超氷精妖化銀弾頭

作品集: 最新 投稿日時: 2009/11/21 23:56:04 更新日時: 2009/11/21 23:56:04 評価: 15/16 POINT: 57 Rate: 1.03
0対0。

10対0。

20対0。

30対0。

40対0。

50対0。

勝敗をカウントするのも面倒になってきたころ、春になったとは言えまだまだ早い日が、落ちた。
この湖はそろそろ春の匂いがし始めているものの、妖怪の山等はまだまだ寒いだろう。
そんなことを思いつつ、目の前の鴉天狗を見上げる。

「はい、これで50戦50勝です。チルノさん」

彼女はあたしを見下ろす感じで、そういいつつも思いっきり弾幕で遊べたことにまんざらでもなさそうな顔を
余裕の笑みと共にあたしに見せ付けてきた。
それを見て、流石のあたしも負け続きで参ってきたのだけれど
ここで睨み返すのも、泣き出すのも、喚くのも、何か違うなって思ったから、微笑み返した。
少し目じりからこぼれた涙は、きっと、気のせいだ。

「ってああ、こんなことしにきたんじゃないんですよ!
 取材しに来たのに……」

あたしは取材のついでにボコボコにされたのか。
そう思ったけど、ここで睨み返すのも泣き出すもの喚くのも違うと思ったから、「ふふふっ、取材なら受けて立つよっ!」と
にこやかに挑戦的に取材を受けた。

「ま、大したことじゃないんですけどね」

ないのかよっ。……と突っ込む間も無く、彼女は愛用と思われる手帳を取り出した。
あたしは身構える。一体、どんな取材なんだ……!

「この『緋想天式弾幕決闘』の感想と、最近雨が降らないこと、この二つについてなんです」
「そうか、ちょっと待って」
「はい」

あ、あんま大したこと無かった!
えっと、一つ目、緋想天式弾幕決闘のことか。
もちろんあたしは大好きになれた。
ただ、相手が悪かったとしか言いようが無い。
いや、文が強いとかそういうことではない。だって、殴り合いみたいになってるけど、あくまでこれは美しさを競うものだしね。
そうじゃなくて、何と言うか、さっきの文は、文じゃなかった。
鬼人のようなガードの固さと、打撃連携の繋ぎ方。
対戦しているうちに一回は、四回触られただけでノックダウンしてしまったラウンドがあったかもしれない。ぶざまだった。
それに比べてあたしときたら、そりゃ経験の差もあるのだろうけど、ぜんぜん敵わなかった。

だから、つまんなかった。
だって、なんにせよ、どういうことにせよ、勝てないと、つまんないから。

二つ目、最近雨が降らなかったこと。
さて、あたしはここで、ちょっと首を捻る。

「ねぇ、いつものブン屋」
「はい、何でしょう?まとまりました?ま、ちょっとの間雨が降らないのなんてよくあることです、これはただの世間話みたいなもんで……」
「雨なんて、結構降ってるじゃない?」

彼女は固まった。少し経った後、やはは、という、苦笑いとも逃げ笑いとも取れる笑い方で

「んー、そうですか。判りました、ではこの辺で……」

と言って、どこかに行こうとした。
明らかに話し早く終わらせたがってるよね、これ。

「え?ねぇ、ブン屋!何よ!何なのよ!」
「え?いや私だってここまで妖精の頭が悪いとは思わないわよ。
 あ、一句思いついた!『妖精頭 たった三歩で 雨を忘るる』なんちゃってプクク」

人を小ばかにするような口調に戻って、センスどころかまともな意味すらわからない川柳を詠んだ文を睨むと
彼女はひとつ咳払いをして、元の取材モードに戻った。

「おっとすいません。今のは小ばかにしただけなので、私にセンスがないわけじゃありませんので。
 それで、雨の件ですけれど。……それは、本当なのですか?」

取材モードの文は中々に真剣で、ちょっと憧れ、というか、何というかな感情を抱いてしまう。
あたしは妖精だから、何かにまじめになるのはおかしいし、たくさんイタズラをして、毎日楽しければそれでいいのだけれど
その一方でどこか現状に満足しないあたしも居て、その辺よくわかんなくて、何と言うか、よくわからないのだ。

「チルノさん?」

文は続いて問いかけてきた。多少なりとも切羽詰った彼女の顔は珍しくて、ちょっと噴いてしまってから「ほ、本当だよ」と答えた。
それを聞いた彼女は、しばらくブツブツと何かを考え込むように言って、確かにだとかこの辺妙に曇ってますよねとかそういえばまた船がとか何とか言い終わるともなく
その長く細い、けれどもムチみたいに柔らかくて、振ったらびゅんびゅん言いそうな、とにかくその脚に力をこめて

「うおおおおお!異変です!これは!うっひょおおおおお!今すぐ巫女に突撃取材ですよね!うひー!」

と叫んだ後、凄い衝撃波と竜巻のような風を出しつつ飛び上がり、すぐに見えなくなった。
一人取り残されたあたしは、50敗もしてしまったムカムカをどこにぶつけようか考えて、何かむなしくなった。
文の風のせいで吹き飛んできた、顔に張り付いた草をぴっぴっと取り、湖のすぐそばまで行って寝転んだ。
ちょっと踏み外せばまっさかさまに湖の中。このスリルが堪らないのよね。
最近の寒さは、あたしにとっては涼しい程度だけど、たまにこの辺に散歩に来る人間は、なかなかの重装備だった。
そこまで考えて、誰か落としてやるのも楽しいかもしれない、と思ってすぐにあたしは行動を、つまり人を探し始めるか呼ぶかすることにした、けれど。
けれど別の何かを感じてふ、と空を見上げると
馬鹿でかい、というほどでもなく、霊夢の神社ほどの大きさの……船?が、ちょっと暗めの雲を纏って天空を蹂躙していた。
あたしはその不思議な船にしばらく見とれてたけど、すぐに見えなくなった。まぁ、この程度幻想郷にはよくあることね。イタズラのほうが大事だ。
その船のせいで何をやるか忘れてしまったので、ちょっと文の言っていたことを考えてみる。

雨が降らないって、はたして本当なのだろうか。いやまぁ、たぶん、冗談かなんかだと思うけど。
だって、この霧の湖は、ほぼ二日に一回は、ほら、

ぽつぽつ、ぽつぽつと、雨が、降って……あれ?しばらく考え事してたら雨降ってきちゃった。まぁたまには濡れるのもいいかもね!

……って、すっごくざーざー雨降ってきたじゃない!
あたしは雨宿りをする場所を探そうと思ったけど、もう手遅れなほどぬれてしまったから、神社で何か体を拭くものでも借りようと思い
霊夢の住む神社目掛けて羽をぱたぱた動かしはじめた。羽が濡れて重かった。




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「おう、雨だぜ。私は、元気だぜ?
 あまり近寄るな?あまり近寄るなよ?私のハートも箒も、ドキドキするほど雨ってるぜ!」

夕焼けこやけの縁側に腰掛け、手にした本の内容と思われるものを読み上げる魔女風の少女。
彼女こそが数少ない異変解決人の一人、霧雨魔理沙である。
え?巫女はともかく、異変解決でいい加減彼女はマンネリ?何、気にすることは無い。
私の手元のこのマンネリの権化を見よ。『最終幻想11完全攻略!大丈夫!ファミ通の攻略本だよ!』と名づけられているこのタイトルの書物は、どうやら1〜10もあるようじゃないか。
最終幻想攻略1〜10は残念ながら持ち合わせが無いが、最終幻想攻略11は、どうやら幻想入りしてしまったようである。
さぞかし関係者は悲しみが鬼なったろう。

「降らないな、雨」

話を戻す。
ここは、博麗神社。楽園の巫女が住む「妖怪専用」神社である。……間違っては居ないはずだ。
その神社の鳥居の影が、魔理沙のつい足元までせまっているほどの時刻だった。

「降らないわね、雨」

先ほどの言葉への返事であろう、その神社の主、博麗霊夢である。

「降らないぜ、雨」
「降らないわね、雨」
「降らないぜ、雨」
「降らないわね、雨」

せっかく話しかけたのに、いつまでも話題を展開しようとしない霊夢に、長年の付き合いがあるとはいえ、魔理沙は諦め半分、苛立ち半分で
「ちょっとは話題を膨らましてだな……」と言った。
しかし、それを聞いた霊夢は、何も答えない。
少し不安になったのか、魔理沙は追って、「どうした?」と訊いた。

「感じない?」
「何を?」
「異変」
「はぁ?これがか?別に、たいしたこと無い気がするけど」
「……そう。それもそうね。いいわ、もうちょっと様子を見てましょう。別に、異変かどうか、私にすら曖昧なものを
 わざわざ探しに行こうなんて思わないわ。いつもの勘も、何か起きてることくらいしか知らせてくれないし」
「ふぅん。まぁ、確かにおかしなことは起きてるがな。この季節は、雨が降ったり、止んだりを繰り返すもんだ。
 まだ、雲ひとつ無い空は三日だけだ。空を飛ぶ宝船も、割とよくあることだぜ、この幻想郷ではな」
「そうなんだけどね」

どこか釈然としない表情のまま、霊夢は手元のお茶を啜る。

「まぁ、いいか」
「まぁ、いいぜ」

どこか二人とも微妙な気分のまま、いつものお茶会は進行していた。
ここから先起きる事件も知らずに……続く。


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「ふわぁー、濡れた濡れたーっ」

そういいながら縁側に滑り込んだあたしを、心のそこから、ではないにしろ、嫌そうに見つめる霊夢と、面白いものが来た、と興味を示す魔理沙。
気づいたら、雨は止んで、綺麗な夕焼け空で、多少感慨にふける。
不思議なこともあるもんだな、と思いつつ霊夢に

「霊夢ー!ちょっと手ぬぐいかなんかちょーだい!れーい、いったぁぁっ……」
「床が濡れてるでしょ!ちょっと庭に居なさい!」

ゲンコツされた。いたたたぁっ……
ったくもう、と悪態のようなものをつきつつ奥に引っ込んでいく霊夢。
なんだかんだでいろいろしてくれるから霊夢はいい奴だ。みんなが好いてるのもよくわかる。

「おう、派手に濡れたな」

魔理沙が話しかけてくる。
いつも弾幕合戦でボコボコにされるけど、それはよく付き合ってくれることに他ならない。
いい奴だ、と思う。

「うん、いきなり雨降ってきちゃって」

戻ってきた霊夢に手渡された布で体を拭きつつ、答える。
その言葉を聞いた魔理沙はちょっとだけ興味を持ったのか、「へぇ、どこでだ?」と聞いてきた。

「どこ?ひょっとして、ここは降らなかったの?」
「そりゃ見たら判るでしょ」

霊夢の言葉にはっとなって周囲を見渡すと、濡れているのはあたしの周辺だけだった。
あ、そう、それで気づかなかったのよ。あたしの周りが濡れてるから。うん、きっとそうに違いない。

「ちょっとだけ気になってきたぞ。何か変わったことは?」

魔理沙の言葉で、さっきの神秘的な光景が思い出された。

「……船!船がいたよ!」

そういうと、魔理沙はちょっとだけ面白そうな顔になって、やっぱりか、と呟いた。

「見ろ!霊夢!お前の勘とやらがまるでゴミのようだ!前からきな臭いなとは思ってたんだぜ!これは異変だ!」
「そうね」
「謝罪するなら三秒間待ってやる!ふはははは!」
「いや、だから何?」

そう言った霊夢の顔は盛り上がってる魔理沙と対称的にひどく冷たかった。

「実害があるわけじゃなし、ほっときなさい。あいつらもそのうち飽きるでしょ、雨乞いモドキ。
 こんなんで盛り上がらないでよ、バカらしい」

魔理沙は完全に沈黙してしまった。霊夢の茶を啜る音だけが響く。
あたしはどうするべきか迷った。
でも、少し迷った後、霊夢のほうを見ると「行ってみれば」と返事が返ってきた。
魔理沙のほうを見ると、少しいじけながら、「迷うくらいなら行くべきだぜ」と返事が返ってきた。
そうするか。

そう決意したとたん、あたしはどこか漠然と、ワクワクというか、うはうはというか、イケイケとした力のみなぎりを感じてきた。
凄く興奮してる。体が、まるであたしじゃないみたい!これは、きっと行きなさいっていう神様とやらの思し召しね!

「よし!行くぞ!行ってやるぞ!あー、私だけじゃつまんないから、ごめん、どっちかついてきてちょーだい!」

楽しい冒険になりそうだった。そして、あたしの武勇伝がまたひとつ増えそうだった。
あたしの異変解決に、巫女がついてきたのよ!あたしの異変解決に、魔女がついてきたのよ!どっちでもいい。
体にみなぎるワクワクが、いつまでも続いていた。




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「やばい、ガン見してるぜ、あの女の子……」

そこは、怪しげな、研究所のような、船室のような、謎の機械が大量にある場所だった。

「どうするの?船長」

船長と呼ばれた少女は、船長と呼ばれたことにまんざらでもなさそうにした後、すぐに慌てて真顔に戻り、自らのセーラー服を一握りした後

「決まってる。雲フィールド展開!北北西に進路を変更しろ!」

と一人しかいない、船員に叫んだ。
その船員は、服装こそ奇妙なものの、普通の少女だった。

「まったく、ノリノリねぇ。でも、私も楽しくて堪らないわ。
 前はなんだかんだで諦めたけど、何とかして、この世界の秘密!そして、全ての世界の秘密を、解き明かさないとね!」

彼女が夢見る少女の口調で、もっと正確に言うなら
地球破壊爆弾のスイッチを手に入れた、夢が世界征服な5歳くらいの女の子のような顔をして
船長に話しかける。
もっとも、その船長と呼ばれた少女も、まんざらでもなさそうに、軽く微笑む余裕があった。
奇妙な信頼関係があるようだ。

「変わってないなぁ、うんうん。それでこそ我らが教授様だ!行くぞっ!……あれ」

ふと手元の計器を見て首をかしげる船長。
「どうしたの?」と聞く船員。その問いに、やおら笑い始めた船長。

「ふふ、ふっふふ、……ネズミが二匹」

その言葉を聞いて、すごく盛り上がる船員。そしてそれに呼応されるかのように盛り上がる船長。
二人は幸せそうだった。

「いよっしゃあぁ!そりゃそうよね!こういうことに障害はつき物!あははは!
 世界で一番ダメな恋なんだから!私の、魔法への恋は!とめられないわ!あっははは、あーっはっはっは!」
「ふ、ふふふ、前の雪辱を晴らすときが来たようだぜ。アレだけ練習したからな……弾幕合戦を。
 待ってろ……ふ、ふふ、ふふふふふふ」


二人はいつまでも笑っていた。




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「はぁ、はぁ。うう、なんなのよー、もう!」

倒しても倒しても沸くオバケ。
こんなタイプの妖精、いたっけ?

「おツララ弾を食らえー!」

端からなぎ倒していくけど、まだ沸く。

「ちょいやっ」

……いや、こいつらは一体倒すと連鎖爆発を起こして一掃できるようだ。
まるで、花が大量に咲いたときみたいだな、と思った。
あのとき最後に戦ったのは……えんまさま、だっけ?
閻魔は今も霊を裁いてるのだろうか。いずれまた幻想郷に遊びに来ますとか言ってたけど、見かけないなぁ。

そう考えつつ、敵の少ない場所をかいくぐりつつ。
私は、扉の前に立っていた。
……一人は、怖い。
そう、二人ともついてきてくれなかったんだ。
でもまぁ、そりゃそうか、と自分で自分に納得する。
だって、魔理沙はなんかとてもヘコんでたし、霊夢は面倒くさそうだったし。……ぜんぜんいい奴じゃなかった!ショック!
でも、うん。やるしかないんだ。
あたし。そう、あたしが。

ドアを開けると、ちょっとだけ、サビた扉を開けたときの音がしたけど、すぐに静かに開き始めた。
人はそれなりに出入りしてるらしい、けど、年季もそれなりに入ってるみたい。
うん、あたしの頭は冴えてるわね。さぁ、突入だ。飛び込め、中へ。
う!お!お!お!お……

「動くな」

あたしの聖なる侵入は、あっというまに おわってしまった!

「う、うわっ」
「君か。今回ここに来た奴は。早速、一緒に来てもらおう」

誰だこいつ?何だこの奇妙な服?あとなんか魔理沙に似てるんだけど気のせい?
周りを見渡すと、カプセルが大量にあった。何だこれ。変なものが入ってる。何かのけんきゅーかな?
色々な疑問がぐるぐる頭を回すけど、とりあえず、

「逃げるが勝
「妙なことは考えるな。これは小さくても必殺の武器だ。逆らわないほうが身のためだぜ」

ダメだった。

「とにかく、一緒に来てもらうぜ。……うぎゃーっ」

あたしを引っ張り始めたと思ったら、すぐに可愛い悲鳴を上げて、こいつは死んだ。
いや、気絶してるだけだろうけど。

「誰がそんなおもてなししろって言ったのよ!というか前もやってなかった?これ。
 ダメだからね!せっかくのお客様なんだから!」

よくわからないまま話が進んでいるけど、とりあえず、暴走しかけた変な女の子をこの女の子がパイプ椅子でぶん殴ったということは判った。
よかった、こっちはまともに話が通じそう……なのか?

「私は、岡崎夢美。大学で教授……あー、わからないか、とにかく、この世界に色々と調べ物に来ました」
「それだけじゃないけどな」

むくりと起き上がって、奇妙な服を着た少女が話し始めた。復活早いな。

「私は北白河ちゆり。夢美様の、まぁなんだ、手下みたいなもんだと思えばいい」

なるほど、言いたいことは大体判った。
要するに、いつものことのようだ。幻想郷に関わる人が増えるだけ。

「それで?あたしはどうすればいいの?弾幕勝負でもする?」

そういうと、夢美、が

「あら、話が早いわね。スペルカードルールとやらがあるそうじゃない?それ、面白そう、すっごく面白そうなのだけれど
 ちょっと今回はパス。ほかにやらないといけないことがあるしね」

と言った。
遊べないのか、そうガッカリしたのだけれど、代わりに、と前置きして、ちゆり、が話し始めた。

「私たちにできることなら、何かひとつ願望を適えてやろう。せっかくこんなとこまで来たんだしな」
「私たち、じゃなくて、基本的に何かするのは私だけどね。……でも、ま、ちゆりの言うとおり。
 お客様は歓迎するべきだと思うわ。小さい女の子ならなおさら」

自分も大して大きくないくせに、と言う言葉を飲み込んで、つい昼間の、文との弾幕合戦を思い出す。

……強くなりたかった。
負けると、つまんなかったから。
搾り出すように声を出す。

「ねぇ、あたしを、いや、あたいを、強くしてくれない?」

意図的に自分の呼び方を変えた。
この呼び方だと、ちょっと強くなれる気がする。

「お安い御用だ!な、夢美様?」

どうやらちゆりは乗り気らしい。けど、夢美は一瞬だけ険しい顔をした。
もっとも、すぐにもとのお気楽な顔に戻ったので、たぶん気のせいだろうと思い直す。

「良いのね?」

その言葉に何も考えず、うん、と答える。
その日から、ひみつとっくん、が始まった。
強くなって、強くなったら、何か、氷で気の利いたバケモンでも作ってみたい。
あたいの遊びの幅はどんどん広まっていくな、まさに最強。




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そうそう、その日は、そうね、前の異変の解決報酬がまだだったから、人里に催促に行ってたのよ。
それで、途中で魔理沙と会った。そんで、報酬を……え?もっとまともに文章にしてくれ?
面倒くさいわね……まぁ、いいか。

私は、縁側で日向ぼっこをしていた。そして

「こんなにも暖かいのだから、いいお茶を飲みたいわね」

そう呟いてから、台所にお茶の葉を取りに行ったの。
そしたら、良いお茶が切れちゃってて、人里の茶屋まで行くか。
良いお茶が売り切れてないといいのだけど。そう考えて、今度はお財布を覗き込んだのだけれど
団子一串買えるかも微妙なお金しか入っていなくて、ああ、そういえば前回の異変解決の報酬まだだったなぁと思い出したのだった。

お茶買うついでってことでいいわ、と思いながら、ふよふよと人里に向かう。
しばらくいくと、魔理沙が何やら真剣な顔をしてこっちに向かってきた。
ここ三日くらい神社に来なかったわね、どうしたの?と、訊く間もなく

「まだ異変じゃないのか、これは。うわさの船は聖輦船じゃないみたいだぞ。見立てと完全に違ってた。
 短期間に二つも船が来るとは思わなかったんだ。確かに、あの寺が二連続で何かやらかすはずはないよな。
 なぁ、霊夢。これは、異変じゃないのか、本当に」

と言った。いや、確かに予感はしていた。嫌な感じ、何か起きる前兆、雨が降る匂いの欠片。
加えて言えば、氷精。
そこそこの頻度で神社に来ていたのだけれど、昨日も来なかった。
こっちは本当に嫌な予感がする。少し、怖くなるくらいだ。
でも、

「ごめんね、本当にわからないの。どこにいけばいいのか」

これは本当だった。どうも、まだ異変が始まってないようにすら思えた。
これが異変になるかどうかすら微妙だった。
まだ何かは始まったばっかりのような気すらした。
しばらく考えた後、魔理沙は

「そうか。まぁ仕方ない。何かわかったら言ってくれ。私も何かする」

長い付き合いだし、判ってくれたようだ。
飛び去った魔理沙を見送って、人里に来た。
快晴が、とうとう七日続いたらしい。
あの氷精も、もう四日は見ない。




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特訓。
ちょっと甘美なその響きは、あたいをだいぶ強くしているはず。
凄く、気持ちよさが増していた。
ワクワクが、もっともっと体中をバラバラに引き裂きそうなほどに駆け巡る。

「じゃあ、ちょっとこの容器に入ってる窒素使って、液体窒素作って」

夢美が言う。
それくらいなら、すぐにできるようになった。
夢美いわく、「魔法に近いけど、そうでもない、よくわからない力」だそうだが、あたいにとっては昔からずっとなじんでいるこの体に満ちる力。
蛙を一瞬で冷凍させてすぐ解凍するのが成功するときは、いつも感じる、この目と目の間の何かがチリチリと疼く感覚。
それを意図的に呼び起こす。
尖り焦がすように能力を呼び起こすと、一瞬で容器がベコンと音を立ててへこんでいた。

「次は、固体」

強く、なりたい。
だけれど、そろそろ何かが違ってきた気がした。
けど、強くなりたい。
力の使いすぎで、何で強くなりたいと思い始めたのか忘れてしまった。
だけど、強くなりたい。
そういえば、あたいって何であんなに遊んでたんだっけ。
だけれど、強くなりたい。
もう、二度と無意味に、何かで、何も疑問に思わず遊ぶことは、ないのかもしれない。
そうだけど、強くなりたい。
かまわない。もっと、もっともっともっともーっと。
もっともっと、強くなりたい。

「おお、はやいはやい。本当に、ただ冷やすだけなら簡単になってきたわね。
 じゃあ次は広範囲、か。まぁ力が強まってるから、すぐにでも慣れるわ。すごい武器も、作れるでしょう。そのうちやってもらうことがあるわ。
 幻想郷一帯にね、雨を」
「ねぇ、夢美」
「降らせ……ん?なぁに?」
「これで本当に強くなれるの?」

訊きたかった。
違和感は拭えない。深層心理、サブコンシャスネス、超自我。
呼び名は何でもいいけど、何かがあたいに警告を放っている気がした。
もう、元に戻れないのかもしれない。だから、訊いてみたかった。
これで正しいのかと。これで、よかったのだろうか、と。
逃げたくは無い。弱い。弱いということが、つまらないということだから。弱いと、何もかもがつまらない。

「もちろん、当たり前じゃない。あなたは妖精、自然の化身。
 だけれど、なぜか幻想郷において異常に強くなってる。ここは、どうやら外の世界の幻想となったものが、魔法と似た力のお陰で移動して来るみたい。
 外の世界の氷が失われてたりするのかしら?……ともかく、その流れに乗じてあなたの力を解放すれば、あなた自身の存在を、どこまでも引き上げることは不可能じゃない。
 しかも、最悪こっちには可能性操作装置がある。安心して欲しいわ。あ、この装置はね、四次元を越えた世界がやっと発見されて」

夢美の話を半分聞きながら、前にした妄想をリフレインさせる。
人里に忍び込んだときに見つけた龍神像。
あんな複雑な氷細工は作れなかったから、いつか作りたいと思っていた。
紅魔異変のとき。
あたいは敵の中では弱いほうだったみたいだけど、全力を出した。
それでも三本しか出ないレーザー。限界。
花がたくさん咲いたときも。
届かないんだ、巫女とか、天狗とか、魔女には、いつだって。
だけど、考え直す。
それは、楽しくなかったのか?
強くなくたって、弱くたって、つまらなかったのか?
何か、心の中で、それを否定する。
けど、体のワクワクは止まらない。
とうとう夢美の解説が聞こえなくなった。
キーンという耳鳴りが、あたいが何者かに代わる音。
今気づいた。これは、この体に感じる感覚は

ワクワクじゃないの、かも




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再び、船室。
幻想郷の閻魔がいる。

「あのねぇ!?あの氷精はただでさえ妖精として不安定だって言うのに!それを知っていなかったとは言わせない!」
「ま、まぁまぁ、落ち着いて欲しいぜ」

珍しい構図、というか、初対面だろうに、閻魔はその船にいた二人に説教をしていた。
久々に見回りに来ていたようだ。
たまの休日、説教がてら幻想郷の散歩に費やすか、と言ったところか。
……どれだけ説教フェチなんだ、怖い怖い。
とにかく、たまの休日の穏やかな時に、割と目にかけていた知り合いの危機、というわけだ。

「そう、あなたは少しやりたいことだけをやりたがる。
 それはまるで妖精のように。少しは全てを考えろ、それが貴方にできる善行だ!
 このままじゃチルノが、チルノが……」

少しは全て、等とよくわからないことを言うものの、言いたいことはわからないでも無かった。
しかし、夢美教授は毅然とした態度で切り返す。

「判ってはいたが、彼女は覚悟しているものだと思っていました」
「そんなわけないでしょう!?」

間髪入れない指摘に、ぐぐっと飲み込む夢美。
図星なのだろう。
それにしても、やけに閻魔様がチルノのことを気にしているようだ。
たぶんイラついてるだけだろうけど。

「そんなこと言われたって!私だって、私だってッ!」

息を荒げる夢美を、静止する北白河。

「とりあえず、チルノのことはこっちで考えておく。とりあえず、この場は引いてもらえないか?いや、引いてもらえないでしょうか?」

慣れない敬語のような物を使い、閻魔に話しかける北白河。
閻魔はフンと鼻を鳴らして、「しょうがないですね、ちゃんと直しておくように」と言って、その場を去った。

「鼻を鳴らしたいのはこっちだ。気にいらねぇ奴だったぜ。謝ることを知らないのか」

閻魔が去ってすぐ、北白河が毒付く。いい性格をしている。
大いに同意させていただこう。もっとも、あの自信は、あの閻魔が過ちを犯すこと自体ありえないと言っていいからこそなのだが。
その北白河を見て、夢美がすぐに冷静になる。
いいコンビなのだろう。

「ふぅ、こうしてる暇は無いわね。さ、『とっくん』に、戻るわよ」

馬耳東風だった。
実に幻想郷で上手くやっていけそうな性格をしている。

「でも、何かやばいっぽい人だったぜ、夢美様?なんか、普通の背丈の少女なのに、威厳が」
「閻魔」
「え?」

ちょっと聞き返して、すぐに考え始める北白河。
頭は良いようで、すぐに思い当たる。

「はるか昔の土着信仰の地蔵菩薩。それが転じて閻魔大王となり……ハハハ、ここ、本当に幻想郷だったんだな」

ちょっと恐れるように?
別に恐れるほど二人の力は弱くはないのだが、もはや国家遺産クラスの御伽ばなしにでてくるようなキャラクターを聞いて
多少身震いしているようだ。彼女は続ける。

「だとしたら素直に聞くべきだと思うぜ。何とかチルノを説得して……」
「なんかそれ腹立つわね」
「えー」

この大学教授とやらは、実に良い性格をしているらしい。
本当に全く気にしていないようだ。

「世の中に迎合するみたいで嫌なのよ。さぁ、作戦名、『超氷精ヨウ化銀弾頭』
 最終段階に入るわ」

北白河はまだ納得できてないようだったが、最終的には従った。
それだけ深い信頼関係にあるのだろう。
『とっくん』をするための機械を再び出しに行くのだろう、夢美は応接間兼素材置き場のカプセル部屋の扉を開けた。
背中に叫びかける北白河。

「でも!なんか、ヤバいんじゃないのか!?結構仲良くやってるから、今のチルノを失いたくはないんだぜ、こっちも!
 なぁ、夢美様。あんたは一体、あの子をどう思って」
「ちゆり」

返ってきた声が思いのほか明るかったので、ちゆりはちょっと安心した様子で
けれども完全に安心するわけにはいかないくて、「夢美様?」ともう一回聞いた。

「大丈夫。私だって、あの子を失うのは嫌だわ。研究対象としてではなくて、ね」

これを聞いて安心したのか、ちゆりは笑みを浮かべてそうか、と言った。

「私は疲れたぜ。少し仮眠を取らせて欲しい」
「良いわ。私はまだやることがあるから」

二人はその会話をした後、各々の行動を取り始めた。
夢美は、何か、何かにすがるような顔をして、けれどすぐにその顔を振り払って、言葉が漏れてしまったかのように、呟いた。


「閻魔にも勘違いはあるのかしら?」


返事は返ってこなかった。




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あれからまた三日ほど経った。
チョウヒョウセイヨウカギンダントウ。
これが今からやる作戦名なんだと。
やれば強くなれる、らしい、その作戦を遂行するために、今、あたいは幻想郷の中心付近にいる。
遥か下には、ちっぽけな建物が見える。ここは、霊夢が以前話していた、えーっと、こうりんどう、だろう。

『いい?今からこの作戦の手順を言うわ』

作戦を説明していたときの夢美の声を思い出す。
一字一句、全て覚えていた。

『というか、作戦の内容を言ってなかったわね。
 することは簡単。幻想郷に、恵みの雨を』

雲は、氷の粒が固まりあってできる。
だから、あたいの出番。
夢美の世界でレインメーカーと呼ばれてた人がいたらしい。そいつはヨウ化銀という物質を使ったんだと。
作戦名はそこから。

『私たちにも、船の周りくらいなら、雲っぽくできることはできるんだけどねぇ。
 幻想郷全上空のエネルギーを一気に奪うとなると……。』

集中を始める。やることは、蛙を凍らせるのと一切変わらない。
チリチリ、チリチリ、ちりちり。
この感覚を、どこまでも増幅させる感触。

『ま、専門職に任せれば楽チンでいいわ。
 チルノが大気中の水分を全て細かい粒子にして凍らせてくれれば、あとはこっちで雲にするから』

幻想郷上空全体を、氷の粒子にして、凍らせる。
ちょっと、難しいかも、と思い始めた。
だけれど、別に大したことはないはずなのだ。
全て、根本は、同じ。

イメージする。いつもは、目の前の蛙を。
今は、幻想郷全て、そして、そこの、空気の、湿っぽさとか、溜まり続けた、いつも笑顔な青空の鬱憤。

凍らせろ。

ちり。
ちり。
ちり。

「うああああああ、あああ、あああああああああっ!」

叫ぶ。力が足りない、と思った次の瞬間に、力が無駄に沸いてくるものだから、どうしようもないほど力はたくさんあった。
足りないなんてことはない、けど、力の制御が、難しい。

「抑えろっ!チルノっ!」

ちゆりの声が船から響いてくる。何かの魔法かなにかだろうか。
抑えろ、抑えろ、抑えろ。でも、力はあたいの意思に反して暴走しかけていた。

「チルノ!?聞きなさい!」

今度は夢美の声だ。
一応、意識を傾ける。……っと、力が、暴走しそうに、

「チルノでありたい!?それとも、他の何かになりたい!?それで強くなりたい?」

この声よりは小さく、「夢美様!?」と聞こえた。向こうで言い争ってるのだろうか。
あたいは考える。
強くなりたい。弱いのはつまらない。
……けれど。
夢美の言いたいことも伝わった。
これで強くなりたいと答えたら、全て終わってしまう気がした。
少し、この刹那に、考えられる限界まで考えた。
そして、叫んだ。


「あたいは、チルノだぁああああああっ!
 さいきょーの、氷の妖精の、チルノ様だあああああああああああああ!」

そう言ったとたん、体中の力が更に強くなった。
でも、その力は、心地よくて、まるで、まるで、

「遊んでるときみたい」

あたいは、思わず呟いた。
でも、よく考えたら、これって遊びのようなものじゃないのか?
強くなるためとか言って、雨を幻想郷に降らせて、それで、何を成すつもりだったんだろう。

「ゆめみ!」

精一杯声を張り上げる。
聞こえてようが聞こえてなかろうが、あたしは続ける。

「遊ぶよ!あたし、今から精一杯遊んでやる!
 誰が何と言おうと遊ぶ!気が狂うまで遊んでやるの!」

夢美がうなずいた気がした。
さぁ、爆発させろ、力を。
あたしが空中で両手両足を突き出すと、あたりは銀色の世界になった。



少し時間がたつと、その世界は、銀色を通り越して、光り輝く希望の世界になった。
例えるなら、ガラスを割って、粉々にして、その辺に放り投げたときのような。
例えるなら、雪が降ったときに、わざわざ雪を凍らせてから、妖精にぶつけたときのような。
キラキラと光る氷は、全て一つ一つが、名高い宝石のような魅力を持っていて
つい手のひらを太陽に向けて、氷の粒を観察してしまった。
あたしは船に戻り、透明な壁ごしに、外を見ていた。
氷は、見る見るうちに細かく砕け、雲になり
その雲は、生まれてすぐ、産声を上げ始めた。
音が鳴り止まない。
雨は、降り続ける。少なくとも、あと半時は。
外に出て雨を浴びたくなったので、また、外に出た。
凄く気持ちよかった。
周り全てを見回すと、虹のようなものが出ているところもある。いや、これが虹なのかもしれない。
これが私のやったことなんだ。
私は、雨を降らせたんだ。恵みの雨を。これは妖精の仕事なのかなぁ?ま、いいか。
凄く楽しかったから。
凄く楽しい気分を、取り戻せたから。


いつまでたっても、心は晴れやかだった。
あたしは、力を使い切ったのかもしれない。
それはそれでよかった。
こんな、一世一代の遊びをして、しばらく眠れば、全て元通りなんて素敵すぎるじゃない?
そう、あたしたちにとっては死なんて一回休みなんだ。
ありがとう閻魔、お陰で判ったよ感謝。
そう思いつつ、あたしは、意識を手放して……





「夢想封印!」

「……あら?スペルカードバトルに応じてくれないと困るのに」
「あれ?チルノじゃないか、あの地上へ落ちてく姿は。しかもいつもに増して弱いし。弾幕用の弾で気絶するって相当じゃないか。
 もうちょい警戒してたんだけどな、急に雨が降り出して、その元凶がここにいる、ってことだったから」
「チルノがもしやった、と仮定しても
 異変の環境下で昂ぶってただけでしょうね。どこまで行こうが所詮妖精、限度はあるわよ」
「それでも凄いと思うけどな、幻想郷全て、だろ?」
「そうね。でも、そこは妖精だからこそだと思うけどね。……というか、チルノがやったとは限らないじゃない!
 いや、間違いなく元凶がいるはず。そいつボコボコにしましょう」
「今日の霊夢はなんだか怖いぜ……まぁ、ボコボコにするけどな」




□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




文々。新聞 号外!

「異変か、それともそれ以外の何かか!?前代未聞の大豪雨!」

皆さんもご存知であろう、つい昨日、10日ほど雨に恵まれていなかった幻想郷に大豪雨が降り注いだ。
その異常な雨は、何と妖精が引き起こしたものらしいのだ。
以下、私が潜入レポートを行った記録をここに記す。



「そこは、怪しげな、研究所のような、船室のような、謎の機械が大量にある場所だった。……ねぇ」

記事を読み上げる。
目の前にいるのは、酒びたりになっている氷精。
ここは、どこにでもあるような、とある屋台の風景だった。

「ねぇ、これ本当にチルノさんがやったの?」
「今日も元気らおひゃけがうまい!てんちょーっ、もーいっぱーい☆」
「ダメだこりゃ」

私は、ここの店主。種族は、夜雀だ。
酒を浴びるように飲むチルノさんに、大げさにため息をしてから、手慣れたしぐさでアルコール0%ビール!と書かれた缶の中身をコップに注いだ。
常連だから、というかその前にお客様だから、邪険に扱う気はない。

「ま、がんばったようだし、はい、八目鰻の蒲焼。サービスだよ」
「わーい、ありがとー、てんちょ。愛してるー」
「ひゃあっ!」

舌ったらずな口調で抱きついてきたチルノをかわしつつ、記事を読み込む。

「霊夢さんにインタビューを行いました。『殺りたかったから殺った。今は反省している』
 うわぁこわい」

ついで程度に退治されたトラウマがよみがえって来た。ちょ、ちょっと鳥肌が立った、今。
それでも必死に読み進めているのは、目の前の常連は割と贔屓にしてくれるから、と同時に
ちょっとだけ羨ましいから、なのかもしれない。自分の感情なんて、わかるわけがないんだよな。うん。

「ねぇ、チルノ。何があったの?」
「やべーおさけおいひー。もきゅもきゅ」
「ダメだこりゃ」

チルノに話を聞くのを諦めた私は、新聞を読み進めることに集中する。


首謀者は、異変の起こし方も知らなかった異世界人。今は罰として博霊神社で宴会をさせられているという。
チルノさんのインタビュー 「あたし、犯された。もう我慢できない、訴える」
そうそう、その日は、そうね、前の異変の解決報酬がまだだったから、人里に催促に行ってたのよ。
今回の事件は、異変扱いにはならないものの、きっちり首謀者は巫女におしおきを食らったらしいので
どうか視聴者の皆様は許してあげられないだろうか。楽しかったし。


中にはうそ臭い話とかいろいろあるけど、とりあえず異変に関してはこの新聞読んで楽しんでればいいだろう。
私はそう判断して、読み終わったこの新聞を折りたたんで、暖炉に入れた。
もうすぐ春だ。きっと、何かいいことがあるだろう。春はいい季節だ。歌うのにもちょうどいい。

しばらくすると、五人分の足音が聞こえてきた。
自慢じゃないが、耳は悪くないと思っている。だから、この五人が誰かも大体わかった。

「ほら、チルノ。友達二人、来たよ!」

私はチルノを起こした。
チルノは、慌てて玄関に、誰かを迎えに行った。
この事件は、たぶん、これで幕を閉じるでしょう。それじゃあ、皆でエンディングテーマと行きますか!



(おしまい)
テーマはチルノの成長と友達でした。あとついで程度に雨。orz
神主曰くいたずら好きの大妖精とか、仲が悪いって言われてるレティとかと絡ませるのが、どうもしっくりこなかったので、登場人物はかなり工夫しました。疲れた。
はむすたさんという方が書いた、馬鹿の墓というSSにありえないほど影響を受けていると思います。あのSSは凄い一度読んでみるべきそすうるべき

今回はハッピーエンドにしたかったのでハッピーエンドにしました。
霊夢はやっぱり良いなぁ、可愛い。いぢめたくなる。
チルノは俺の娘。
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/11/21 23:56:04
更新日時:
2009/11/21 23:56:04
評価:
15/16
POINT:
57
Rate:
1.03
1. 4 静かな部屋 ■2009/11/23 10:50:25
何も見えてきませんでした。
文が気にしていたことも種明かしが済んでいないような気がしますし……。
妖精が力を持つ=自然界のバランスが崩れる
というのが閻魔様の主張だったような……。
2. 3 神鋼 ■2009/12/29 20:43:50
それぞれのキャラクターに強い違和感が気になりましたが面白かったです。
3. 3 藤木寸流 ■2010/01/04 17:09:27
 それぞれ、キャラクターの感情の動きが唐突すぎると思います。
 映姫が脈絡もなく登場し、帰るときもいやにあっさり退場するので、何しに来たんだろうと思ったりも。
 チルノの叫びもなんだか唐突に見えました。結論はきっちり述べているのだけど。
4. 3 パレット ■2010/01/10 05:38:45
 正直に言ってまとまりのない文章だという印象だったのですが、チルノの視点を再現するという意味では効果があるようにも思えましたし、何より、作者さん楽しんで書いてるなというのが伝わってきました。
 それに伴って、チルノの感じる楽しさも。表現すべきことはきっちり表現できていたように思います。良かったです。
5. 4 白錨 ■2010/01/10 12:36:00
短い文章が多く、スラスラ読めた印象です。
バカなりの成長。でもそれも一つの成長として感動できるものがありますね。
6. 4 バーボン ■2010/01/11 00:00:14
場面場面で視点を変えるのは構わないと思いますが、しかしそれで読みにくくなっては本末転倒だと思います。文章も小ネタを挟むのは良いのですが、それでテンポが損なわれていた部分もあるように感じました。
話の内容ですが、登場人物の内面描写が物足りなく、「あれ、どうしてこうなるんだろ」と首を傾げる点があり。後書きで登場人物を工夫したとありますが、それなら尚更丁寧にキャラを描写するべきだったのでは。
7. 3 椒良徳 ■2010/01/11 20:27:19
>さぞかし関係者は悲しみが鬼なったろう。
はい? おそらく誤字なのでしょうが、何をどう間違えてこうなったのかが判らない。

船長と言うからてっきり村紗船長かと思っていました。岡崎教授かよ。
それはともかく、馬鹿の墓には遠く及ばない作品ですね。平均レベルにも達していないように感じます。

詳細は省きますが文章規則の守られていない個所がありますし、
文章もテンポが悪く短編であるにも関わらず読みづらかったです。
また、視点がコロコロと変わるのも読みづらくて嫌ですね。読んでいて混乱しました。

あと、短編だから仕方ないのかもしれませんが、最初は最強になれると喜んでいたチルノがだんだんと特訓を疑問に思うようになるという心情の変化が十分に書かれていないように感じます。
人の作品を好きになるのも参考にするのも良いことなのですが、あくまでこの作品はこの作品なので、チルノが特訓の中でどのように変化していったのかということはきちんと書いてあげる必要があると思います。馬鹿の墓の続編を書いている訳ではないのですからね。

色々と羅列してきましたが、要は面白いと思わなかったということでこの点数にいたします。
8. 4 詩所 ■2010/01/13 22:37:42
 話からキャラが動く様子が上手く想像ができませんでした。
 抽象的表現が多かったからかもしれません。
9. 4 deso ■2010/01/13 23:29:13
登場人物が多い割には、いまいち映えない感じがします。
人物を増やすくらいなら、もっと夢美やちゆりの描写を増やした方が良かったかなあ。
一人称に比べて、三人称の文章がぎこちなく感じますので、そのせいもあるかもしれませんが。
10. 2 ホイセケヌ ■2010/01/14 20:54:55
・チ・・ホ、ホ・チ・・ホ、鬢キ、、メサネヒウニ、ャソノ摂、ッ、ニ牢、キ、、。」

、タ、ア、ノ。「、ス、メヤノマ、ヒユhテイサラ网ハ因テ讀ャ・チ・鬣ロ・鬢「、テ、ソ壥、ャ、ケ、。」タ、ィ、ミ廻テタ、ソ、チ、ャ、ノ、ヲ、キ、ニモ熙スオ、鬢サ、隍ヲ、ネ、キ、ニ、、、ソ、ォ。「、ネ、ォ。」、ス、メヤヘ筅ヌ、篌ホ、ムヤ、、、ソ、、、ホ、ォ、隍ッ、、ォ、鬢ハ、、因テ讀ャ。ュ。ュ。」

、ス、、ネ。「・チ・・ホ、ホウノ餃。「、ネ、、、ヲ、ホ、マ・ニゥ`・゙、ネ、キ、ニス筅、、タ、ア、ノ。「、ノ、ヲ、ヒ、簽ム゚_。「、ネ、、、ヲイソキヨ、マ、キ、テ、ッ、熙ウ、ハ、ォ、テ、ソ。」ムミセソ拳マ、ネ、キ、ニメ侃ニ、、、ソ、ホ、ャ、、、ト、ホ馮、ヒモム゚_、ヒ、ハ、テ、ソ、ホ、ォ。「、ス、ポ^ウフ、タ、ネ、ォ、ャ殪、、キヨ。「携クミ、ャ、、ォ、ハ、ォ、テ、ソ。」
11. 5 やぶH ■2010/01/15 02:29:31
むーん……評価の難しい作品です。一見文章が雑なんですが、それが味にもなってるんで、一概に悪いともいえない。
チルノの一人称文に関しては、もうこれ以上ないくらい「らしい」んですが、三人称視点に変わってる場面でもそのノリが浸食していて、むむむ、と唸ってしまいます。
全体として、未知のエネルギーを感じる作品でした。評価は7〜3の間で揺れ動いたので、5ということにさせてください;
12. 2 八重結界 ■2010/01/15 18:30:06
 結局教授達が何をしたかったのかも不透明でしたし、淡々と出来事を書き連ねているだけの印象を受けました。
 そのせいか、最後の方はあまり感情移入できなかったです。
13. 6 2号 ■2010/01/15 19:17:00
チルノの葛藤と成長、幻想郷をゆるがす事件と、個人的に引き寄せられる要素がたくさん。
こういうお話は好きなのですが、特訓がどういったものなのか、何のためのものなのかがわかりにくく、ちょっとふわふわした印象を受けました。
14. 8 零四季 ■2010/01/15 23:16:29
良いチョイス!
まさか教授を使うとは。チルノが可愛くて楽しかったです。発想力に驚かされまくりました。
15. 2 時計屋 ■2010/01/15 23:33:42
 ノリについていけなかったのもありますが、それ以前に人物の登場や行動が唐突なように思えます。
 時間が無かったのだと思いますが、描写・展開ともにもう少し丁寧だと良かったです。
16. フリーレス ■2010/01/17 05:11:25
感想レスをさせていただきます。
>>1
文が気にしていたことというのは異変への興味でしょうか?
一応記事にしたということで決着がついたつもりでした。
閻魔様は、チルノのことが個人的に好きになった、というのが二次創作などの印象から念頭にあってしまったみたいです。
以後、その辺はSSの中でちゃんと描写するよう気を付けます。感想ありがとうございました。
>>2
ありがとうございます。キャラに違和感かー……仕方ないものなのか、直すべきものなのか分かりませんが
頑張って努力してみます。感想ありがとうございました。
>>3
前に創想話に上げたSSでも、唐突すぎる、とか言われた記憶があります。
全然治ってないのかなぁ……。感想ありがとうございました。
>>4
可愛く描けていたようで良かったです。
感想ありがとうございました。
>>5
はい、すごく楽しかったです。
まとまりのある文章というのも難しそうですが、心がけてみます。感想ありがとうございました。
>>6
スラスラ読めたのですか、嬉しいです。感想ありがとうございました。
>>7
なるほど、確かにすぐ下でも指摘受けてますね、はは……。以後気を付けます。
キャラの描写はもっと上達するようにします。感想ありがとうございました。
>>8
そこは頑張ってミスリードするようにした場所です。あんま意味無かったけど……でも、騙されてくれてありがとうございました。
心証描写をきちんとするのはずっと課題なので……うーむ、本当にどうしたらいいんだろうか。
感想ありがとうございました。
>>9
それは直さないとまずそうですね、と思いつつも抽象的な表現が何か良く分からない……。
一応心がけてみます。感想ありがとうございました。
>>10
三人称視点は、全部文の記事というのを念頭に置いていたので、かなりやりづらかったです。
普通にやればよかったといまさらながら思いますが……次からは人物をちゃんと描きます。感想ありがとうございました。
>>11
よ、読めない……。エンコードしても読めなかったです。
一応最初の一文は褒めてもらってて、それで、やっぱり行動の意味がわからない、とかそんな感じなんでしょうか……ごめんなさい。感想ありがとうございました。
>>12
良く分からないけど、褒めてもらえてるのかな……
三人称は本当に失敗してしまったようです。もっと筆力つけてからチャレンジするか、最初から安全策で普通の三人称にしとくべきでした。
感想ありがとうございました。
>>13
感想ありがとうございました。感情移入は本当に課題だ……。
>>14
ありがとうございます。特訓はもっとしっかりしたほうがよかったのか。
感想ありがとうございました。
>>15
ありがとうございます。教授は結構好きなので使いました。チルノも大好きなので使いました。
発想力ですか?発想力……うーん?良くわかりませんが、ありがとうございます。
感想ありがとうございました。
>>16
ノリについていかせられないってのが一番哀しいですね……もっと丁寧さを心がけてみます。
感想ありがとうございました。


感想をくださったみなさん本当にありがとうございました。
そして、コンペお疲れ様でした。
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