過ぎし日は雨に遠く

作品集: 最新 投稿日時: 2009/11/21 23:56:43 更新日時: 2010/01/22 00:23:33 評価: 19/20 POINT: 142 Rate: 1.67
 慧音は立ち尽くしたまま、ぼんやりと空に映る太陽を見上げていた。
 視線を向ける先は他に無かった。さらに身の置き所に至っては何処にも無かった。
 空に太陽を残したまま突如降り出した霧雨は、水煙渺として慧音の視界を遮っている。
 ここらあたりは平地であり、雨宿りのための大木など容易に見つかりそうも無い。
 この世に唯一人、取り残されたような寂寥感が慧音を襲う。諦めたように、笠のかわりに頭上にかざしていた肘を、下にぶらりとたらす。
 服から漏れる雨垂れが、重力の糸と化したように慧音の全身を地表へと引っ張る。慧音は僅かに残った意地だけでそれに耐えた。
 陽が照っているというのに雨が降るという奇怪な現象に、慧音は驚くよりむしろ酷く馬鹿にされたような感情を抱いた。
 それが天気雨と呼ばれるものだということは、勿論知識としてある。これがただの自然現象だということも理解している。
 だが慧音には、どうしてもそれが今の自分を嘲笑するために、超自然的な力でここに持ってこられたものだと思えて仕方なかった。いや、そう思いたくなるほどの悪意ある符合を、彼女はそこに見出した。

 上白沢慧音は、人と白沢との半獣である。
 人ではない。妖怪でもない。
 その姿は一見少女のようでありながら、ひとたび満月を仰ぎ見れば、紛うことなき化生に変わる。
 人の住処から追われ。妖怪の巣窟からも厭われ。終の棲家など望むべくもない。
 いったい己は何者なのだ、と鏡に映った自身を前にしてすらそう思う。
 このような寂寞とした場所にいたのも、そうした寄る辺すらない自分を哀れんでのことである。
 そうしたときに、清朗とも黒雨ともつかない、このような天候に遭遇したのだ。

 ははっ、と慧音の口から失笑めいた息が漏れた。それはたちどころに雨音にかき消される。
 目尻から微かに涙がにじむ。その温もりすら雨が浚って地に流す。
 雨は永遠に彼女をここに閉じ込める牢獄であろうとするかのように降り続ける。
 太陽は虚空にあって、古ぼけた鏡のように白々しく照っている。それはどれだけ祈っても決して手を差し伸べることのない、無慈悲な神の姿を幻視させた。

 人になれない。妖怪にもなれない。
 人に好かれない。妖怪にも好かれない。
 人を好きになれない。妖怪も好きになれない。
 どこへ行っても、どれだけ己を変えようと努めても、結局最後にはそれを思い知らされるだけに終わった。

 慧音は苦悩から逃れるために、そのまま自己というものを遠い彼方へ滅却しようと努めた。
 人を真に苦しめるのは、苦痛そのものではなく、苦痛を待ち受ける苦悩である。
 苦痛から逃れることは出来なくとも、苦悩からは逃れることは出来る。全てを諦めて、考えることを放擲すればよいのだ。
 それは永遠に劫罰を受け続ける亡者の心境にも似ていた。
 慧音は時間の感覚も、苦しみも、記憶も、全てを受けて流すだけの人形に変わろうと思った。

 ――だからだろうか。その光景は、折に触れて慧音の前に現れる。
 遥か昔。遠い過去。朧な記憶であるはずのそれが、まるで昨日のことのように鮮明に。
 見るものはいつも同じ。止むことの無い雨、隠れることの無い太陽。
 感じることもいつも同じ。何処にも行く場所の無い自分。何者でもない自身。閑却されていく自己。
 時折、慧音は思う。
 本当の自分はいつまでもこの雨の中に取り残されていて、まるで夢を見るように時折、現実に立ち帰っているだけではないかと。






 
 どこからか聴こえてくるひぐらしの声が、薄く、棚引くように木の下闇へと消えていく。
 昼の茹だるような熱気を孕んだ大気も、まるでその声に宥和したかのように涼味を帯び始めていた。
 空を眺めずとも深山の稜線の淵に沈もうとしている夕陽が目蓋の裏に浮かぶようである。
 伽藍の清浄な情景は、今も昔も変わってはいない。かつて白蓮が人間であった頃のままだ。
 彼女はそのことに、自分でも驚くほどの安らぎを感じていた。

 瞑想を止め、薄く目を開ける。
 白蓮が居る場所は狭い講堂である。
 元は船室であったものを組み立てなおしたためであろうか、仄かに磯の香りがする。
 山家でありながら、そうした懸隔のあるところが白蓮は気に入っていた。
 
 目の前には湯のみが二客。窓からの斜陽を受けて、板の間に長い影を伸ばしている。
 湯のみを挟んで前に座っていた客は、数刻前に席を立っている。
 それでも白蓮がここにこうして座っていたのは、その客が持ってきた話が、彼女にそうさせるだけの興趣を持っていたからである。

「姐さん、失礼します」

 白蓮が瞑想を終えたのを見計らったように、雲居一輪が板戸を開けて、中に入ってくる。

「もうじき日が暮れます。そろそろ僧坊に戻られては如何でしょうか?」

 湯のみを盆の上に乗せながら、一輪が言った。
 彼女の尼僧姿も、そして白蓮への心遣いも、在りし日と変わってはいない。
 封印が解け、人間の世界に出ようとする時、きっと何もかもが変わってしまっているだろう、という諦念があった。
 だが少なくともこの幻想郷においてはそのような、かつての時代を塗抹するような変化は何も起こっていなかった。
 変わって欲しくなかったものは、変わっていない。ただ、変わって欲しかったものも、変わっていない。
 真逆であった時よりどちらが幸せであっただろうかと、栓のないことを考えたところで、白蓮は内向する自分に見切りをつけ、一輪の方を見て微笑む。

「ごめんなさい、ちょっとぼんやりしていて。心配を掛けるわね」
「いえ。ただ、なにやら姐さんが嬉しそうにしていたので、声を掛けづらくて……」
「あら、顔に出ていた?」

 白蓮は思わず右の掌を頬に当てる。その様がどこか微笑ましくみえたのか、一輪は苦笑した。

「いえいえ、雰囲気と言いますか、今風にオーラと言いますか。とにかく嬉しそうでしたよ」

 感情が表に出やすいのは白蓮の欠点であった。
 それで損をすることも多かったが、彼女はさして改めようとは考えていない。戒めるべきはそのような感情に支配されて衝動的に行動してしまうことだろう。

「そうですか。でも実際とても喜ばしいことだったのよ。御目出度い、というべきかしら」
「御目出度い? はて。先ほどのお客の話ですよね。いったいどういった内容だったのですか?」

 白蓮は微かに頬を染め、花がほころぶように笑って言った。

「ここで結婚式を挙げたいと」
「結婚式……」

 一輪はその言葉を機械的に繰り返した。
 意味が分かってないのかも知れない、と白蓮が少し不安に思っていると、一輪はお盆を脇において深々と頭を下げだした。

「それはまた……おめでとうございます」
「……念のため言っておきますが、私が結婚するわけではありませんよ」
「はっ? あ、いえ。勿論、分かっております」

 そう言って、一輪はそそくさと姿勢を正す。実際、単に結婚という言葉に、反射的にお祝いを述べてしまっただけかもしれない。
 生真面目ではあるが、どこか根本的に抜けているところがある。一輪は誤魔化すように、こほんと咳払いをして、問いかけなおす。 

「しかし何故うちで結婚式を? 普通、神社では?」
「その問いの答えは自ずから出ているわ。つまり、普通ではないからよ」
「ふむ……」

 謎を掛けたような白蓮の言い回しに、一輪が顎に手を当てて考え込む。
 ここ命蓮寺は元より普通のお寺ではない。この一輪は妖怪であるし、白蓮自身の在り方も人から見れば妖怪も同然である。
 そういう特殊な事情を考慮すれば、答えは自然と導き出される。

「先ほどのお客さん、妖怪なのですね」
「ええ。私や貴女より古くから生きている、妖怪の中でも力と権威のある、狐の妖です」
「それならばこちらで受け入れるしかないというのも頷けます。ですが、そもそも何故、神仏の前で婚姻を誓う必要があるのですか。人間じゃあるまいし」
「それもまた自ずから答えの出ている問いね」
「むむ……?」

 今度は先より戸惑ったと見て、一輪は指を顎に当てたまま首を捻る。
 白蓮はそんな様子を微笑ましく見守る。
 ややあって、答えにたどり着いた一輪の顔は得心よりも驚愕に満たされていた。

「まさか……、妖怪と……人間なのですか、結婚するのは!?」
「ええ。その通り。だからこそ、妖怪と人間の平等を説くこの命蓮寺で行うのよ。とても素敵なお話だと思わない?」

 そう言った白蓮の笑みには一点の曇りも無く、これから先、いかなる暗雲も立ち込める気配は無いように見えた。







「いや、あり得んだろう、それは」

 そう言いつつ、魔理沙は先ほどの客が持ってきた菓子箱に手を伸ばそうとした。

「そのあり得ない、ってのはどちらに向けて言っているのかしら?」

 言葉を返しながら、霊夢はその手をぴしゃりとはたく。
 魔理沙の手はそれで一旦引込みはしたが、まるで獲物の様子を窺う蛇のように卓の上で身を伏せている。

「どちらにもだ。まず妖怪と結婚しようなんて考えがまともじゃない」
「そう? 人間と妖怪の結婚なんて昔からよく聞く話じゃない」

 有名なところでは鶴の変化が恩返しに人間に嫁ぐ話。さらに雪女、蛇女、蛤女と枚挙に暇は無い。
 特に今話題になっている狐など、元々人間に嫁ぐ話が「きつね」の語源になっていると『日本霊異記』にも載っているくらいである。

「だけどな、霊夢。そういうのってそもそも相手が妖怪だと知らずに結婚したケースがほとんどだろう? 今回の場合、相手が妖怪だと知って、なお結婚しようって言うんだぜ」

 口調こそ非難するだが、その実、面白がっていることは気配で分かった。
 ややこしい事態をさらに混ぜっ返して、霊夢が困り果てるのを見たくて仕方ないのだろう。
 まったくどうしようもない友人だと霊夢は嘆息する。

「たしかにね。でも幻想郷の妖怪には見た目だけは愛らしいのが多いから、男が惚れてしまうのも分からんでもないわ」
「こんなに愛らしい人間を差し置いて失礼な話だな」
「どっちかっていうと妖怪よりあんたに惚れる男のほうが正気を疑えるけど」
「そう言われると照れるぜ」

 何故か本当に照れたらしい。魔理沙が笑いながら後頭部を掻いている。
 その心を察することすら阿呆らしいので、霊夢は無視して話を戻すことにする。

「でもこの場合、昔話によくある、正体がばれて破綻、という危険がないからより健全ともいえるわ」
「ふふん、昔話なら結婚して、それでめでたしめでたしとっぴんぱらりのぷぅだがな、実際はそううまくいかんぜ。人生の困難はむしろ結婚した後のほうが本番だ」
「そこまで考えるのは私の領分じゃないわ」
「ならそこまで考えるのが領分である親の意見に従うか?」

 親の意見。
 それが、魔理沙がさきほど「どちらも」と言ったうちの、もう片方である。
 客はその狐と結婚する男の両親であった。
 霊夢は黙って彼らが置いていった菓子箱を見つめる。
 葦すだれの隙間から刺し込む夕日の赤い光が、菓子箱を斜に切るように懸かっている。

「息子が妖怪に誑かされ、挙句に浚われようとしている。頼むから妖怪を退治してくれ、ってな」
「……あの親は息子が意志と関係なく、妖術か何かで操られて婚姻を結ばされようとしていると思い込んでいる。だからそういう物騒な話になるのよ」
「さっき言っただろう。妖怪と結婚しようなんて考えはまともじゃない。自分の息子がそんな行動をとったら正気を疑うのが当たり前だ。孫が安倍晴明になって喜ぶ人間もそうはいない」

 魔理沙の言葉に頷きはしたが、霊夢の考えは少し違っていた。
 きっとあの親は、自分の子供が正気でそんな選択をしたとは信じたくないのだ。
 妖怪と結婚する。妖怪の恐怖が身近でな幻想郷での話である。それがどのような事態を招くか想像に難くない。
 勿論相手が妖怪であることは隠そうとするだろうが、露見する危険は少なくないだろう。
 どのみち一家にはこれから先、火宅に住み続けるような苦しみが待ち受けている。
 男はそれでいいだろう。それだけ相手への愛情が深いということなのだ。降りかかる苦難を前に後悔はすれど、納得はできるかもしれない。
 だが親はそれをどう飲み下せばいいのか。恋を天災のようなものに例えた詩は多いが、これはまさしくそれに等しい。
 なればこそ、納得できる原因がほしいのだ。
 息子が妖怪に誑かされてこともあろうに結婚しようとした。それを正義の巫女が退治した。息子は正気に戻り、今度は人間の良い嫁を見つけ、両親と共に末永く幸せに暮らしました。それが彼らにとって最良の昔話なのである。

「困ったものね。絶対誰にも操られていない、なんてことを証明するのは不可能だし」
「下手すりゃ私達まで妖怪に操られてると疑われるのがオチだな」
「まあ色香も一種の妖術と言えないこともないしね」
「おっ、なら退治するのか?」

 魔理沙がにたにたと笑いながら、胡坐を組んだ足を掴んで、体を前後に揺らす。
 蹴り倒してやろうかと本気で思いながら霊夢はそれを睨んだ。

「退治してくれ。はい、分かりました。ってわけにはいかないわよ。私は殺し屋じゃないんだから」
「うむ。確かに殺し屋は依頼が無いと動かないが、お前は誰も頼みもしてないのに、勝手に退治してまわるからな」
「殺人鬼でもないわよ。私は自分が正しいと思ったことなら動くし、そう思わなければ動かないわ」
「ははっ、それはチンピラの理屈だな」
「もういいわよ、それで」

 霊夢は憮然とした調子でぼやくが、魔理沙は意に介さない。

「で、チンピラの霊夢さんはどうするんだ」
「そうね、まずはチンピラ仲間の魔理沙さんに相談してみるとするわ」
「人の恋路を邪魔するのは私の趣味じゃない。だが妖怪に肩入れする気も無い」
「じゃあどうするの?」
「まずは静観して、面白そうなほうに油を注ぐ」
「訊くだけ無駄だったわね。分かっていたことだけど」

 そう言うと霊夢は伸ばした両手ごと頭からぺたりと卓に突っ伏す。
 魔理沙がごそごそと菓子箱をあさるのが気配で分かったが、今度はそのまま放っておいた。




 暮色に染まる空と雲。
 気の早いクビキリギスが、丈の短い草の陰から、生者を妬む亡者のような声で鳴いている。
 空の色が刻々と変わる。星々が、ちらりちらりと窺うように顔を覗かせ始める。
 夕日がまるで溶けていく鉄のように、灼熱に輝きながら地平へと崩れ落ちていく。
 里の外れ。魔法の森へと至る道の手前を、少し逸れたところにある草原。慧音はここからその光景を眺めやるのが好きだった。
 嬉しいことも悲しいことも、全てが一所に留まらず、時間と共に流れ消えていく。やがては自身の存在もそうやって消えていく。そのことが意味もなく、憂いもなく、華美もなく、ただ当然のことのように思えてくる。その心境を持ち帰ったままで、生きていたいと思う。
 だから迷ったときは、いつもこの時刻、この場所に立つ。
 
「やあ。いけないな、慧音先生。こんな遅くまで遊んでいては、子供たちに示しがつかない」

 長閑に声をかけてくるものがある。
 慧音はゆっくりと振り返った。見慣れた友の姿がそこにある。夕日に照らされた彼女の顔は、妹紅というその名の通り、紅く染まっている。
 慧音は目を伏せると、自嘲気味に笑みを浮かべた。

「なに。たまには羽目を外さんとな。誰も彼も私を堅物だと思い込んでいるから困る」
「なら授業で冗談の一つでも飛ばしてみるといい」
「……やめておこう。どう考えても私の柄ではない。引きつった笑いを浮かべられるのが落ちだ」

 言いながら、慧音は先の発言とどこか矛盾していることを自覚する。
 結局は自分で自分を型に嵌めている。しかもその型はきっと自ら創りあげたものではない。誰かが創った型の居心地がいいからと、無理矢理自身を合わせている。
 人には人の模範、妖怪には妖怪の模範の型がある。皆はそれを真似て、たいがいは両親や友人の型を真似て、己の型を整えていく。
 だが自分のような半妖の模範はいったいどこにあるというのか。傍らに立つ、やはり人でも妖怪でもない友人は、千年かけて己の型を見出し得たのだろうか。
 慧音が思考を巡らす間にも、夜は次第に深まっていく。妹紅はいつまでも屈託なくそれを見つめていた。

「……今日、昔の教え子に頼まれごとをされてな」

 唐突に、慧音は口を開いた。
 それは意識することなく、自然に口から漏れて出たという感じだった。何故か妹紅にはそうさせてしまう、不思議な空気があった。

「私に月下氷人をやってほしいと」
「月下……? ああ、仲人のことか」

 慧音は黙って頷く。
 だが仲人などという言葉はまるで自分には不相応に思えた。だからわざわざそんな言葉を使ったのだ。
 氷人という冷たい言葉の響きがむしろ自分に似つかわしいと、そう思う。

「仲人といっても、結婚式で祝辞を述べるだけの便宜的なものだがな。だが何故、親類でも友人でもない私に頼むのか、最初は不思議に思ったが、相手を聞いてようやく合点がいった」
「ほう?」
「妖怪の山に住む、古い狐の変化だ。幻想郷に住む多くの妖怪に違わず、美しい少女の姿をしている」
「……なるほどねえ」

 妹紅の語尾に少し皮肉な色が混じる。
 彼女は普段、飄々といるが時々こんな物言いをする。

「人と妖怪の間に生まれた私であれば、自分たちのことも祝福してくれるに違いないと、そう見込んでのことであろう」
「慧音は生まれつきの半妖というわけではないだろうに」
「そう思うものが居ても、特に訂正しようという気は起こらない。後天的なものだと言って、その理由を詮索されるのも面倒なものだ」
「ああ、全くだな」

 妹紅が同意を示す。
 お互いに好んで語る過去ではないのだろう。
 二つ並んで草原に長く伸びた影法師が、寄る辺もなく、風に吹かれて草と共に揺れる。
 しばらくの間、それを眺めた。

「で、断ったのかい、その話」
「いや、返事は待たせてほしいと、そう言った。少し意外そうな顔をしていたよ」
「迷っているのか?」
「まだ迷う以前の段階だな。正直、途方に暮れているといったところだ」

 そう言って、慧音は空を見上げた。
 先ほどまで紫色だった空も、今は薄墨色に近い。
 まるで星が落ちてくるような空。落ちてくる、幾千の光。
 不意に、慧音の視界が白く染まった。
 クビキリギスの声が変質する。まるで地から一斉に沸いてくるように。恨むように。縋るように。
 音と光が唱和する。ぐらりと天地が遊弋して、慧音は己が虚空に放り出されたような気がした。

「雨が……」
「慧音?」

 妹紅の声に慧音は我に返る。
 夜空には雲ひとつなく、ただ星と月のみが、その画帖に点景する。夏の虫の声は低く、漂うように地を這っている。
 自分が微かに息を乱していることを自覚して、慧音は平静を装おうとした。

「いや、大丈夫だ」
「本当に?」
「ああ、少し眩暈がしただけだ」
「ならいいが……」

 それでも心配げな友に、慧音は笑って見せた。

「明日、命蓮寺に行ってみる」
「命蓮寺?」
「式場だ。とりあえず詳しい事情を訊かんと始まらん」
「なるほど。命蓮寺とはまた、おあつらえ向きだな」

 そう言って、妹紅はまた斜に構えたように言う。
 お互い、人であった頃が遠すぎて、もう素直に感情を見せられなくなっているのかもしれない。
 そんなことを慧音は思いながら、妹紅と並んで帰路についた。







「結婚式は一週間後、予定通り命蓮寺で開催させていただきます。出来ればあなた方にも協力をいただきたいのですが」

 反応を窺うように言葉を切る白蓮を、霊夢はぎろりと睨みつける。
 続けて慧音の方にも顔を向けてきたが、こちらは目線を落とし賛同も拒否も出来かねる意志を示した。
 しかし白蓮はまるで気にした様子もなく、にこりと笑って所定どおりの言葉を継ぐ。

「霊夢さんには出来れば新郎のご両親の説得を、そして慧音さんには仲人役を務めてくださるよう、私からもお願いします」
「いや、お願いされてもねえ……」

 毒気を抜かれた感じで、霊夢はぽりぽりと頬を掻く。
 どうやら霊夢はこの尼公が苦手のようだ。
 命蓮寺の講堂は、閑散としてただひたすらに広く、板張りの床と立派な柱以外は何もない。
 冬ならば凛冽たる寒気に存分に晒され話どころではなかっただろうが、今は涼風がどこからともなく漂ってきて、気味が悪いほど快適である。

「私、その結婚式を中止して欲しい、って言いに来たんだけど」
「まあ、どうしてでしょうか?」
「私の立場上、非常に困るわ。新郎の親からは新婦を退治して欲しい、なんて言われているの。もっとも私は気は進まないから、二人がどこかの山奥に駆け落ちでもしてひっそり暮らすというのなら、あの親達には探したけれど見つからない、とでも言ってごまかしておくつもりなのよ。でもこんな寺で大々的にやられたら、巫女はいったい何をしているんだ、ってことになるでしょう」
「それならばご心配には及びません」
「どういうこと?」
「やがてそのようなことは幻想郷ではありふれたことになります。貴女の名誉が毀損されるとしても一時的なこととなるでしょう」
「いや、とてもそうは思えないから心配しているんだけど」
「すべて私に任せておいてください」
「いやいや、だから――」

 どうにも暖簾に腕押しをしているようだ。
 白蓮は霊夢の言葉をふわりふわりと受け止める。その上、その言葉には何故か、人を安心させるような力があるのだ。
 売り言葉に買い言葉、とはならない。白蓮は売るばかりなのだ。これでは相手の感情を商量することすら出来ない。

「尼公、すまないが私にもいくらか得心のいかないところがあるのだ」

 慧音は埒が明かないと見て、二人の話に割って入る。
 白蓮はやはり笑顔でこちらの言葉を待ち構える。やりにくい。しかし慧音は意識して言葉に力を篭める。

「命蓮寺が人と妖怪の平等を説いていることは知っている。ならば人と妖怪の婚姻もその教えに沿うことだろう。だが何故、わざわざ式を挙げるという話になるのだ。私には貴方や当事者が何を望んでいるのか、いや、狙っているのかが今一つ分からないのだ」
「そうですね……」

 白蓮は人差し指を顎に当てて、宙を見る。その様はまるで見えない経文でも浮かんでいて、それを諳んじているかのようだ。
 やがて、凪いだ海のような穏やかな表情で白蓮は慧音に改めて向き直る。

「かつて私の生きた時代には、現代のような結婚式というようなものはありませんでしたから、すこし心得違いをしているかもしれない、とあらかじめ断っておきます」
「了解した」

 言いつつも、慧音は少し気圧されるような気持ちだった。
 ちらりと霊夢に目をやると、巫女はどうやら静観する構えのようだ。結婚式がどうなどというのは、あまり興味の無い話題なのかもしれない。

「結婚とは、まず新郎および新婦が所属している家族を分割統合して、別の家族を作り上げること。つまり新しい家族の誕生を意味します。ならば私達が新しい家族である、という認識を、家族よりさらに大きな集団――この場合は里の人間達に、もっていただかないといけません。この二つを目的とした通過儀礼。それが結婚式だと思っています」
「ふむ」
「愛する者同士がただ一緒に生きるというのであれば、霊夢さんの言うとおり駆け落ちでもすれば良いのです。ですが、それでは社会から切り離されてしまいます。他人から認められることを求めるのが人の本能である以上、互いに互いしかその相手がいなくなれば、必ず歪みが出ます。人と妖怪の和合は、たしかに私達の望むところです。ですがそれによって不幸になる者達が出ることは、決して本意ではありません」
「だから強引に結婚式を行い、既成事実をもって、人と妖怪の夫婦を認めさせようというのか?」

 慧音が相手の言葉を先取りしようとしたのは、何も賢しらに振舞おうとしたわけではない。
 相手のペースに巻き込まれるのを恐れたのだ。
 彼女は熟練の尼僧だ。相手を説得するという点にかけては、たとえ知識の上で勝っていたとしても慧音など足元にも及ばないだろう。
 だが、慧音はそこで微かな違和感を感じた。知識、知恵、理屈、理論。そういったものが、白蓮には似つかわしくないように感じたのだ。
 先ほど、相手のペース、といった。だが、これは本当に白蓮のペースなのだろうか。

「確かに結論だけを端的に言えばそうなりますが、私達はそのやり方と形を、最上のものにしたいと考えています。これまで説いたのは、あくまで結婚の利です。では何故、式というものが必要なのでしょうか?」
「その流れで言えば、結婚という事実を内外に広く知らしめるためのもの、だな。それにより、新しい家族の結びつきがいかに強いものか、ひいてはその家族を含めた集団がいかに強大かを示すことができる」
「ええ、まさにその通りです。ですから結婚式は盛大に行われることが望ましいのです。いわば自分達が生きる社会の再構築ですから、それを周囲の人間に認めてもらうためには大きな何かが必要です。特にその社会の外側から異分子を迎えようとするには、それこそ、その社会にとって特別に思える何かが」

 そう言って、白蓮は婉然と笑みを浮かべた。
 優しい、だが、どこか妖しい。
 人のものでもない、妖怪のものでもない、それは仏像に見出せる類の笑みであった。
 ぞわりと慧音が背が震える。その慄きが唇に伝わる前に、慧音は口を開く。

「何をするつもりだ」
「ですから、結婚式を」
「ただの結婚式、ってわけじゃないわよね?」

 唐突に口を挟んだ霊夢の表情が変わっていることに、慧音は気づく。
 いつも神社で茶を飲んでいるときとは違う、あれは、異変の解決に赴く時の巫女の顔だ。
 だがそれを見返す白蓮の表情は、毛の一筋も変わらなかった。

「いえ。ただの結婚式ですよ。ただの――」

 邪気はない。稚気も無い。それはただの透徹した意志の塊に見えた。
 笑ったまま、白蓮は言う。

「狐の嫁入りです」







――明後日は、午後から狐の嫁入りとなるでしょう。

 そんなおかしな天気予報が、天狗の配達する新聞に載っていた。
 霊夢はそれを一読すると、居間の隅にある古新聞の山に放り投げた。
 ぽすんと乾いた音を立てて、本日の新聞は昨日の新聞の上に綺麗に収まる。

「つまりはどういうことなんだ?」

 そのコントロールの正確さに半ば感心し、その極まったずぼらさに半ば呆れながら、魔理沙が訊ねる。
 大きな目は、まるで知らない道を発見した子供のように、輝く好奇心に満ちていた。

「つまり白蓮は、人間と狐が結婚するという儀式を、既存の『狐の嫁入り』という怪異の権威を借りて実行しようとしているのよ」
「んー? そうすると何か得があるのか?」
「人間は、神話や民間伝承の形を借りたものは受け入れやすいらしいの。紫が前に集合的無意識がどうとか言って説明してくれたんだけど。信仰が薄い人だって、正月には神社でお賽銭を投げるし、土用の丑の日には鰻を食べたくなるでしょう」
「例外もあるがな。正月になっても賽銭を投げられない神社もあるし、土用の丑の日に鰻なんて買えない巫女もいるぜ」
「話を混ぜっ返したいだけならもう話さないわ」
「あー、冗談だぜ、そう怒るなよ」
「別に怒ってないわよ。うっとおしいだけ」

 虫の居所が悪いのを隠そうともせず、霊夢がぼやく。
 そして、頬杖をつき外を見やった。空は気象学の心得の無い人間が見れば、一両日は雨は降ることが無いと確信してしまいそうなほど晴れ上がっている。
 そのまま黙っている霊夢を見て、さすがに調子に乗りすぎたと思ったのか、魔理沙がちょっと神妙な顔つきをした。

「つまり博麗の巫女としては、異変としての解決がしにくくなった、ってことか。狐の嫁入り自体は異変でもなんでもない、自然現象として受け入れられている。たとえ、その内実が妖怪の結婚であろうとも、それが人々に受け入れられているものである以上、巫女が介入する口実が無い」
「……それもあるけど。白蓮の狙いは、人と妖怪の結婚を幻想郷の仕組みとして取り入れることにあるんだと思うわ。前も言ったでしょう。人と妖怪の結婚自体は、昔話では珍しくないのよ。そしてそういう異類婚姻譚を狐の嫁入りという昔からある現象と結び付ける。外の世界では当然、狐の嫁入りは天気雨という自然現象にすぎない。でも、この幻想郷なら、天気雨が起こればそこに人と妖怪の婚姻がある、いや、天気雨の時には婚姻があったのだという事実を作り上げることが出来る」
「むむ……、そうすると人間があっさり受け入れてしまう可能性もあるということか」
「受け入れるというか、諦めやすくなるでしょうね。失踪を神隠しと呼んで納得しようとすることと同じよ」

 現に天狗の新聞を使ってそれとなく宣伝したり、噂を流すことによって、人々の心にそうしたものを受け入れる余地を作ろうとしている。
 無論、霊夢とてそれをただ傍観していたわけではない。当事者である新郎新婦やその親、果ては親類に至るまで何度も話をしてみたが、まるで解決の糸口が見えないのだ。
 ただ分かったのは、若い二人の恋人が、想像した以上に真剣であるということだけだ。
 無理に引き離せば駆け落ち、最悪、心中などという行動もとりかねない。
 さらには親も親で、結婚式当日に殴りこんで、狐を撃ち殺して鍋で煮てやるなどと、剣呑なことまで言い出している。
 白蓮には和解を頼まれたが、とてもそんなことが出来る空気ではない。

「しかし話を聞いていると随分と腹黒い奴なんだな、白蓮は。前に話をした時はそんなことを考える奴には見えなかったが」
「私もそれが一番解せないのよねえ……」

 霊夢は正直、白蓮のことが苦手である。それは紫に対するものとは全く異なったものだ。
 彼女が唱道する「人と妖怪の共存」は、霊夢にとっては全く受け入れがたいものである。
 しかし霊夢の勘では、白蓮自身は決して悪い人ではない。むしろこれまで会った誰よりも優しさを感じる人であった。
 白蓮と正対していると、間違っているのはもしかしたら自分の方ではないか、という思いに霊夢はしばしば囚われる。しかし彼女の言葉自体は絶対に受け入れられない。
 今回のこともそうなのだ。

「対立する二つの集団を、上から規則や法を押し付けて一つにまとめようとしても、その心の本質が変わらない限り、決して交じり合うことはないわ。無理矢理そうしても、反発し、より深い溝とどうしようもない傷が出来るだけ」

 そう言って霊夢は、懐から陰陽玉を取り出す。
 白と黒。陰陽相剋。勾玉の形に絡み合い、決して偏らない二色。
 魔理沙もそれを、顔が映りこむほどじっと見つめた。

「私はこれが人と妖怪のあり様だと思う。白と黒。お互いがお互いの境界を認識し、白は白、黒は黒であり続ける。それは集団と集団の境界だけじゃない。白の中にある黒も、黒の中にある白も、その存在を認め、決して塗りつぶそうとしない」
「つまり、霊夢は人と妖怪の結婚には反対ということか?」
「まさか。そこまで野暮じゃないわ。むしろ私は結婚自体は、白の中に黒を作ろうとするようなもので望ましいと思う。こういう形になるのはとても難しいことだし、まだまだ時間がかかることだとは思うけど。でも今回の狐の嫁入りは、単に白いものを黒く塗りつぶそうという行為に見えるわ。ただ妖怪のルールを人間に押し付けているだけよ」
「ふーん。なら……お前はどう動く?」

 魔理沙の言葉に、霊夢は溜息を吐く。
 だがそれは煮詰まったというものではない。心の中の澱を吐き出そうとするかのような溜息だった。
 そして霊夢は、今日初めて魔理沙に笑みを見せた。迷いの無い、いつもの霊夢の笑みだった。

「正直こうなったらもう、いつものあれしかないと思うわ」
「おお、いつものあれだな。なら大丈夫さ。これまでだって、あれでなんとかならなかったことは無いんだからな」

 こうやって理屈をこねているより、俄然私達らしいと。
 そんなことを言い合って、どちらからともなく二人は笑い出した。







 陽が落ちて、辺りが闇に包まれるのを、慧音は膝を抱えて座りながら、ただぼんやりと眺めていた。
 昨日もそうやって眺めていた。一昨日もそうやって眺めていた。その前の日はどうだったか忘れてしまった。
 こうやって眺めていれば勝手に陽が落ちる。それが全てではないか。考えたからどうなるというのだろうか。
 堂々巡りのうちに、やがて満月がくっきりと空に映る。そして慧音は、人では無くなる。
 妖しく変じた髪の色と目の色。そして、大きな歪んだ角。
 きもちが悪い、と子供に泣かれてきた。化け物だ、と大人に石を投げられてきた。
 優しい先生と慕われている慧音の、本当の姿だ。

 不意に、とん、と背中に何か暖かい感触があった。それが誰かの背中だと分かって、慧音はそれだけで涙が出そうになった。

「弱いなあ、私は」
「そうかな?」

 まるでずっと前からそこでそうしていたかのように、妹紅は泰然として答えを返した。

「一人でいることに、耐えられない」
「一人でいられることは強さでもなんでもない。千年の間、一人だった私が言うのだから間違いはない」

 妹紅の言葉に、慧音はただ微笑んで頷いた。友もきっと、同じような表情をしているだろう。
 慧音は少し、膝を伸ばした。背中にあずけていた体重が、その分だけ増す。

「今も、思い出すんだ。昔、どうしようもなく一人だったことを。何処にも行くところがなくて、誰も頼る人が居なくて。このまま消えてしまったらどんなに楽だろう、とそんなことばかり考えていた」
「今は、違うだろう。幻想郷があって、皆がいる」

 妹紅もそう言って、背中にあずける力を強くした。
 互いの背中が、まるで燠火のように暖かい。それが夏の夜なのに、不快ではない。

「ああ。だが、今まで私はずっとこんなことを繰り返してきたんだ。独りではないときもあった。友が居たこともあった。家族と呼べる人たちがいたこともあった。村で暮らしたことがあった。町に馴染んでいたこともあった。国に仕えていたこともあった。だが、最後はいつも一人になった」

 そして、そんな時は決まって雨が降っていた。慧音が幸福を感じた時、人の温かさを感じた時、目蓋の裏に決まってその雨の光景がちらついた。
 どんな思い出も、温もりも、全てあの冷たい雨が奪い去ってしまう。

「いっそ妖怪として生きていければ幸せなのだろう。だが私はどうしても、人の心を捨て去ることができない。人にもなれない。妖怪にもなれない。私はこの境涯を死ぬまで彷徨っていることだろう」
「だから、あの二人を素直に祝福できないか。形は違えど、彼と彼女が背負う苦難が自分と似たようなものになるのが見えているから。子でも生せば、それがまさに自分の生き写しになることが分かっているから」
「そうだ。そういう身勝手な理屈だ。私は自分と似たような不幸を、直視したくないだけだ。そして、自分がそれに携わることが恐ろしいだけだ」
「なら、逃げてもいいじゃないか。誰も慧音を責めないよ」

 そういう妹紅の言葉に皮肉な調子も、同情めいた響きもない。
 それは彼女の真率な言葉なのだろう。
 だが慧音はうつむいて、静かに首を振る。

「だが、許してやらねば、とも思うのだ。私の人生を、私の存在を、私はどこかで認めてやらなければならない。私は私であって良かったと。それほど悪くは無い人生であったと。だからこそ、彼と彼女を祝福してやらねばならない。私は、私自身の手で、過去の私の背中を押してやらなければならないと思う。これもまた、身勝手な仮託に過ぎないのだがな」
「うん……」

 妹紅はそう言って頷いた。
 彼女の髪が、慧音の肩口でさらさらと音を立てて擦れる。

「しかし、言葉が見つからないんだ。かつての私に、私はどんな言葉をかけてやったらいいのだろう。いや、言葉だけでよいのだろうか。私は言葉以外にも、何かしなければいけないのではないだろうか。私でしかしてやれないことが何か、あるような気がするんだ」
「慧音……。それならもう、答えは出ているんじゃないかな」

 妹紅の言葉に、慧音は弾かれたように顔を上げる。
 その後頭部に、こつんと妹紅が頭をぶつけた。

「なあ、慧音。結婚式ってなんでやるんだと思う?」
「さあな。命蓮寺で何やら聞かされた気もするが、もう忘れてしまった」
「お互いそういうのとは無縁だったものなあ。普通、仲人ってものは既婚者がやるものなんだが」

 そう言って、くっくっくっ、と妹紅は笑う。
 慧音は彼女のそんな笑い方が好きだった。

「でも私は思うよ。結婚式ってのは、まさに私達のような人間のためにあるものなんだろうってね」
「そんなふうには考えたことはないな。むしろ自分には不似合いな場だと思っていた」
「そう、まさに。だからこそ、さ」

 妹紅は背中をくっつけたまま、大きく伸びをした。
 自然、慧音の背を伸ばし、そのまま空を見上げる格好になる。

「ごらんよ、慧音。月が綺麗だ。明日はきっと晴れるよ」

 妹紅の言葉を受けて、慧音はしばらく月を眺めた。
 自分は今、一人ではないのだと、慧音は強く感じた。
 今宵その月に、雨の光景は重ならなかった。







 その日は夏の盛りで、特に陽射しが強かったと、後になって振り返った人は皆そう言った。

 太陽はそれを司るものこそが主神であることを喧伝するかのように、大空に寄せ付ける者もなく君臨し、眼下の人間を隈なく睨め付けている。
 蝉達は今日が生涯最後の日とばかりに、一斉に気炎を上げて鳴き喚き、鳥達はそれに辟易したかのように空の高みに遁世する。
 人々はただ頭を深く下げて、鞭のごとく振るわれる酷薄な熱暑を背中に受けながら、一日の仕事を黙々とこなしている。
 そのまま一日が過ぎれば、その日はただの真夏日として、記録には残れど記憶には残らない日として、ただ静かに日常という河に流れ落ちただろう。

 ぽつりと、不意にそれが顔に当った時、人々はそれが鳥の糞かなにかだと思い、不快げに頬をぬぐった。
 ぽつりぽつりと、続けざまにそれが顔に当った時、人々は狐につままれたような顔を、お互いに見合わせた。
 ぽつりぽつりぽつり……と、それが数え切れないくらいになったとき、ようやく人々は太陽以外のものがあるはずのない空を見上げた。
 そこにはやはり燦然と輝く太陽が唯一つ。白い雲も黒い雲も、空には無い。
 だが人々は見た。陽の光を反射しながら、水滴がまるで銀箭のように、斜めに走って落ちてくるのを。
 水滴が一斉に大地に落ちる音が、蝉の声とぶつかった。それらが唱和して、現実とは思えない奇怪な響きがあたりに木霊する。
 それでも皆ぽかんとして大空を見上げたままだった。
 何が起こっているのか、誰も理解出来なかった。白日の光。蒼穹の画帖。そして、そこから天を突き破ったかのような、大雨が降っている。
 太陽の光は雨粒に当って散乱し、すでに熱を失っていたが、ただ白いだけの輝きはまるで妖のように実体がなくただひたすら不気味であった。
 人々はようやく我に返って、家路へと、あるいは雨よけになる木陰へと、一目散に駆けていった。
 だがすでに辺りは天から水桶をひっくり返したような有様となり、一寸先を見ることすら覚束ない。太陽の光も道標とならず、かえって皆を惑わすように揺らめいて見える。

「狐の嫁入りだ」

 誰かが発したその言葉が、燎原の火のようにあたりに広まった。
 そう、これは狐の嫁入りだった。実際に遭遇してみれば、この現象はそうとしか呼べないものであった。
 狐の嫁入りは目出度い日である。だから晴れていなければならない。
 狐の嫁入りは人間に見られてはいけない。だからこんな雨が降る。
 狐の嫁入りには行列のために提灯が要る。だから狐火めいた光が見える。

 人々は改めて空を見上げた。
 そうだと知れると、この光景はあまりに幻想的なものに見えた。
 もう誰も騒ぐものはいない。
 蝉もすでに鳴くのを止め、辺りはまるで幽邃の地であるかのように、ただ雨音だけが妖しく響く。
 その雨の中に、縹渺と狐火が揺れる。
 誰もがその中に、しずしずと歩く狐の花嫁と、それに従う行列を幻視した。







 霊夢は仰天する人里を足下にして宙に浮かび、命蓮寺の辺りを遠望していた。
 雨の只中に居る人々には知るすべもないが、雨は命蓮寺の周りを囲むようにして降っている。
 それはあからさまに人を遠ざけようとしている点において、一種の結界とも言えるものだった。
 雨の圏内から外れた人里からは、この辺りの光景はさぞかし奇観に見えていることだろう。
 白い薄膜がすっぽりと命蓮寺を中心とした山を包んでいる。
 そして、霊夢の周囲も雨が避けて通っている。だがこちらは、霊夢自身が張り巡らした結界によるものだ。
 為すべきことを考えれば、雨で体が重く濡れることも、水滴が目に入って視界が遮られることも、今は厭わなければならなかった。

 霊夢はじっと目を凝らす。
 雨の中心、命蓮寺の辺りは明らかに雨脚が弱い。ほんの霧雨程度であろう。
 そして、その天蓋に白々しくも太陽が照っているのが見えた。
 そこにまるで別の写真を切って張ったかのような違和感を、霊夢は感じる。

――あそこが根源か。

 霊夢は雨中でそう呟く。
 その耳に先ほどから雨音に混じって人の声が届いていた。
 それは愛しいものの名を呼び、捜し求める悲痛な声だった。
 せがれやー、せがれやー、と。
 それは狐に浚われてしまった子供の名を呼ぶ親の声。
 溺れそうなほど雨を浴び、帰路を見失って森の中をさ迷いながら、それでもその親は懸命に、息子の姿だけを捜し求めている。
 その声を哀れには思えど、心が流されることはない。
 ただ目の前の異変を解決することが博麗の巫女の務めと確信し、霊夢は静かに目を閉じて虚空を蹴った。

 雨を切り裂くように霊夢は雲居のさらに向こうを目指し、飛翔する。
 だが雨は意志をもっているかのようにうねり、霊夢の正面からほとんど滝のような固まりになってぶつかってくる。
 水流は霊夢の結界にぶつかり、飛沫になって散っていくが、それでも霊夢の勢いは自然弱まらざるを得ない。
 歯噛みする霊夢の眼前に突如黒い影が躍りこんだ。霊夢は即座に立ち止まり、袂から素早く札を取り出す。

「おっと、間違えるな。私だ、私」

 姿は雨で朧に見えたが、その声と黒衣だけは間違えようが無い。
 霊夢は大きく息をついて、しかめ面をした。

「魔理沙。私はこれから仕事なの。邪魔しに来たんなら帰って」
「おいおい、酷い言い草だな。一人じゃ大変そうだから手伝いに駆けつけてやったのに」
「……あんたの助けが邪魔にならなかったことのほうが珍しいけどね」

 憎まれ口を叩きながらも、霊夢は自然に表情を綻ばした。
 近づくと魔理沙は霊夢と違って濡れ鼠になっていた。
 だがその肌に貼りついた金髪の隙間からは、いつもの向日葵ような笑顔が覗いている。
 霊夢もそれに釣られて少し笑みがこぼれた。

「今回は静観してるんじゃなかったの?」
「面白そうなほうに加勢するとも言ったぜ。なんだかんだ言って、お前と一緒に行動するのが一番面白いからな」

 そう言って、魔理沙は一枚にスペルカードを取り出し、まっすぐ水平に構えた。

「さあ、文字通りの露払いといこうか!」

 そして、宣言する。

「彗星――」

 スペルカードから光が零れ、瞬く間に魔理沙の全身を包む。
 その光は魔理沙の体を流れ落ちるように伝い、乗ってきた箒の尾に集まっていく。

「ブレイジングスター!」

 一瞬、太陽をも凌駕するかと思われるほどの閃光が魔理沙から放たれる。
 霊夢が声をかける間もなく、魔理沙の体は一機の輝く彗星となり、雨を吹き飛ばしながら天空へと突き抜けていく。
 雨はさらに勢いを増し竜のように暴れ狂うが、それでもその彗星の前にはあえなく四散し、ただ空中に無色の大輪を咲かせるだけに終わる。
 霊夢はその後ろを必死に追尾する。雨の抵抗がないため、進む速度はさきほどとは比べものにならない。
 眼前の太陽は見る間に大きくなっていく。やはりあれは天球に位置するものではありえないと霊夢は確信する。
 その時、霊夢はその太陽に、一瞬蛇のような火花が閃くのを見た。

「魔理沙――」

 聞えない、間に合わない、と知りながらも霊夢は思わず叫ぶ。
 同時に太陽から閃光が飛び出し、彗星を撃墜するようにしてぶつかった。
 鼓膜を突き破らんばかりに雷鳴が轟く。
 それは雷神の槍さながら、不遜とばかりに人造の彗星を蹴散らして霧消させる。
 スペルカードを打ち破られ、そのまま落下しかけた魔理沙は必死で箒にしがみつく。

「くそっ……って?」

 だが呟いた魔理沙も、それを助けようとした霊夢も思わず眼前の光景に目を見開いた。
 先ほどまで太陽だと思っていたそれは、人間ほどの大きさの光球となって中空に浮かんでいる。
 そしてその背後に隠れるようにして、巨大な雲の塊が浮かんでいた。

「なるほど、そういう仕掛けか」

 すでに周囲に雨は無い。
 霊夢と魔理沙はふわりと飛び上がって、雲の上空へ回り込んだ。
 そこには、雲の裏を埋め尽くすように幽霊の大群が居た。幽霊達はそれぞれが大きな柄杓を持って地上を眺め降ろしている。
 幽霊が柄杓の中身がぱっと放り投げると、そこからその容量を遥かに超えた水が零れ落ち、やがてそれが雨となって眼下に降り注ぐ。
 雲の背後には、今度こそ本物の太陽が、夏の日差しをそのままに燦々と変わらぬ姿で鎮座している。

「幽霊の正体見たり、いや、正体の幽霊見たり、かな」

 魔理沙が皮肉な調子で呟く。
 本物の太陽を入道雲で覆い隠し、そこに舟幽霊を配置して、大船をも沈める柄杓の群れで、局地的な雨を降らせた。
 そしてその入道雲をさらに、偽物の太陽が隠す。大雨が視界を遮った中では、誰も背後の仕掛けになど気づかない。
 そこへ例の偽の太陽が、二人の後を追うようにして雲の背後まで昇ってきた。

「困りますね、お客さん」

 声と共に、光は徐々に明度を落としていく。
 正体不明の光は、もはや正体の知れたある姿へと変貌していく。

「ここは関係者以外立ち入り禁止なのですが?」

 赤と青の奇形で奇怪な翼。特徴的な黒衣。そして、無邪気な悪意をたたえた笑顔。
 霊夢は苦虫を噛み潰したような顔で唸る。

「ぬえか。この前退治してやったばかりだっていうのに、全く懲りてないようね」
「本日の私は式場スタッフなんだ。これでも割と真面目に勤労しているんだよ。いつも茶で酔っ払って寝ているような巫女に、文句を言われる筋合いは無いな」
「奇遇ね。私も珍しく勤労中なの。ちなみに本日は妖怪退治デーよ。遭遇した妖怪は漏れなくいつもの三倍叩きのめすわ」
「へえ……。それは本当に奇遇というものだ。なら三倍退治してもらおうか」

 ぬえがにやりと笑うのを合図に、霊夢を囲うように人影が二体増える。
 舟幽霊を操っていた村紗水蜜と、入道の雲山を操っていた雲居一輪が無表情で陣取る。

「なんだ、世話が焼けるじゃないか」

 そこへ、その霊夢の背後を守るようにして魔理沙が飛んできた。
 彼女はニヤニヤと実に楽しそうに笑いながら、自慢のミニ八卦炉を構えている。

「船長と尼さんは私に任せな。ちなみに本日の私はスペシャルサービスデーだ。貸しは三倍返しだからな!」
「じゃあ今度神社に来たとき三倍ぬるいお茶を出してあげるわよ!」

 霊夢の言葉を皮切りに、五者五様のスペルカードが一斉に抜き放たれる。
 本日二度目の雷が、雲のないはずの大空を渡るように鳴り響いた。







 まるで夢の中を歩いているようだと、慧音は思った。
 道中を取り巻くように降り注ぐ雨が、まるで上質の薄い繻子のカーテンを天上から幾重にも張り巡らしたかのように見える。
 蝉の声がそこで音の壁にぶつかったかのように反響し、遠い雨音と緩やかに調和しながら木々の間を縫っていく。
 流れる空気は雨の匂いを運んで、しめやかでいながらどこか清涼だ。少なくとも参列者に汗をかいている者はいない。
 しずしずと寺に向かって歩いていく新婦は美しかった。
 目深の角隠しから覗く口元は、ほっそりとした顎に朱の花が一輪咲いたように、慎ましく同時に艶やかだった。首筋や手足など僅かに見える肌は、身に纏う白無垢を欺くほどに白く、触れればそれだけで崩れ消えていくような儚さを感じた。
 そして新婦の隣に並ぶ新郎は凛々しかった。
 慧音が良く知っている子供時代の彼は、年よりも幼く見えるほどで、いつも他の子供にからかわれては涙ぐんでいたものだった。だがそのくせ、慧音に庇われることを酷く嫌がっていた。そういう芯の強さが、今は隠れもせず、その力強い足取りからも垣間見える。そこに居るのは、大人になりかけた少年ではなく、すでに一人前の大人であった。
 付き従う親族は皆、狐の妖か、年配の人間の姿をしたものが多いが、正真の人間はおそらく一人もいないであろう。
 幻想的であった。だがそれは同時に現実からの甚だしい乖離を意味をしていた。式が終われば、夢の飛沫と化して日常にたちどころに押しつぶされてしまいそうな、そんな危うさを持った光景だった。

 やがて命蓮寺が見えてきた。
 行列はざわめき一つ起きることなく、粛々と参道を進み、毘沙門天の待つ講堂へと向かう。
 七福神で夫婦円満といえば布袋尊であるが、吉祥天を妻とする毘沙門天とて縁起が無いとは言えないだろうと、慧音はそんな益体も無いことを考えた。
 慧音は薄暗い密教的な趣きを想像していたのだが、講堂は十分に採光を取り入れており、むしろ華やかな舞台を思わせるものであった。
 白蓮は厳かな僧服に身を包んで礼壇に座し、夫婦に心から祝福する眼差しを向けている。
 その背後には彫像のようにして立つ、毘沙門天の弟子、虎丸星の姿が見える。一同は揃ってそちらに向かい、深く三礼をする。
 その後も、滞りなく式は進んでいく。白蓮は結婚式など初めてであるはずなのに、まるで手馴れたもののようにそれらを如才なく仕切っていた。
 そして盃が親族一同に配られると、仲人兼媒酌人として慧音がお祝いの言葉を述べる段になった。
 幻想郷の住人として慧音は長く慣れ親しんでいる。特に奇異の目を向けられることも無く、慧音は礼壇に上った。

「お二人の結婚に際し、媒酌の大役を仰せつかりました上白沢慧音でございます。この命蓮寺で結婚の儀が執り行われ、鴛鴦の契りを結ばれましたことを、皆様方に謹んでご報告申し上げます」

 月並みな挨拶を慧音は述べる。
 講堂はしわぶき一つ漏れず、ただどこからか遠雷の響きが聴こえていた。
 この天気雨はまやかしに過ぎない。なのに雷まで発生していることを、慧音は頭のどこかで不思議に思った。

「では、古くから私の教え子であった新郎の紹介をさせていただきます。彼は子供の頃から利発で、そして常識にとらわれない、鋭い感性を持った子でした。授業中の質問に私がたじろがされたことも一度や二度ではありません」

 慧音の言葉に、新郎は少しはにかんでうつむく。
 本当に彼は良い青年に成長したと、慧音は心からそう思う。

「今回、人間と妖怪の婚姻の仲人役をしてほしいと頼まれたときも、私の心に驚きが無かったとは言えません。ご存知の方もおられると思いますが、私は半人半妖の存在です。人と妖怪の間に立つことの苦難は、身に染みて知っています。だからこそ、私に祝福の言葉を述べることなどできるだろうか、そう疑いました。しかし、つい先日気がつきました。そのような私の事情など最初からどうでもよいことであったと」

 すでに慧音の言葉は、仲人としての立場も祝辞という形式も離れている。
 空で読んでいた例文も今はもう無い。だが誰一人としてそこに疑問を挟む者はいない。慧音のその表情は、教え子に義理で頼まれたなどというものは通り越して、どこか切迫したものになっていた。
 慧音は静かに新郎新婦に向き直る。

「ご結婚おめでとう。心の底からそう思う。だからいつまでも覚えていてほしい。この日、この場所で、私だけではなくここに居る全ての人たちが、心から君達を祝福し、そしてその未来を案じていることを。そして思い出して欲しい――。君が生れ落ちてからずっと、君のことを愛し続け、そして今も案じ続けている人達がいることを」

 胸を突かれたように、新郎が表情を変える。
 慧音はそれを和らげるように、微かに微笑んだ。

「いつだったか、幼い君が夜中に高熱を出した時、ご両親は君をおぶって私の家の門を激しく叩き、なんとかしてくれと怒鳴り込んできた。医者と同じ先生なのだから治せるはずだ、と言ってな。普段は論理的なものの考え方をする方達だったので、随分と面食らってしまったのを覚えている。しかし後日それを恥じて謝りにも来てくれた。子故の闇とは言うが、あのとき二人はまさにそういう状態であった。だが、今も彼らはその闇を彷徨っている。君達がお互いの心を信じているように、彼らも君のことを心から信じてきたはずなのに」

 そして、慧音は再び一同に向き直る。
 誰もが手に持った杯を落とさんばかりに、慧音の方を注視していた。

「幸せなときは確かにあったはずなのに、私達は今を生きることが忙しすぎて、気がつけばそれを思い出すことすら難しくなってしまう。辛いことや悲しいことばかりが折り重なるように増えていくようで、どこかで進んできた道を誤ったのかと、あのときの幸福まで否定してしまいそうになる」

 慧音は思い出す。
 そう、確かにあったはずなのだ。
 自分が半妖となることを選択したときに、心に兆した決意が。今後いかなる運命を辿ろうとも決して後悔はしないという強い意思が。
 だがそれを思い返そうとして胸中に浮かぶのは、いつも雨の降るあの日の光景だった。
 過ぎし日は雨に遠く霞み、その温もりも今はもう無い。

「だから、この式を、このときの幸福を、決して消えないように心に刻み付けて欲しい。これから先、どれだけ雨が降ろうとも、温もりを忘れることがないように。辛い日々が続いても、いつでも還ってこられるように。今日この日があるから、これから先、進む道は決して間違いなどでは無いと、そう思い続けてほしい」

 慧音はもう一度、ゆっくりと、新郎の顔を見る。
 そこに居るのはもう自分の写しではない。今この時を胸に刻み、前を向いて生きていこうとする一人の人間が居た。そしてそれを生涯支える覚悟を持った少女が隣に居た。
 もう自分が言うことは無いと悟って、慧音は穏やかな表情で眦を伏せる。

「この結婚式が、君達にとってそういう日になることを願う」

 慧音は深く頭を下げる。
 その頭を上げる前に、新郎と新婦の拍手が、力強く、鳴った。
 それに数拍遅れて、他の来賓からも拍手が細波のように沸き起こる。
 慧音が笑ってそれに答えようとしたその時、命蓮寺全体を揺るがすほどの轟音が、外の方から響き渡ってきた。
 驚いて一同は外の方を窺う。先ほどの音は誰が聴いても、すぐそこで雷でも落ちたとしか思えないものであった。
 だが式の途中ということもあって、誰も外には足を踏み出せない。
 そんな中を、白蓮一人が「大変、大変」と零しながら、ぱたぱたと外に駆けていく。そして空を見上げると、ややあってこちらを振り向き、困りきった顔をした。

「申し訳ありません。狐の嫁入りは当方の不手際により中断してしまったようです。どうやら雨は止んでしまったようですが、このまま式を続けてもよろしいでしょうか?」

 白蓮の言葉に、新郎と新婦は二人揃って、一旦結婚式を中止することを告げた。
 ただし今度、再開するときは、普通の結婚式を。そして、きっと今日は来れなかった自分の大切な人たちを連れてきたい、と。
 白蓮はその答えが分かっていたかのように、微笑んで承った。
 講堂内は、一時騒然としたようだが、ややあって一人、二人と外に出て行った。皆、次々と、示し合わせたように空を見つめている。
 慧音は最後に外に出て、そして同じように空を見上げた――。







「やれやれ最期は相打ちだったか。さすがは伝説の雷獣。半端じゃなかったな」
「あんたがあの二人を最後まで抑えきれてたら完勝だったわよ。全く何が任せろよ」
「お前がもっと早くあいつをなんとか出来たらよかったんだ。タイムアップだぜ」

 霊夢と魔理沙は、頭のてっぺんをつき合わせるような形で、大の字になって仰向けに寝転んでいた。
 服の端々は焦げていくらか黒ずんだり破れたりしているが、体に大きな怪我は見られない。
 ただ彼女らの周囲は、木々が無残に吹き飛び、地面には大きなクレーターが形成され、落雷の跡を生々しく示していた。
 二人とも、空に互いの憎らしい顔を浮かべて、それを睨んでいる。

「ところで、なあ、どうなったんだ、結婚式」
「知らないわよ。もう駆けつける元気もないし。――ただ、なるようになった気がするわ、私の勘では」
「あー、そうだな、私もなるようになった気がするぜ。なにせ、あんなものが見えるんだしな」

 そして黙って、二人は空を見続けた。
 一勝負終えた後の火照った体に、雨上がりの風が心地よかった。
 いつの間にか、二人は笑いあっていた。こういう日もたまには悪くないと、そんなことを考えた。







「お疲れさま、みんな」

 白蓮はぼろぼろになった三人の妖怪を、労わるような笑みで出迎えた。
 鵺は相変わらず飄々とした表情だったが、その影にはさすがに疲労が滲んでいる。

「あれで良かったのでしょうか、姐さん」

 一輪は胸に小さくなった雲山を抱え、あやす様に撫でている。
 僅かに滲む不満の口調は、決して白蓮に向けられたものではない。

「ええ、とりあえずは丸く収まったわ。後は若い二人の頑張りを信じるしかないわね」
「最初から聖が言って聞かせたのでは駄目だったのでしょうか?」

 村紗の言葉に、白蓮はゆっくりと頭を振る。

「私達、命蓮寺は人間の味方であると同時に、妖怪の味方でもあることをまず理解してもらわないといけない。でも彼らは長い間虐げられてきた者達。そんな彼らに理解してもらうためには、たとえ間違っていても、自分達だけは最後まで味方であるというような、そういう覚悟が必要なの」
「だろうね。私だって正論ばかり言って、実際には助けてくれない人間なんて、絶対信用しないだろうし」

 ぬえがどこか茶化した口調で同意する。
 傍らの一輪がその態度に、少し眉を顰めた。白蓮を解放しようとしたとき、ぬえがやったことを思い出したのかもしれない。

「それに正しいことばかりではうまく回らないことの方が多いわ。私が言って聞かせても、あの二人が納得したかどうか。両親のほうでも、容易に息子の正気を信じようとしなかったでしょう。一度息子を失う絶望に陥って、それでもなお、息子が帰ってきてくれた。操られたままでは決してとらない行動を見せることで、ご両親も話を聞く余裕が出来ると思うわ」
「霊夢や慧音さんが姐さんの見込んだとおりに動かなかったらどうするつもりだったんですか?」
「それならそれでもいいの。狐の嫁入りは滞りなく進み、そしてあの二人は幸せに添い遂げたかも知れない。ご両親にはお気の毒だけど、それも一つの正義だと思うわ」

 もし間違っているのが霊夢達の方であれば、ぬえ達はたやすく彼女らを打ち破っただろうことを、白蓮は確信していた。

「でもきっとこうなると思っていたわ。幻想郷の人たちは良くも悪くも心根がまっすぐな人たちばかりだし。まあ、私もちょっと油を注ぐようなことを言ってみたりとかしたし……」
「姐さん……。でもこれからは少し自重してください。こんなふうに憎まれ役を演じるから、人間達の恨みを買って封印されてしまうんです」
「大丈夫よ。そうしたらきっとまた貴方達が助けてくれるから」

 白蓮から罪のない笑顔でそんなことを言われてしまい、三人は何も言えず照れたように黙り込んだ。

「でもまあ、ちょっと今回は出来すぎな気もするけどね」

 そう言って白蓮は空を見上げた。妖怪達もそれに倣う。
 空は相変わらず雲も無く澄み渡っている。
 そこに浮かぶそれは間もなく消えてしまうだろうけど、いつまでもこうしていたいと、白蓮はそんなことを考えていた。







 慧音は呆然と空を見上げていた。
 珍しくも無いものであるはずなのに、今はそれが奇跡のように眩しく見えた。
 見覚えのある景色だった。いつか見た景色だった。
 いつも思い返すあの雨の日。あの日の雨が上がったときも、こんな光景が見えたはずではなかったか。
 あのとき絶望に沈んでいた自分を、救い出したのはこの光景ではなかったのか。
 何故忘れていたのだろう。何故思い出せなかったのだろう。
 雨に打たれた痛みと悲しみばかりが明瞭で、救われた想いや愛しい感情は留め置こうとする端から崩れ落ちてしまう。
 それはきっと、気づかぬうちに幾度も自分を支えてくれていたはずなのに。

「綺麗なものだな」

 いつの間にやってきたのか、妹紅が隣に居た。
 雨の中を来たのだろう、体は濡れそぼっている。手には二つの傘をぶら下げていた。

「お疲れ様、慧音。傘、要らなかったみたいだな」

 それでも差し出された傘を、慧音は黙って受け取った。
 並んで空を見上げる。周囲の人たちも、誰一人として帰路にはつかず、黙って空を見つめている。

「しかし、大変なのはこれからだ。私はもう形式だけの仲人ではない。偉そうな事を言ってしまったからな。私は両親と子供の和解のために尽力するつもりだ。だが前途は多難だろう」
「ふむ。だがまあ、大丈夫な気がするよ。空にこうして吉兆が見える。知っているかもしれないが、あれは共存の象徴なんだそうだ。あんなふうに多彩な色があるからかな」
「そうなのか……」
「おや、慧音先生でも知らないことがあるんだな」
「ああ、知らないことばかりだよ」

 慧音は静かに目を閉じる。
 心には鮮やかに、空の景色が映っている。それは確かにそこにある。そして、いつまでもそこにあり続ける。ただそこにあることを、忘れてしまうだけなのだ。

「天気雨の後には、こんな虹がよく見える。そんな当たり前のことも、どうやら私は知らなかったようだ」



― 終 ―
 雨がテーマとなると、どこか陰鬱な話になりがちです。私の勝手なイメージかもしれませんが。
 仕方ないのであえてストレートに行ってみました。
 ちびちびとお酒でも飲みながら読んでみるとちょうどいい塩梅かも知れません。
 なんだか後書きまで湿っぽいですねえ。ああ、白蓮様と結婚式挙げたいなあ……。

 それでは、また。
時計屋
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/11/21 23:56:43
更新日時:
2010/01/22 00:23:33
評価:
19/20
POINT:
142
Rate:
1.67
1. 10 歩人 ■2009/11/23 03:54:35
これは起こりうる可能性が十分に高い非常に解決困難な厄介ごと
ですね。力技でどうにかする訳にも行かず、はてさてといった所
でしょうか。最上は双方納得の上で、なんだろうけど、それが
一番の困難。

でももっと問題は寿命の違いだと思ったり。どうしようもないし。

面白かった。楽しませていただきました。
2. 9 静かな部屋 ■2009/11/23 10:49:54
ああくそ、見込み以上にいい作品が多いせいで、10点に収まらん!
正義ってのはひとつじゃないんですよねえ
野原ひろしやヤン・ウェンリーが似たようなことを言ってましたが、
結論は絶対に出せないんだろうな等といったことをふらふら考えつつ。
文章にせよ、セリフにせよ、キャラにせよ、上から読んできた中で最高に位置しています
3. 9 ケンロク ■2009/11/24 16:07:52
なにこれズルイ!やたら面白かったです!
テーマを押さえた話の流れ、霊夢・慧音・白蓮の三視点が効果的な構成、随所の言葉選び、どれもが筆力の違いを感じさせました。
読者としてのみ参加なら気持ちよく終われましたが、今回、作品を投稿させて頂いている身としては、我が身の拙さを感じてしまいました。妬ましいっ!
4. 7 神鋼 ■2010/01/03 23:20:13
本文への感想全てをうっちゃってでも思ったことを言います。それは諦めろ。
5. 6 藤木寸流 ■2010/01/04 03:43:43
 良い話かもしれない。白蓮、霊夢、慧音の立ち位置が絶妙。個人的に、人と妖の結婚もセーフなんじゃないかな幻想郷は、と思ったりもしましたが。そのへんは解釈の違いかも。
 慧音の昔話にも興味がないではないですが、それを追求するのはさすがに無粋か。慧音の悩みが流れるようにさっくり解決してしまったあたりは、もうちょっと紆余曲折あってもよかったのかなと。あまりにもすんなり解きほぐされて自己解決してしまったので、読んだ当初は疑問に思わないくらいだったんですけど。
 ふたりに幸あれ。
6. 8 文鎮 ■2010/01/07 02:32:16
異類婚姻譚って何だかロマンチックな感じがします。
まあ、実際は後天的に半妖になった慧音が苦労したように茨の道だったとは思いますが、相手が妖怪だと分かっていても愛を貫くってかっこいいじゃないですか。
妖怪と人間の対立が形式的なものになった時代の幻想郷で異類婚姻譚はどのような未来を切り開くのか、などなかなか考えさせられる作品でした。
7. 6 パレット ■2010/01/10 05:40:18
 なんだかめちゃくちゃ面白かったです。
 ……と、これだと自分でも何を言ってるのかわからないので、何がどうして面白かったのか考えてみたのですが……たぶんこれ、キャラクターがすごい魅力的に描かれてるんですね。慧音と妹紅、霊夢と魔理沙、それに白蓮一味……三つの勢力、多数のキャラを扱っていながら、どのキャラも、他の二次創作に比べてそれほど逸脱していないというか……すごく、それっぽい。かつ魅力的。ぬえやムラサあたりまで、全員がきっちりと見せ場を作ってる。
 芯になってる慧音の話も、とても真っ直ぐで、そしてやはり魅力的。
 いや、ほんとすごく面白かったです。
8. 7 白錨 ■2010/01/10 12:43:04
白蓮の菩薩的優しさが文章全体に滲み出ているなぁと思いました。
人の妖の境界線って霊夢と白蓮の二人が良い方向で曖昧にしていきそうですよね。心温まる話でした。
そしてあとがきに笑わせていただきました。白蓮様は私も大好きです、なんて言ったら怒られますね(汗)
9. 7 バーボン ■2010/01/11 07:51:00
狐の嫁入り自体は確かにストレートなお題消化の仕方な気がしますが、そこに慧音の苦悩を絡めてきたのは中々面白いと思いました。別に湿っぽいとは感じず、むしろ良い終わり方で気持ちが良かったです。
霊夢達は結局弾幕か、と思いましたが、彼女らの立ち位置を考えればこれも妥当な線かなぁと。
文章も奇をてらうわけではなく、あくまでも堅実な読みやすい文だったイメージです。
10. 7 椒良徳 ■2010/01/11 20:32:15
これは非常に素晴らしい作品ですね。お見事です。
文章は流麗で美しく相当の文章力がお有りだなと感じられました。
また、人と妖怪の結婚に対する各キャラの行動や考え方なども、キャラの性格が活きていて違和感なく読めました。
最終的には明日に希望が残る結末も良いですね。

ただ、今回コンペの最高傑作というほどではないのでこの点数にします。
11. 6 詩所 ■2010/01/13 22:39:31
 何事も先駆者というのは大変なものです。
 試行錯誤して進んでいくのもいいものだと。
12. 8 deso ■2010/01/13 23:25:37
達者な文章で生き生きと描かれたキャラがたまらなく魅力的です。
素敵なお話でした。どうもありがとうございます。
13. 9 ホイセケヌ ■2010/01/14 21:12:18
、ウ、ウ、゙、ヌ・ュ・罕鬢ウ、キ、ニ、ェ、、、ニノマハヨ、ッ、゙、ネ、皃、ホ、マヒリヨア、ヒ、ケ、エ、、、ネヒシ、テ、ソ。」
ヤ彫マノマハヨ、ッ、゙、ネ、゙、テ、ニ。「、ォ、ト娉、キ、ニ、ス、、セ、、ホ・ュ・罕鬣ッ・ソゥ`、ホミヤ、マツテサ、サ、コ、ヒホユZ、ヒマ「、ナ、、、ニ、、、ニ。「ノ、ュノ、ュ、ネ、キ、ニ、、、ニネチヲオト、ヒクミ、ク、。」・ュ・罕鬣ッ・ソゥ`、エ、ネ、ホチ「因、菻ナト、ネ、、、ヲオ网ヒ、ェ、、、ニク。ゥ拳チ「、ケ、、隍ヲ、ハ欽、ヒ、ハ、テ、ニ、マ、、、、筅ホ、ホ。「娉、キ、ニユl、ャユ、キ、ッ。「ユl、ャ馮゚`、テ、ニ、、、、ネ、、、ヲセメ、ュ、ャテエ_、ヒ、オ、、、、ア、ヌ、筅ハ、ッ。「、ス、、セ、、ホスYサ鯡ス、ヒ拳、ケ、ヒシ、、、ャrチメ、ヒ⊇、、テ、ニ、ッ、。」、、、、ヤ彫ユi、゙、サ、ニ、筅鬢、、゙、キ、ソ。」
14. 9 やぶH ■2010/01/15 02:35:18
文章の上手さもさることながら、台詞回しがとても好み。
お話全体も、晴れの中に見える雨という、天気雨の雰囲気を再現できていたと思います。
お見事です。
15. 8 すっとこどっこい ■2010/01/15 10:07:08
読みましたので感想を書かせてもらいます。


まず気になった点を。
所々に、自分から見たら片手で数えるほどですが、誤字が見当たりました。
自分はあまり気にせずに読んでしまうタイプですし、それも最初辺りだったはずなのでまぁ大丈夫と言えば大丈夫なのかな、と。


次に読んでて良かった点。

話の流れがゆったりとしていて、非常に読みやすかったです。
それに狐にまつわる話や、伝承に対する理屈はどこか堅い気もしましたが、話を崩すコトもなく、むしろ核心の重要なパーツとして生きていました。
個人個人の心情や周りの風景、情景の描写は物語に彩りを持たせるようでした。
一つ一つがそれぞれを補いあい、堅さを残しつつも味を深めた物語だと思います。


何回も言うかも知れませんが、どこか変な堅さを感じました。
読む人によれば読みにくいかも知れません。


ともかく。素晴らしい作品でした。
16. 3 八重結界 ■2010/01/15 18:32:06
 策士聖というのも、なかなかに斬新で面白いものがありました。笑顔の人ほど恐ろしい。
17. 8 2号 ■2010/01/15 19:18:34
狐の嫁入りはありふれたテーマが、正面から人間と妖怪の結婚を描くのはとても難しいものだと思います。
特に、慧音に焦点をあて、しっかりと慧音の答えを書ききっていたのは素晴らしいです。
スピーチに感動しました。
18. 8 零四季 ■2010/01/15 23:19:36
まさか本当に狐に嫁入りさせるとは。
湿っぽくても良い話。いくつかのテーマを同時に行っていて面白かったと思います。
ああ、蓮子と結婚式挙げたいなぁ……。
19. 7 木村圭 ■2010/01/15 23:26:03
どこぞの八雲さんしか思い浮かばなくて混乱したのは内緒だ。
それにしても慧音の祝辞は見事でした。
そして白蓮は真っ黒でした。なまじ正しそうなことを言ってるだけに性質が悪いんだよなぁ。
20. フリーレス 時計屋 ■2010/01/22 00:21:56
相変わらず片手落ちなものを書いている時計屋でございます。
こんな重苦しいSSを読了してくれただけではなく、評価までしていただいてありがとうございました。
ささやかながらコメントを返しをさせていただきます。


>歩人さん

そうですねえ。人と妖怪の結婚なんて幻想郷では普通にありそう。
しかし、もし寿命の違いで先立たれても添い遂げられるなら後悔はきっとしないでしょう。
楽しんでいただけて何よりです。


>静かな部屋さん

みんなにとっての正義は一つではないけれど、一人のとっての正義はたぶん一つだけ。
そういうもののぶつかり合いがとても好きです。


>ケンロクさん

キャラクターがそれぞれ独自の思考と独自の行動で動き、結果としてそれが一つの話にまとまっているように見える。
そういう形が理想です。
誉めていただきたいところを誉めていただいて、嬉しい限りです。


>神鋼さん

諦める前にまず全力でぶつからないことには、未練になってしまいますからね。



>藤木寸流さん

慧音の昔話はおぼろげにイメージにあったのですが、結局書く時間が無くて仄めかすだけに。
人と妖の結婚は意外に無いですねえ。やっぱり幻想郷でも禁忌なのでしょうか。


>文鎮さん

異類婚姻譚はロマンチックですが、そのほとんどが悲恋で終わりますね。
彼らもまさに茨の道だと思いますが、そうした類の話はまた何か別のSSで書いてみたいです。


>zarさん

雨がテーマということで、なんだか灰色と黒しか無い様なSSに。
もうちょっと晴れた部分があっても良かったと反省。


>パレットさん

そんなに誉めていただけると、小躍りしたくなりますね。
キャラがそれっぽいと言われて一安心です。キャラが理屈っぽくて東方らしくない、とよく言われてしまうので。


>白錨さん

白蓮の考えと霊夢の考えって、実はそれほど違ってないんじゃないのかもしれませんね。
これからも白蓮さんが活躍してくれるといいなあ。


>バーボンさん

霊夢たちは弾幕ですねえ。
なんか言葉で説得するのは彼女達らしくないなあ、と。
文章は変にギャグを入れたりせず、まっすぐに書いてみました。
功を奏したようで良かったです。


>椒良徳さん

今回のこんぺはレベルが高いなあ、と私も読んでいる最中思いました。
そんな中、拙作に高い評価を付けていただいて、光栄です。
次はより面白いSSをお見せできるよう、精進していきます。


>詩所さん

どのような分野においても、先人とは偉大なものですね。
特に当時の非難や弾圧と戦ってきた先人たちは。


>desoさん

常々「俺って文章力が無いなあ」と悩んでいたので、嬉しいお言葉です。
色々と思考錯誤していますが、なかなか自分の思い通りにはいきません。


>文字化けの方

変換すると断片的に読める文字と得点から、なんとなく誉めてくださっていることが分かります。
そのお気持ちだけでも十分嬉しいです。


>やぶHさん

台詞回しは東方っぽい感じが出てるといいなあ、と思って書きました。
また、雨がお題なので、描写はそこに力を入れてみました。
うまく表せていたようで何よりでした。


>すっとこどっこいさん

すいません、誤字は慎重にチェックしたつもりでしたが、片手で数えるほどありましたか。
まだまだ甘かったようです。
理屈っぽさは、どうも中途半端でしたね。
やらないならやらない。やるなら徹底的にやる。
どちらかにするべきでした。時間的に前者しか選択の余地はありませんでしたが。

それでも素晴らしい作品と評価していただいて、大変嬉しく思います。


>八重結界さん

強い者ほど笑顔である、とあきゅーさんが言っておられました。
私も本当にそう思います。


>2号さん

山場であるところのスピーチは、なんだかあっさりしすぎているかなあ、でもあんまり長くてもなあ、
と色々悩みましたが、そう言っていただくと、ほっとします。


>零四季さん

狐と結婚する話っていうと皆引くかもしれないが、東方の世界観なら大丈夫かもしれない。
だって藍様だって狐だし。
と思って今回の話に踏み切りました。


>木村圭さん

イメージの中では、狐は日本昔話にでてきそうな、肌の白い黒髪の女でした。
最初の方に容姿についてもう少し触れておけば良かったですね。
白蓮は私の中では、黒でも白でもない、灰色の人です。
このSSの白蓮さんが腹黒く見えたとしたら、もうそれは私の地が出たとしか。



最後にもう一度。
数多くのSSがあるにも関わらず、拙作を読んでいただいた方々、感想を書き込んでいただいた方々、本当にありがとうございました。
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