:11:32
従者とはかくも大変なものであります。
3. 5 バーボン ■2009/12/28 15:23:44
中盤までの雰囲気の作り方が非常に上手かったと思います。橘の花を題材にした風情あるやり取りも素敵でした。
ただ、終盤でそれがいきなり壊されたと言うか……それまでの展開との余りのギャップに戸惑ってしまいました。台詞回しの一つとっても、中盤までの繊細さを全て台無しにしているような気がします。
もしかしたら、そこのギャップこそが作者さんの書きたかった物なのかもしれません。が、そうだとしても乱暴な印象を受けたのは確かでした。
4. 4 藤木寸流 ■2010/01/04 03:00:54
 冥界組は基本あんまり動かない感じなのでにんともかんとも。
 妖々夢がいちばんやらかしてたけど、あれ以上のこととなると特に思い浮かばないあたりが地縛霊の辛いところです。
 あとは霊夢が登場してきたあたりからなんか無駄に慌ただしくなって済し崩しに終わってしまった感あり。
5. 2 パレット ■2010/01/10 05:24:30
 なんかゴルァァァァ!!からおかしくなったなw
 「もし、私たちが『雨』だとしたら……」のあたりとか妙に示唆的なのが出てきたのでそういう話かなと思ったのですが……全体的にあんまり統一感が無くて、でもそのへんもまた魅力なの……かなぁ。
6. 4 リコーダー ■2010/01/11 14:37:58
いい話……なのかと思ったら、後半全く収束しないとは。
まあ、作者のやりたいようにやれば良いとは思うんですけど。評価はまあ。
7. 5 椒良徳 ■2010/01/11 19:42:50
>よくよく考えれば幽々子様にも聞きが迫っている事に気付く。
”聞き”ではなくて”危機”でしょう。

それはともかく。何と言ったらよいのか判りません。
雰囲気を楽しむ作品なのかもしれませんが、微妙に外している気が無きにしも非ず。
最後に聖が登場する理由も判りません。
いや、俺の嫁だからとおっしゃるのならばそれはそれで非常に良く判るのですが。
ゆゆ様の思わせぶりな発言も、らしいといえばらしいですが、それが面白いかと言うと……
申し訳ありませんが、作品が酷いとかそういうことは全くありませんが、個人的に合いませんでした。
この作品の面白さが私にはまったく判りません。
とはいえ、文章自体は人並みなのでこの点数を入れさせて頂きます。
8. 4 詩所 ■2010/01/13 22:22:53
 幽々様ののんびりしている姿を見ていることが癒しになります。

 誤字報告
>聞きが……
 危機が
9. 4 deso ■2010/01/13 23:59:37
ほほえましい主従の会話。
妖夢可愛いよ妖夢。
でも、白蓮さんは余計な気がします。
10. 3 ホイセケヌ ■2010/01/14 17:17:18
、荀テ、ム、ラ矣、ャノ゚ラ网ヒクミ、ク、゙、キ、ソ。」
ョ壥、ヨ、チ牡、キ、ネ、、、ヲメ簧カ、ヌ、ス、ヲ、タ、キ。「シモ、ィ、ニ、サ、テ、ォ、ッツ荀チラナ、ュ、ス、ヲ、タ、テ、ソ・ニゥ`・゙ミヤ、ャ、「、荀ユ、荀ヒ、ハ、テ、ニ、キ、゙、テ、ニ、、、、キ。「痩、ャ牡、、ケ、ョ、ニラ矣、ヒ、ト、ア、ソ、ケ、ヒ、マ・、・・ム・ッ・ネ、ャ所、ケ、ョ、。」、筅テ、ソ、、、ハ、、壥、ャ、キ、゙、ケ。」
11. 3 八重結界 ■2010/01/15 16:48:21
健気な妖夢は見ているこちらも心温まります。
12. 5 2号 ■2010/01/15 18:56:00
雨の白玉楼は風情があってよかったのですが、ちょっと尻つぼみの印象でした。
13. 5 やぶH ■2010/01/15 21:26:10
コンペには時にこういった類の作品が多いのですが、少々評価に困ります。
構成、キャラともに、話の焦点が絞れていない気がします。何を語りたいかをはっきりさせ、説得力のある物語を編んでほしいです。
14. 7 零四季 ■2010/01/15 22:06:48
退屈は人をも殺す。亡霊は死ぬだろうか? さておき良い話でした。幻想郷っぽいなぁと。
異変へと向かう日常らしさが出ている気がしました。
15. 5 時計屋 ■2010/01/15 23:09:16
 最後はドタバタに移行せずにそのまましっとりと終わったほうが良かったかも。
 それ以外は、文章・構成共に可もなく不可もなく、といった印象です。
16. 4 如月日向 ■2010/01/15 23:16:37
 もっとドタバタした感じがあっても良かったと思います。

〜この作品の好きなところ〜
 淡々とした妖夢の語り口調で始まりながら、妖夢の第一声が"ちょっと! 幽々子様!?"だったところっ。

〜誤字かな、違ったらごめんなさい〜
私も幽々様も
幽々子様にも聞きが迫って
17. 10 近藤@紫 ■2010/01/15 23:29:36
(><) ゆゆ様と白蓮可愛いですっ
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