慧音プロデューサー

作品集: 最新 投稿日時: 2009/11/21 23:59:28 更新日時: 2010/01/18 03:11:43 評価: 23/26 POINT: 148 Rate: 1.44
「けしからん」

 慧音のお尻のことではありません。

「実にけしからん」

 慧音のお胸のことでもありません。

「騒霊の演奏会は危ないから行ってはならないと、先生は何度も教えたはずだぞ」

 寺小屋の先生である上白沢慧音は、彼女の教え子たちが言いつけを破ったことに腹を立てているのです。
 チョークの香りが漂う放課後の教室に、隠れてプリズムリバー楽団のライブへ行った五人の男の子が並べさせられていました。慧音は腕を組み、端整な顔を怒りに歪めて立っています。

「それを承知で、お前たちは行ったんだな?」

 五人はコクリとうなずきました。瞳は反抗の意思を秘めて、慧音の目を射抜いています。胸にはこの事件の発覚につながったプリズムリバー楽団ファン倶楽部会員バッチ。デフォルメされたヴァイオリン、トランペット、パーカッションが西日に当たって誇らしげに輝いていました。これくらい真剣な態度で授業を受けてくれると嬉しいんだがなぁ、と慧音は心の中でため息をついてから説教を始めます。

「授業で幻想郷縁起を扱ったとき、騒霊の項目で説明したことを思い出してみろ」

 稗田の一族が編集している幻想郷縁起は幻想郷に住む数多くの妖怪を網羅しています。妖怪の恐ろしさを子供たちに教える格好の教材として、慧音はたびたびこの本を授業内で取り上げてきました。もっとも、難解な解説をされた子供たちが、妖怪の恐ろしさをちゃんと理解したかは疑問が残るところでありますが。

「まずはルナサ・プリズムリバー。彼女の音楽には気分を暗くする作用がある。演奏を聴いているうちにどんどん落ち込んでいって、しまいには鬱に陥り何もする気が起きなくなってしまう。次にメルラン・プリズムリバー。こちらはもっと厄介だ。彼女の音楽には感情を高ぶらせる効果があって、聴いていると気分が高揚しすぎて頭が変になってしまうんだ」
「でもっ、三人一緒だとバランスがとれて人間には影響がなくなるって聞きました!」
「俺たちがライブを聴いてても何ともなかったです!」
「それはちゃんと三人そろって演奏していたら、の話だ」

 男の子たちが口々に反論するのを、慧音はぴしゃりと封じました。

「彼女たちの気まぐれで突然、メルラン一人だけの演奏が始まってもおかしくはない。それに、危険なのは騒霊だけじゃないんだぞ。演奏会に来ているのは人間ではない者たちの方が圧倒的に多いんだ。演奏を聴いて我を忘れてしまった妖怪に襲われるかもしれない。演奏会の帰りだって夜なのだから非常に危険だ。お前たちは博麗の巫女のような妖怪を退治する力を持っていないだろう?」

 厳しい指摘に五人の男の子は口をつぐんでしまいました。反省したというより、堅苦しい先生に何を言っても分かってもらえない、と諦めたからかもしれません。

「いいか、今ではめったに起きないとはいえ、人間が妖怪に襲われることは……」

 慧音は口で説教を続ける一方、頭では今回の事件について考えました。嘆かわしいことに、慧音はあまりにも多くの説教をしてきたため、説教と他の行動を両立させることが可能になってしまったのです。
 軽快でノリの良い音楽を売りにしているプリズムリバー楽団は、妖怪だけでなく人里の若衆にも人気がありました。彼らにとって残念なことに、普段は妖怪の宴会などに呼ばれる形で演奏していて、人里へ来るのは年に数回あるお祭りのときだけでした。なので、今までは熱狂的なファンだけが徒党を組んで聴きに行く程度だったのですが、このところ人里の近くでもライブを開くようになってきたのです。おかげで、これまで尻込みしていた人間も気軽に足を運ぶことができるようになっていました。
 慧音は人里を守る立場から、精神に強い影響を与える騒霊の音楽を危険視していました。大人は自己責任ということで許可していましたが、精神的に発達段階である寺小屋の生徒たちには行くことを厳禁していました。
 ライブが身近になったため、再度危険性を確認させようとしていたのですが、その矢先に事件が発生したのです。幸い何事もありませんでしたが、この様子だと言いつけを破る子は他にも出てきそうです。

「……であって、妖怪の賢者の保護があっても油断はならんのだ。分かったな?」
「すぅ……」

 おやおや、意識を説教に戻した慧音の前には見事な鼻ちょうちんが五つ。昨夜は遅くまでライブを楽しんでいたので睡眠不足だったのでしょう。そこへ退屈で長いお説教がきたのでは、眠くなるのは当然かもしれません。

「かぁーっ!!」

 豪快な掛け声に続いたるは寺小屋名物、先生の頭突き。その音に負けじと命蓮寺の鐘に巨大な碇が打ちつけられ、味のある音を響かせました。人里は今日も平和なのでした。








「まったく、最近の若い者は妖怪に対する危機感が欠けている」

 太陽がゆっくりと山際へ沈みゆく空を、慧音がぷんぷん愚痴をこぼしながら飛んでいました。向かう先は霧の湖の近くにあるプリズムリバー三姉妹の屋敷です。
 慧音一人の力では子供たちを止められないと感じたため、思い切ってプリズムリバー楽団と直談判することにしたのです。ライブに人間が出入りしないようにしろ、とまではいきませんが、できれば人里付近でのライブ禁止には同意してもらいたいところです。

「人里の歴史を教えるだけでは、理解してもらえんのかなぁ」

 古くから幻想郷では妖怪が人間を襲い、人間が妖怪を退治する関係が続いてきました。ですが、そんな血生臭い関係はもはや過去のものです。幻想郷が外の世界と隔てられてからは人間が襲われることはほとんどなくなり、その逆もしかり。今では人里へ妖怪が遊びに来て、人間が悪魔の家へお呼ばれする時代になりました。
 慧音はこの状況を喜んではいるのですが、同時に不安も抱えていました。
妖怪と比べて短命な人間は頻繁に世代交代を繰り返すため、すぐに歴史の知識を失ってしまいます。そのためか、人里の人間が過去を忘れて妖怪を恐れなくなってきた、と慧音は感じるのです。特に生まれたときから人間と妖怪が肩を並べて歩く人里を見て育った世代は、妖怪に対する危機感が薄い気がします。事実、花屋の娘に家のお得意様であり、大妖怪でもある風見幽香の恐ろしさを伝えるのには苦労しました。
 妖怪の緊張を保つためにスペルカードルールが導入されましたが、紅白巫女や白黒魔女はともかく、一般の人間には無縁の話です。それどころか、華やかな弾幕戦を酒の肴にしたり、異変ですら生活に起伏をもたらしてくれる祭りのようなものと考えている節があります。
 人間側の不注意な行動がきっかけでバランスが崩れるのではないだろうか、本当に妖怪を信用してよいのか等々、半人半獣の身でありながら人里を守り続けた慧音の歴史がそう警告するのです。
 せめて妖怪の恐ろしさを学んでから妖怪と接して欲しい、そう願いながら教壇へ立つ日々なのですが、現実は理想と離れていくばかりです。永夜異変が発生した際、慧音は歴史を食べて人里を隠そうとしましたが、後になって人に話すと過剰反応だと笑われてしまいました。それに加えて、今度は教え子による言いつけ破りです。ついつい口からため息がこぼれてしまいます。

「今の平和は薄氷の上の平和だというのに……」

 ぼやきは湖上によどむ霧の中へと吸い込まれていきました。一足先に紅葉が始まった妖怪の山が、哀愁を背負って飛ぶ慧音を見下ろしていました。

「ここが三姉妹の屋敷だな」

 あれこれ考えている内に目的地へと到着してしまいました。慧音は沈み気味になっていた気持ちを切り替え、屋敷の正面へと着地します。知識の上で知っていても実際に目にするのは初めてでした。
 紅魔館より小ぶりでくすんだ色の屋敷にはあちこちヒビが入っていて、薄闇に浮かぶ姿はいかにもお化け屋敷といった感じです。騒霊が住んでいるのですから、当たり前なのかもしれませんけど。紅魔館を目立ちたがり屋のお嬢様とすると、こちらは地味で引っ込み思案な令嬢といったところでしょうか。

「夜分に失礼する。私は上白沢慧音、里で寺小屋を……」
「いらっしゃ〜い」
「うわっ!?」

 まさに騒霊ならではの芸当。薄汚れた玄関の前で慧音が声を張り上げていると、扉から女の子の頭がニョキリと生えました。プリズムリバー三姉妹の三女、リリカです。

「待ってたよ〜。ささ、中へ中へ」

 リリカが指を鳴らすと、手入れのされていない扉がきしみながら開きました。そして、慧音の手を掴んで引き入れました。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。私が来ることを知っていたのか?」
「当たり前田のクラッカー!」

 困惑をお供に中へと入った慧音を、盛大なファンファーレが迎えました。

「プロデューサーさんのご到着〜」
「ぷっ、プロデューサー!?」
「プリズムリバー邸へようこそ……おや、里の先生じゃないか」
「いらっしゃい。さすが鴉天狗の仕事は早いわね」

 何やら怪しい単語が飛び出しましたよ。プロデューサーさん、この場合はプリズムリバー楽団専属の音楽プロデューサーでしょうか。音楽プロデューサーとは音楽家の売り込みの交渉や、スケジュール調節、果ては会場のセッティングと多岐にわたる仕事をこなす人のことです。編曲をする場合もありますが、慧音にはちょっと無理ですね。
 笑顔で歓迎してくれるルナサ、メルランとは対照的に、予想外の応対をされた慧音はどんどん慌てていきます。

「評判は聞いているよ。とてもまじめでしっかりした方だと。あなたなら私たちのプロデューサーを任せられそうだ」
「私にプロデューサーをやれと!?」
「ん? 新聞の広告を読んでここへ来たんじゃないのか?」
「し、新聞?」

 長女であり、楽団のリーダーでもあるルナサが手を差し伸べましたが、慧音は握手どころではありません。個性的な帽子が今にもずり落ちてしまいそうです。

「射命丸さんが発行している文々。新聞のことよ。さっき広告の原版を渡したばかりなのに、もうプロデューサー希望者が来たから感心していたのだけれども」

 これはボツ案だけど、と言ってメルランが部屋の隅で小山をなしていた紙の束から一枚持ってきました。その紙には音符が散りばめられた中に“プロデューサー至急求む! 詳しくはプリズムリバー楽団まで”という文字が躍っていました。

「誤解だ! 私はプロデューサーとはまったく関係ない用事でここへ来たんだ!」

 凍符“パーフェクトフリーズ”
 某氷精のスペルカードが発動したかのように、室内の空気が一瞬で凍りついてしまいました。どこからか流れていたファンファーレも消えています。三姉妹は笑顔のまま固まっていますが、目を凝らすと細かく震えているのが分かります。慧音は非常に気まずくなりましたが、子供たちの安全のためにも心をハクタクにして話を続けました。

「その、今日は騒霊の音楽が精神に与える影響についてお話が……」
「人違いなのー!?」
「うっ」

 リリカが可愛らしい眉を八の字に曲げて悲鳴を上げます。悲しげな瞳が慧音の胸にぐさりと刺さりました。

「ぬーん、結局私たちが仕事を続けないといけないか……」
「ルナ姉しっかりして!」

 期待していた分落胆も大きかったのか、宙に浮いていたルナサは放心して落ちていきます。床へ墜落しそうになる姉を、メルランが広告を放り出して支えました。
 胸がズキズキ、良心の呵責にさいなまれた慧音が視線をそらすと、床に落ちてしまった広告が目に入りました。シンプルゆえに誤って伝わることのない内容。三人で相談しながら決めたのでしょう、何度も書き直した跡がうっすらと残っていました。これじゃ駄目、と首を振る姉妹の様子が目に浮かびます。
 慧音は手を固く握り締めました。相変わらず損な性分だよ、この様子を見た藤原妹紅ならそう言って肩をすくめるでしょう。ですが、仕方がありません。慧音は困っている者を見過ごすことができないのです。
 リリカが悲しみのあまり葬送行進曲を弾こうとしたとき、顔を引き締めた慧音が広告を拾い上げました。

「誤解させてしまってすまない。お詫びといってはなんだが、詳しい事情を聞かせてはくれないか?」








 お化け屋敷のソファといえば、埃まみれでクモの巣がかかっていると相場が決まっていますが、案内されたソファは予想に反して清潔で、出されたロシアンティーは生きている者でも舌鼓を打つほどの逸品でした。香り高い風味の中に、ほんの少し混じったはちみつが何とも言えない味を出しています。
 私は緑茶の方が好きなのに、などとのたまった妹を盆で小突いてから、メルランは慧音の向かい側のソファに座りました。ルナサは自室に運ばれて寝込んでいるので、この場にはいません。

「早とちりしてごめんなさい。ちょっと焦っていたものだから……」
「いや、いいんだ。それよりも、何故プロデューサーを?」
「ん〜、自主公演とルナ姉が変に真面目なせいかな」

 紅茶を不味そうに口へ含んでいたリリカがつぶやきました。首をかしげる慧音に、二人はプロデューサーを募集するまでの経緯を語り始めました。

「私たちのような音楽家としては、お客さんには最高の状態で最高の音楽を聴いて欲しいの」
「まあ、そんなの理想だから望むと限りがないんだけどねー。ルナ姉はそれが分からないんだもん」
「ライブの環境を整える仕事、つまりライブのプロデュースは宴会とかお祭りを開いた妖怪や人間に任せていたの。でも、ちょっと事情があって私たちはライブの回数を増やさなくちゃいけなくなったのよ」
「私たちがライブを開きたくても宴会が増えてくれるわけじゃないから、増やした分は自主公演扱い。自主公演だとライブのプロデュースなんか全部ひっくるめて私たちの仕事になっちゃうんだよ。面倒くさいー!」
「叫んだところで仕事がなくなるわけじゃないから、仕方なく三人で分担するしかないの」

 メルランとリリカは交互に話しながら説明していきます。二人とも性格はまったく違うのですが、息は不思議とぴったり合っています。本人たちは無意識で合わせてしまうのでしょうか、姉妹で楽団をやっているだけのことはあります。

「ライブ前に何度も会場へ行って、どこで演奏したら一番見栄えがするか、どの場所の響きが良いだとか調べて〜」
「会場のセッティングや客層の調査もね。冥界だから明るい曲にしたり」
「妖精がたくさん来そうな場所だったら飽きさせないよう楽しい曲にしたり、人里の近くだと精神に影響しなさそうな曲だったりね」
「河童が多そうなときはルロイ・アンダーソンの曲にしたわね。あのガチャガチャ、チーンって鳴る機械を楽器にした曲」
「“タイプライター”だよ。幻想の音を操る力を存分に発揮できるし、何よりもあの曲は私が目立つ!」
「そうそう、三人とも出番のある良い曲よね」
「なるほど……」

 慧音は興味深げに相槌を打ちました。普段生活していては関わることができない分野の知識を知ることができて楽しいのでしょう。カップを口に運ぼうとした手が空中で止まっています。
 ちなみに、幻想郷の歴史は慧音によって編纂されていて、それはつまり慧音は幻想郷で起きた全ての物事を知っていることになりますが、そんな膨大な量の情報を把握していられるのは月に一度ハクタクに変化したときだけです。満月の夜以外の慧音は、空が飛べてちょっと強いだけの人間に過ぎないのですから。

「でも、姉さんは折り合いをつけることを知らなくて」
「凝り性というか真面目過ぎるんだよね。夜遅くまで必死にチケットを配ったり、天狗の新聞に広告を出してもらうよう頼み込んだり。私たちが心配して手伝おうとしても、楽団のリーダーとしての責任が云々、って一人で頑張ろうとするし」
「くたくたなのに練習するから、もう音がめちゃくちゃ。ただでさえ練習時間が減っているから」
「ライブが成り立たなくなっちゃう!」

 リリカはおどけて表現しますが、あまり面白そうではありません。口では何だかんだ言っていても、心の中では姉であるルナサのことが心配なのでしょう。

「だからプロデューサーを募集したと」
「まあ、はっきり言って仕事内容は雑用ばかりなのよね。雑用募集よりはプロデューサー募集ってした方が人が集まりそうでしょ?」
「で、栄えあるプロデューサー志願一号が来たと思ったらこっちの勘違い。気楽になってた分、反動で落ちちゃったみたい。ルナ姉は内向きに内向きに考えてグルグル落ちていく人だからね〜」
「ううっ……重ね重ね申し訳ない」

 ルナサの苦悶の表情が脳裏に浮かんだ慧音はいたたまれなくなって頭を垂れました。慧音の視界からリリカが消えた一瞬の隙に、メルランがどこからともなくトランペットを取り出して妹の後頭部に叩きつけます。

「痛い」
「リリカ、あなたはもっと口に気をつけなさい。でも……」

 不注意な妹をしかってから、メルランは慧音の方に向き直りました。

「慧音さん」
「はいっ!」

 躁の音を操り、自らも明るく活発な性格だと聞く騒霊メルランに真剣な表情を向けられ、慧音は背筋を正しました。少し声が裏返ってしまった分、頬も赤くなってしまいましたが。

「今日この屋敷へ訪ねてきたのも何かの縁。私たちプリズムリバー楽団のプロデューサーをやってみる気はない?」
「恥ずかしながら音楽には疎くて、私はあなたたちの音楽をまったく知らないのだ。そんな私に引き受けろと?」

 乗りかかった船、と大きく書かれた旗を振る死神が慧音の頭に侵入してきました。握った手がジワリと汗ばみます。

「私たちの音楽ならこれから聴けばいいし、そんなに詳しくなくても雑用だから無問題〜」
「人里の守護者。寺小屋の教師。慧音さんの人柄に関する噂はたびたび耳にするわ。誠実でしっかり者、プロデューサーとして最適だと私は思う。これからプロデューサー希望者を待っても、あなた以上の適任者が訪れることはないはずよ。プリズムリバー楽団にとって、恐らくこれが最大で最後のチャンス。見返りは私たちの音楽を好きなだけ聴くことができるくらいしかないけど、引き受けてくれないかしら?」

 慧音は迷っていました。
がっかりさせてしまったという罪悪感も手伝い、プリズムリバー楽団とルナサには同情を感じています。自分が必要とされているのなら、引き受けてもかまわないとも思っていました。
 その一方、引き受けるからには自己満足で終わらせず、しっかりとやりたいとも思っています。これまで音楽に興味を持っていなかったので、音楽プロデューサーという未知の仕事を大過なくこなせるか慧音は自信がないのです。

「私からもお願いしていいかな?」

 逡巡する慧音に向かって、リリカも身を乗り出して頼み込みます。

「本当は私たち二人でルナ姉をカバーしてあげたいんだけど、こっちも自分の仕事で手一杯に近いんだ。楽団のごたごたでお客さんに迷惑をかけるなんてごめん。ベストはやっぱり優秀なプロデューサーを雇うことだと思うんだ。だから、慧音さんにはぜひとも引き受けて欲しいな。だって……」

 ふわりとリリカは浮き上がり、テーブルの上へと移動します。

「私が注目を浴びる前に楽団が潰れるなんて許さないんだから!」

 どうもリリカは一言多いようです。テーブルの上で決めポーズをとったリリカの後頭部へ特大ぐるぐるチューバがしたたかに衝突しました。恐るべき管楽器の怪。

「すっごく痛い」
「自業自得よ」

 頭を押さえてうめくリリカに、特大ぐるぐるチューバを消したメルランはすまして答えました。

「そろそろ返事をいただいてもいいかしら?」
「ああ」

 メルランに促されましたが、慧音は言葉を濁します。どうも慧音の背中にはもう一押しが必要なようです。

「悪いが今日のところは保留にして、家で熟考させてもらえないだろうか。返事は後日……」
「あら残念」
「それじゃあ、メル姉?」
「ええ、リリカ」

 メルランとたんこぶを作ったリリカは顔を見合わせて微笑みました。寺小屋のいたずらっ子を彷彿させる笑顔に、慧音の背中に悪寒が走りました。今日もその問題児にスカートをめくられたばかりなのです。

「……ということで帰らせて欲しいんだが」
「そんなの駄目だよ〜」
「鳴かぬなら、鳴かせてみようホトトギス。イエスと言ってくれるまで帰さないんだから」
「冥鍵“ファツィオーリ冥奏”」
「管霊“ヒノファンタズム”」
「うわぁぁぁぁぁ!?」

 二人の騒霊のスペルカード宣誓と共に、実体化した音符が群れを成して慧音に襲い掛かりました。








「あははっ、とんだ災難だったね」
「笑い事で済む話ではないぞ」

 腹を抱えて笑う親友に、慧音は今日何度目かのため息をついて、八目鰻の蒲焼を食べました。
 プリズムリバー邸を命からがら逃げ出した慧音は、家へ遊びに来た妹紅と一緒に、店主が悪さをしないか見張る、という名目で夜雀の八目鰻屋へと食べに来ていました。この屋台が人里の中へ入るようになったのもつい最近。八目鰻の蒲焼は今、里で最もナウい料理になっていました。普通の鰻と違って独特の味と弾力を持つ肉なのですが、甘辛いタレをつけてじっくり炭火で焼くと、これがなかなか乙な味に変身するのです。

「疲れたらグイッと一杯♪ ため息ついたら幸せ逃げちゃうぞ〜♪」

 意気消沈する慧音の前に、店主のミスティア・ローレライがコップを置いて気前良く酒を注ぎます。

「悩める人へ女将からのおごりよん♪」

 太っ腹なのか、経営能力が欠落しているのか、恐らくこの屋台の場合は後者なのですが、彼女は歌えれば幸せなのでしょう。調子に乗って鳥目にすると痛い頭突きが待っているので、能力は封印して歌っていますが。
 注がれた酒を一口含むと、上品な甘さが舌に絡み付き、口の中に残っていた八目鰻の癖のある風味を消し去ってくれました。舌の上で転がしてから飲み下すと、やや強い酒精がのどを撫でながら流れていきました。

「ん……美味いな」
「山の神様が挨拶代わりにくれたの。八目鰻にぴったりでしょ」

 ミスティアは“Take Five”のメロディーを口ずさみながら、外の世界のものらしいボトルをクルクルと回しました。諏訪の地は昔から酒造で有名ですからね。

「それで、慧音はどうするんだい?」
「どうするって、プロデューサーのことか?」
「それしかないじゃん」

 こちらは熱燗を飲んでいる妹紅が、訳知り顔で尋ねました。どうせ生真面目な慧音のことだから、断りきれなかったかプロデューサーをやる自信がないかのどっちかだろう、と夕食という名の相談に誘われた時点で見当をつけています。

「ああ……ルナサや楽団について聞いている内に人事だとは思えなくなってな。できることなら手助けしてやりたいのだが、寺小屋の運営のこともあるし、プロデューサーという仕事をやれるか不安なのだ。かといって、見捨てるわけにはいかないし……」
「そりゃ人事には思えないでしょうねぇ」
「ん、何か言ったか?」
「いいや、何も」

 妹紅は微笑を隠すように蒲焼を口に放り込みました。
 最高の音楽を聴いてもらうために妥協をしないで身体を壊したルナサと、里や人助けのことになると妥協せず身を犠牲にする慧音。妹紅は二人の共通点にはっきりと気づかないまま行動する慧音が微笑ましく思えるのです。そのお人よしな性分の恩恵を受けている妹紅としては、相談相手になって慧音を支えることで日ごろのささやかなお返しをするつもりなのですが。

「関わってしまったからには楽団を助けてあげたい。何か良い方法はないだろうか?」
「プロデューサーになっちゃえば」
「へっ?」

 妹紅の実に単純な答えに、慧音の動きが止まります。

「あの有名なプリズムリバー楽団のプロデューサーだよ。こんなに面白そうな仕事はめったにないと思うけどな。寺小屋と両立させるのが大前提だろうけど、四六時中楽団に付いて回るわけじゃないんだから、寺小屋が終わった後や休日とか空いてる時間に仕事をすればいいんじゃない。慣れるまで寺小屋は私と暇そうなやつを何人か集めて慧音の代わりをやっておくからさ。とりあえず、気分転換のつもりでやってみるのもいいかもよ」
「気分転換って……そんな軽い気持ちで引き受けてはいけないだろう」
「頭がかたーい」
「いたっ!」

 ほのかに頬を赤くした妹紅は人差し指で慧音の頭を突っつきました。少々力加減を誤ったのか、悩める教師のおでこに爪が突き刺さります。この蓬莱人、相談役を引き受けたのは良いのですが、熱燗を飲んだおかげで早々に酔いが回ってしまったようです。

「何をするんだ!」
「そんな凝り固まった思考しかできないから、慧音は授業を聞いてもらえないんだよ」
「はうっ!?」

 慧音、身体と心にダブルパンチ。慧音だって自分の頭が固いことくらい分かっています。しかし、今更性格を変えるというのも無理な話で、生徒があくびをしていても泣く泣く己を貫くしかないのです。

「ひ、人が気にしていることを……」
「あははー、悪い悪い。でもね、慧音はいつもお堅い教師をやってるんだから、たまにはそこから離れて視野を広げてみるのもいいじゃない。プロデューサーになれば人里の近くでライブを開くな、って意見も受け入れてもらいやすくなるだろうし」
「だが、彼女たちの音楽を理解していない私が、プロデューサーなんかをうまくやれるとは思えんのだよ。もし迷惑をかけたら意見を聞いてもらうどころじゃなくなってしまう」
「大丈夫だって、この心配性め。私が大好きな熱血教師慧音はどこへ行った? 初めての仕事を最初から完璧にこなせる人間なんかいないって。あと、楽団の音楽? 慧音は蓄音機を持ってたよね?」
「稗田家のお古だが……」
「よしよし。じゃあ、私が持ってるプリズムリバー楽団のレコードを貸してあげる。それを存分に聴きなよ」

 これでどうだ! と言わんばかりに灼眼の少女は満面の笑みを近づけました。目が据わっていても、慧音を応援する気持ちは揺らいでいません。一つ一つ不安を消していって、背中を押そうとしているのです。
慧音は何故か、果物を連想させる色になった親友の頬にかぶりつきたくなりました。

「私からもいいかしら〜♪」

 八目鰻をさばいていたミスティアが、調理台から顔を上げました。強引に歌を聴かせているだけあって、話の割り込み方も手馴れたものです。

「私ね、あの三姉妹に売り込みをかけたことがあるのよ。ボーカルいらない? って。そしたら、見事に振られちゃった♪ 今日もボーカル希望者が殺到したらしいんだけど、みーんな断わられたんだって。あの楽団からボーカルのオファーが来るなんてすごいじゃない。ね・た・ま・し〜♪ 私が応援してあげるから、頑張っちゃいなさいよ〜♪」
「慧音が頼まれたのはマネージャーだよ、この鳥頭〜」
「むっ、うるさいわね」

 健康マニアの焼き鳥屋を自称している妹紅は、焼き鳥屋撲滅を目指すミスティアとそりが合わないのかもしれません。しかし、慧音にとって聞き捨てならない情報が紛れ込んでいました。

「二人とも落ち着いてくれ。ミスティア、今日も希望者が殺到したと言ったな?」
「そうよ〜♪ さっき文々。新聞の号外とその続報が飛んできて、集まったファン倶楽部会員が門前払いされてるって書いてあったわ。もう、ボーカルは決まってるんだって」
「だーかーらー、ボーカルじゃないって」

 再び酔っ払いと鳥頭の戦いが始まりますが、慧音の目には何も映っていませんでした。
 プリズムリバー楽団からの期待、守るべき里の人々、酒精、雑多なものが慧音の中をグルグルと渦を巻いています。慧音はそれらから逃れようとしますが、どうやら逃げ道は全て塞がれた後だったようです。それが分かった途端、逃げ回っていた自分が意気地なしに見えてきて赤面しそうになりました。結局、慧音は頭をかいてごまかしました。

「鳥の妖怪ってこんなのばかりなのかね、まったく。それじゃあ、明日レコードを持っていくから……」
「いや、彼女たちの音楽は生で聴かせてもらうことにするよ」
「おおっ?」

 妹紅とミスティアの顔を見合わせ、思わずハイタッチ。自分たちの応援が功を奏したと確信したのでしょう。慧音の感覚としては、背中を押されたというよりも、崖の上から蹴落とされたといったところですが。

「どうも私は基本的なことを忘れていたようだ。誰かが助けを求めているなら、その助けに応えることは義務であろう」
「相変わらずお固い解釈なことで」
「一ヶ月間プロデューサーをやって自分ができるのか見極めてみる。妹紅」
「はいよっ」
「その間、寺小屋を頼む」
「任せといて!」

 胸を叩いて力強く返事をする不死鳥の炎を操る蓬莱人は、これ以上ないほど頼もしく燃え上がっていました……が、その背後に書を捨て町に出よう、明日から体育三昧、といった言葉が輝いている気がするのは、慧音の偏見でしょうか。

「やれやれ……」

 前途は多難ですが、何とか進むべき道は決まったようです。慧音の吐いた息は白くなり、やがて幻想郷の闇に溶けていきました。








 慧音の再訪を受けたプリズムリバー邸の騒ぎようといったら、それは筆舌に尽くしがたいものでした。逃げ出したペットが帰ってきた、どころではありません。それこそ、幽霊屋敷が一瞬にして結婚式場にでもなったかのようです。メルランの躁の音に当てられたルナサが歯でヴァイオリンを弾こうとし、踊り狂うリリカにシンセサイザーをぶつけられる、といった具合でしたから。

「一ヶ月間よろしく。こんなに喜んでもらえるなんて、その……私も嬉しいよ」

 窓が割れんばかりの大音量で喜びまくる三姉妹に慧音は少々げんなりです。幸いなことに、慧音が己の選択を再考し始める前にルナサが正気に戻ってくれました。鬱の音を強くして屋敷中を駆け回っていたベートーヴェンの交響曲第九番第四楽章、通称“歓喜の歌”を静めます。

「ありがとう、慧音さん。これでお客さんに迷惑をかけずに済む」
「でも、寺小屋は放り出しちゃっていいのかしら?」

 姉の音を聴いてもまだ興奮の収まらないメルランが、ルナサの上に乗っかりながら尋ねました。口に気をつけろと妹に注意した彼女はどこへやら。

「寺小屋は親友に預けてある。だから心配無用だ……恐らく」

 一ヶ月間妹紅の言うことをしっかり聞くんだぞ、と引継ぎの説明したときの情景が目に浮かんでしまいます。あの子供たちの笑顔の輝きようといったら。終の別れでもないのに目頭が熱くなってしまいます。
 慧音はそっと未練を拭うと、三姉妹と実務的な打ち合わせに入りました。とはいっても、前々から不安に思っていた通り、慧音はプロデューサーの仕事内容はさっぱりなので、一から教えもらうことになります。

「スケジュール調整とかの説明は後にしよう。今は実際にライブ会場へ行って、どんなことをして欲しいか説明していくのでいいかな?」
「ああ、もちろん。よろしく頼む」
「ここは、いいとも! って叫ぶところだよ〜」
「……はぁ」

 何故かサングラスをかけるリリカ。こちらも気分が高揚したままです。

「落ち着きなさい、リリカ」

 先ほどのお返しとばかりにルナサがコントラバスで殴って止め、プリズムリバー邸の騒ぎはようやく終焉と相成りました。
 結局、ルナサだけでなくメルランとリリカも行くことになり、慧音も含めて四人で三日後にライブが予定されている太陽の畑へと飛びます。

「その袋は?」
「ああ、これはライブのチケット」

 途中、慧音がいつの間にかルナサの手元にあった袋について質問しました。中を少しだけ開いて見せてもらうと、確かに“プリズムリバー楽団”と印刷されたチケットが詰まっています。

「会場を提供してくれる妖怪にお願いして、配ったり売ったりしてもらうの」
「普段は宴会とかの主催者がやってくれるけど、自主公演はチケット管理もこっちの仕事だからね。今度からは慧音さんにお願いしたいな〜」
「分かった。あと、慧音さんはよしてくれないかな。慣れない呼ばれ方はどうも恥ずかしい。その代わり、私も君たちを名前で呼ばせてもらってもいいかな?」
「いいともーっ!」

 リリカがクルクルと回転しながら飛ぶ先に、ライブ会場である太陽の畑が見えてきました。この太陽の畑はすり鉢状の草原で、夏の間は無数の向日葵が一面に咲いて、それはそれは見事な光景が広がるのです。秋が深まる現在は、夏を謳歌したヒマワリの姿は見えませんけれども、代わりに秋の風物詩、ススキの穂が黄金の海のごとく波立っています。
 その大海の中心にライブ会場の提供者である風見幽香が浮かんでいました。どうやら、遊びに来ている妖精たちにススキの穂で人形を作ってあげているようです。

「そうだ、太陽の畑はあの風見幽香の活動拠点だった……」

 花も凍りつく微笑の持ち主。幻想郷の中でも最古参の妖怪として知られ、その絶大な力を恐れられている幽香の存在に慧音は息を飲みます。三姉妹の方は慧音の動揺に気づかず、次々に幽香の前に降り立って気さくに声をかけました。もし、三人が寺小屋の生徒だったら、慧音は悲鳴を上げて止めに入っていたでしょう。

「どうもー!」
「毎度、プリズムリバー楽団です」
「あら、いらっしゃい」

 幽香は穂を編んでいた手を止め、突然現れた騒がしい集団に微笑を返しました。幻想郷縁起に載っている絵とは似ても似つかない優しげな微笑みです。

「ライブの打ち合わせに来ました。これ、お願いします」
「ご苦労さま。確かに受け取ったわ」

 特に怖がる様子もなくルナサはチケットが入った袋を手渡しました。袋を受け取る幽香は、笑顔がまぶしいお姉さんにしか見えません。

「風見幽香は強者しか相手にしない。風見幽香は強者しか相手にしない……」

 幻想郷の歴史に触れてきた慧音は、これまで幽香がどれだけ暴れてきたか嫌というほど知っています。なので、普段は極力関わらないようにしてきたのですが、今はいつまでも遠くから見ているわけにはいきません。怪しい呪文を唱えることで勇気を総動員し、ルナサと談笑を始めた幽香へと近づいていきます。

「あなたは新人さん? ついにボーカルが揃って新生プリズムリバー楽団始動かしら?」
「いや……今日から楽団のプロデューサーをやらせてもらっている上白沢慧音だ。よ、よろしく」
「まあ、プロデューサーさんなの。私は風見幽香、よろしくね」

 幽香は三姉妹に向けたものと同じ微笑を、慧音にも向けてきました。ただ違っていたのは、全てを見透かすような瞳でジッと見つめてきたことです。思わず辞世の句を読んでしまいそうなプレッシャーを感じ、慧音は生きた心地がしません。

「なっ、何か?」
「……ううん、何でも。それじゃあ、用があったら声をかけてね」

 やがて幽香は満足したのか、妖精たちの中へ戻っていきました。外見が幼い妖精の前にすると微笑む幽香はまるで聖母のよう、との表現は少々オーバーでしょうか。

「初めての仕事だからって、そんなに硬くならなくてもいいのに〜」

 フワフワ漂っていたリリカに声をかけられ、ようやく緊張から開放された慧音はドッと疲労感に襲われました。心の中をのぞいているような赤い瞳に、一日分の体力を吸い尽くされてしまった気分です。

「はぁ……あの風見女史がどんな妖怪なのか知っているか?」
「んー、花が咲きまくった異変のときは少し怖く感じたけど、ライブの協力者としては良い妖怪だと思ってるよ〜」
「彼女の前だとお客さんもめったにハメをはずさないし、この草原を滅茶苦茶に踏み荒らさない限り怒りもしない。長生きしているだけあって音楽の教養もあるし、チケットだって頼めば配ってくれる。それにね……」

 思い出したかのように吹き出た汗を拭う慧音に、メルランがウィンクを一つ。

「聴き手がどんな妖怪でも、例え野に咲く花であっても、楽団の音楽を楽しんでくれるのなら私たちはハッピーなのよ」
「……そういうものなのか」
「そういうものなの」

 メルランが何を考えているのか、さとり妖怪ではない慧音には分かりません。しかし、もし何を考えているのか分かったとしても、それを理解することは慧音にはできないでしょう。自分の常識が通用しない集団の中に放り込まれ、幻想郷にいながら異邦人になったかと錯覚してしまいそうです。

「山の巫女は外の常識を投げ捨ててしまったらしいが、私もひとまずは忘れるべきなのだろうか。それとも……」
「おーい、会場のセッティングをするから来てくれない?」
「すまん、すぐ行く!」

 ルナサに呼ばれ、立ち止まっていた慧音は駆け出しました。

「立ち位置はいつもの通りここで、外向きに円を組んでゆっくり回りながら演奏して……」
「ふむふむ」
「今回は太陽の畑だからそんなに注意しなくていいけど、他の場所だと私たちが演奏する場所を確保しておいてもらいたい」
「今までは姉さんが立ち入り禁止の札を立てていたんだけれど、たまにライブが始まる前に酒盛りを始めて、札が見えなくなっちゃうお客さんがいるのよね」
「うむ、心得た」
「それと、ライブの開演が夕方だからスポットライト役の、光の妖精を探して手なずけておかないと……」

 セッティングを決めていくルナサの言葉を聞き逃さないように慧音はメモを取ります。四人はすり鉢の底、つまり太陽の畑の中心部に集まっていました。どの方向を向いてもススキの海、秋の虫の大合唱が聴こえてくる何とも気持ちの良い場所です。

「曲目は……そうだな、秋を感じさせる“フォールオブフォール”を出だしに、次は太陽の畑の定番“今昔幻想郷”、妖精が飽きないように“動物の謝肉祭”の中から一曲……」
「ねーねー、“スーダラ節”やろうよ」
「それはない」
「えー、ケチー!」
「“スーダラ節”は宴会のときにしなさいよ」
「むむむ……」

 セッティングは何とかなっても、曲目となると慧音はお手上げです。曲について話している三姉妹は、まるで宇宙人たちがキラキラ星語で会話をしているよう。仕方がないので今は名前だけメモして、後で実際に演奏を聴かせてもらうことにします。

「締めは私たちの十八番でアンコールがきたら“おてんば恋娘”、これでいい?」
「異議な〜し」
「うー“スーダラ節”」
「リリカはしつこい。よし、曲目が決まったから家に戻ってパンフレットの準備。これは時間と手間がかかるから、ぜひ慧音にやってもらいところだけど」
「その前に君たちの音楽を聴かせてくれ……」

 慧音の悲痛な叫びは半分だけ聞き入れてもらえました。屋敷に戻った慧音は、練習室にイスとテーブルを持ち込ませてもらって、プリズムリバー楽団の練習を聴きつつパンフレットを作ることになったのです。
 練習室内は本棚で楽譜がうなり、壁には慧音でも知っているフワフワ頭のモーツァルトから、妙な帽子をかぶった痩せ気味の男性まで多くの作曲家の写真が飾られていて、いかにも音楽の部屋といったインテリアなっています。

「これくらいあれば参考には十分かしら?」
「別に同じものを作る必要はない。作り手が変われば雰囲気も変わってしまうことは当然だから、慧音の好きなように作ってくれればいい」
「質問があれば曲の合間にお願い。あと、練習中はなるべくお静かに〜」
「善処する」

 でん、と眼前に置かれた今までのパンフレットの山が楽団の歴史を感じさせます。それらに目を通しつつ慧音は筆をとり、三姉妹は各々楽器を手に音を合わせます。どうやら手を使わずに楽器を演奏する程度の能力には頼らないようです。

「まず“フォールオブフォール”と“今昔幻想郷”を続けてやろう。メルランは楽しみすぎて音をはずさないように」
「はいはい」
「リリカは譜面の音を正確に弾くだけじゃなくて、もっと曲のイメージを大切にして」
「む〜、分かってるよ」
「最初は紅葉が舞い落ちる滝を、曲が移ったらススキと戯れる幽香さんをイメージ。じゃ、いくぞ」

 プリズムリバー楽団はノリの良い音楽で有名、と慧音は評判を耳にしていただけであって、じっくりと聴いてみたのはこれが初めてでした。曲の出だしは評判に違わずノリが良く、それでいてどこか秋の寂しさを思わせます。

「紅葉が舞い落ちる滝、なるほど」

 慧音がつぶやきました。言われてみれば、確かにそのような光景がイメージできる気がします。

「リリカ、もっと歌って」

 目を閉じてヴァイオリンを弾くルナサが短く注意します。
 ヴァイオリンが悲しく、トランペットがひらひらと、そしてピアノが全体を調和させて大きな滝を作り出します。全体に漂う寂しさも終盤になるにつれ、最後の輝きを見せる植物の生への賛美に昇華されていきました。

「……っと、いかん」

 曲名を書いていたはずの筆は、いつの間にか椛の葉を描いていました。
 紙を取り替えている内に滝に落ちるようにして“フォールオブフォール”が終わり、次の曲になりました。秋というテーマは続いているのですが、今度はどこか妖しげな香りがします。

「メルラン、浮かれすぎ。速くなってる」

 慧音は不安になってきました。どうもこの部屋の中に幽香がいて、微笑んでいるような気がするのです。そんなはずはない、と周囲を見回しますが、厳めしいベートーヴェンがにらみ返してきただけでした。
 後半になるにつれてトランペットがこれでもかと怪しさを強調し、あの赤い瞳を脳裏に想起させます。結局、慧音を総毛立たせたまま、怪曲“今昔幻想郷”は去っていきました。

「ふぅ……まあまあ、かな」
「はいは〜い! “今昔幻想郷”はメル姉を暴れさせた方が盛り上がると思います!」
「夏はともかく、今の季節はそこまでしなくていい。ススキじゃなくてヒマワリになってしまう」
「私はどっちも楽しいから、ヒマワリでもかまわないわよ。慧音は楽しんでくれたかしら?」
「あ、ああ……」

 茫然自失としていた慧音は、メルランの透き通った瞳にのぞきこまれ、ようやく頭にかぶっていたはずの帽子を胸の前で抱いている自分を発見しました。慌てて帽子をかぶり直しますが、どうも心が浮ついて感想どころではありません。
 赤面したり髪をいじったりする慧音を見て、メルランは少し不安げに眉を曲げます。

「楽しめなかった?」
「いやいや、そうじゃない! そうじゃないんだが……楽しむどころか恐ろしくなってしまって。こんなことは初めてだよ」
「それは幽香さんの曲だからだろう」

 必死に言葉を探す慧音に、分かるようで分からない答えをルナサが差し出します。

「風見幽香の……?」
「そう。音はその持ち主の本質を耽美的に表す。“今昔幻想郷”は一見明るい花のようだが、美しい花弁の下には底知れぬ恐怖が隠れている。実に妖怪らしい曲じゃないか」
「音楽家は自分を媒体にして聴衆と音楽をつなげるんだよ。だから、私たちの演奏によって慧音と“今昔幻想郷”がつながって、向こうから色々と語りかけられたのかもね〜」
「一番媒体になりきれてないリリカが偉そうに言わない。この前だって魔理沙の弾幕研究書に“お前の演奏は技術だけで心に響かない”と書かれたそうじゃないか」
「むきーっ、私の身体は超絶技巧のリストタイプなのっ! 姉さんたちみたいな堅苦しい優等生ベートーヴェンや夢遊病患者シューベルトよりいいじゃない!」
「派手で目立つだけじゃない。技術至上主義は危険よ。音が死んでハッピーになれないわ」
「いっつも二対一で卑怯だ〜!」
「そうなのか……」

 歴史家が知らない世界を、三人の音楽家たちが騒がしく見せてくれます。一度に多くの情報を詰め込まれて、慧音の頭はオーバーヒートを起こしていますが。

「私たちって演奏するときは呼吸するように一体化できるのに、演奏論になるとバラバラになっちゃうのよね。それは置いておいて……驚いてばかりだけど、慧音だってちゃんと曲を持ってるわよ」
「私も?」
「どれどれ……“懐かしき東方の血”と“プレインエイジア”? ルナ姉、やってみようよ!」
「時間がないのに……一回だけだぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! どうして私の曲だと分かるんだ!?」
「作曲家はこの世にあふれる音を拾い集めて曲を作る。私たち騒霊はそれにあやかって、慧音の中を流れる音をまとめただけ」

 あれよあれよという間に、曲を調べられて演奏の準備ができてしまいます。慧音の前に浮き上がっている三姉妹は、あのルナサでさえ嬉しそうです。初めての曲にワクワクしてしょうがないのでしょう。演奏を聴く側の慧音は、素っ裸にされてしまうようで気恥ずかしそうです。

「さっきと同じように二曲続けて、くれぐれも無茶をしないように」

 頭の中に楽譜ができているのか、三人とも楽器だけをかまえています。ルナサの合図でまず“懐かしき東方の血”が始まりました。

「あはっ! 慧音の曲、歴史を感じさせてすごく良いわ〜!」
「あんまり批評しないでくれ。その、何だか恥ずかしい」
「いいじゃん、楽しいんだもん!」

 始まった途端、どこか懐かしいフレーズが流れ、メルランとリリカが嬉しそうに感想を飛ばします。ピアノのリリカはともかく、トランペットを吹くメルランはそんなに話して大丈夫なのでしょうか?

「これって長生きした妖怪にウケるんじゃない? 幽香さんとか!」
「懐古的だけど、今でもしっかり通用する曲。すごいな」

 ルナサも感じ入っているようです。曲はその持ち主の本質を表す、と言われているので、慧音は何か語られるたびにうつむいて頬をさらに赤くします。
 三回もループしてようやく“懐かしき東方の血”が終わり、続いて“プレインエイジア”に入ります。

「おおぅ、真面目な曲。ルナ姉みたい!」
「姉さんより真面目じゃない? というか真剣そのもの。でも、ずいぶんと慌てているわね」
「“プレインエイジア”、幻想郷の一大事じゃー! って駆け回ってる感じかな……わぉっ、この難しい部分いいなぁ。私にぴったりじゃない!」
「リリカ、はしゃぎすぎないで。ただでさえ忙しい曲なんだから」

 リリカの小さな指が水を得た魚のように動き回り、技巧の要求される箇所を難なくこなしていきます。まるで慧音の難解な解説を優しく噛み砕いてくれているようです。
 うつむいている慧音は、ぎゅっと握られたスカートのすそを見ながら、自分の曲を聴いていました。やがて演奏が終わり、三姉妹が恍惚とした表情で汗と歓喜を散らすと、慧音は自らに言い聞かせるようにポツリとつぶやきました。

「古臭くて、焦っている。それが上白沢慧音……」








「うわっ、すごい硬くなってる。慧音の頭みたい!」
「余計なことは言わなくて……あふぅ」
「ぷっ」
「これ、笑うな」

 慧音は布団の上にうつぶせに寝て、彼女の家へ遊びに来た妹紅にイイコトをしてもらっていました。

「あぁ〜、良い……」
「しっかし、どうしたらこんなに硬くなるんだろう。頭のせいじゃないよね?」

 もちろん、マッサージですよ。妹紅は指だけでなく、ひじまで使ってカチカチになった慧音の身体をほぐしていきました。

「プロデューサーを頑張っているから、と言ってくれぇ……」
「はいはい、そうだったね。今日もライブのプロデュースお疲れ様でした」

 結果的に慧音初プロデュースのライブは大成功でした。生来の真面目さと、初仕事という緊張感が相乗効果をもたらしたのか、ライブは大喝采を受けて幕を閉じたのです。
 光の妖精は頭突き教育のおかげで完璧なスポットライト役になってくれましたし、観客は天狗に印刷してもらったパンフレットを片手にお行儀良く演奏を聴いてくれました。ルナサが“段取りができすぎている。もっとハプニングが起きる隙間がないといけない”と注文をつけたほどです。
 その後もプリズムリバー楽団は白玉楼、妖怪の山、無縁塚、博麗神社と順調にライブをこなすことができました。この成果に慧音はホッと胸をなでおろしたいところですが、あいにく頑張りに比例して身体がどんどん硬くなって、それどころではないようです。それに、何やら心中も穏やかではないようですし。

「もこ〜」
「ん?」
「寺小屋は学級崩壊してないか〜?」
「みんな良い子で授業を受けてくれるよ。私の体育はもちろん、永琳の化学実験は興味津々、輝夜が話す源氏物語だって居眠りせずに聞いてくれるんだから」
「そうかぁ……」

 暇人が集まっただけなのに、やたらと豪華な教師陣です。休職中の慧音は感嘆とは異なるため息をこぼしました。

「悪い子にスカートはめくられてないか〜?」
「私はもんぺだよ」
「そうだったなぁ」
「胸なら触られたけど」
「……あのいたずら小僧、手遅れになる前に頭突いて矯正する。絶対にする」
「手加減しなよ。ほいっ、これで終わり」

 音楽家は演奏中に法悦の境地に達する、言ってしまえばエクスタシーを感じることがあるそうですが、マッサージを受けた慧音もそれに近い状態なのでしょう。妹紅の技によって身体が溶けてしまい、布団と一体化してしまいそうです。

「ふぁぁ……助かったよ、ありがとう」
「どういたしまして。何だか疲れと一緒に魂も抜けちゃったみたいね」
「かもしれんなぁ」

 魂が抜ける。今の慧音にはぴったりの表現かもしれません。

「はぁ……妹紅」
「ん?」
「もし、私が教師を辞めてプロデューサーを続ける決心をしたら、そのときは寺小屋を頼むぞ」
「はいはい……って、ええっ!? な、何言ってんの!?」
「私は真面目だぞ」

 真面目な顔をして突拍子もないことを言うものですから、妹紅の驚きが倍増してしまいます。驚きのあまり飛び上がって神棚に頭をぶつけたのに、それに気づいていないくらいです。

「プロデューサーの仕事に慣れたら、寺小屋と両立させていくつもりじゃなかったの!?」
「今のところプロデューサーとしてうまくいってるし、プリズムリバー三姉妹からは感謝もされている。寺小屋の子供は妹紅たちに教えられて喜んでいる。全てが回っているじゃないか。だったら、あえて教師に復帰する必要はないと思ってな」
「ちょっとちょっと! 慧音からお堅い教師を取ったら、何が残るのっていうのさ!」
「……その言い方は気になるが、まあいい。里の守護者に、幻想郷の歴史家、今はプリズムリバー楽団のプロデューサーという肩書きも付く。それに、私は教師失格だ。音楽家は自らを媒体にして聴衆と音楽をつなげると言っていたが、教育者だって知識と生徒の間の架け橋になるべきじゃないのか」

 銀色の髪を振り乱してちょっと変な角度から問い詰める妹紅に対し、慧音は仕事の合間に考えていたことを淡々と語っていきました。慧音が教師を辞める旨を、布団から起きず水死体のように話すのですから、二重の恐怖で妹紅は震え上がりました。

「私はどうも架け橋になれていない。教え方はつまらなくて、その内容だって、“妖怪に気をつけろ”や“妖怪は恐ろしいんだ”と言ってきたが、自分の古臭い曲とやらを聴いてみたら、本当に正しいことを教えていたのか確証がなくなってしまったよ。もう妖怪への恐怖を教えなくても、幻想郷の人々は大丈夫なのかもしれん。とにかく、迷いがある私に教師の資格はないさ」

 自分の思いが子供に伝わっていないのではないか、教えていることが時代にそぐわないのではないか、という不安。そして、“懐かしき東方の血”と“プレインエイジア”を聴いてネガティブな解釈をしてしまったことが、とどめになったのでしょう。
 胸に溜まっていたものを全て吐き出すと、慧音は起き上がって首を回しました。気分は高揚したままでしたが、身体の凝りほぐされたおかげか、急に睡魔が襲ってきました。また布団に寝転がろうとしましたが、あいにくと妹紅はそれを許してくれませんでした。

「けっ、慧音の……慧音のバカッ!」
「ぐあっ!?」

 妹紅渾身の必殺技、先生の頭突き蓬莱バージョン。それほど硬くない頭を、リズミカルにお堅い休職中の教師に叩きつけていきます。

「アホ! ドジ! マヌケ! おたんこなす! どてかぼちゃ! 輝夜の家庭教師でべそ!」
「痛いっ! 妹紅っ、止めてくれ!」
「もっと自分を信じろ、石頭!」
「妹紅……?」

 慧音に馬乗りになって妹紅は頭突きました。唇を噛み締め、今にも泣きそうな顔をしている妹紅には何が見えているのでしょうか。
竹林へ様子を見に来るお人よしな里の守護者? やたらとうるさい寺小屋の先生? 永夜異変のとき“あの人間には指一本触れさせない!”と何やらかっこいい台詞を言い放ったハクタク? いえいえ、蓬莱人になって千と数百年、ようやく得たちょっと堅苦しい親友、上白沢慧音です。

「慧音の思いは子供たちに伝わってるよ。だって、あのお姫様にぜんぜん見えないぐうたら妖怪の輝夜にだって、ちゃんと挨拶してたもん。寺小屋の生徒だけじゃなくて、里の人間は妖怪を敬ってるって私は知ってるもん! 慧音はいつも言ってたよね、“妖怪は恐ろしいが、礼儀正しく接したら必ず優しくしてくれる”って。慧音の教え子はみんなその言葉があったからこそ、妖怪への礼節を守っているって私が保証する!」

 最後に一発だけ軽くコン、と頭突き。妹紅と目が合います。同じ赤い瞳でも、幽香の恐怖の赤とは違って、暖かい炎の赤です。

「でも……でも、私は慧音の選択を尊重して助言だけにする。力ずくで止めれば、それは輝夜との殺し合いを止めない、優しい慧音への侮辱になるから」

 言いたいことを全て言い切ると、妹紅は慧音の上へ重なるように倒れました。しばらく慧音は放心していましたが、親友の重さに気づくとその頭に手をやり、夜空の満月を溶かしたような髪を優しくなでました。

「頭に響く助言をありがとう」
「……私は教師をやってる慧音の方が好きだから」

 耳元でぼそりと告白されました。若々しい竹と妹紅の匂いがしました。とても落ち着く匂いです。

「すまんな、思い込んだら突っ走ってしまう性格で」
「もう慣れた……つもりだった」
「約束した一ヶ月間にはまだ時間があるから、期限一杯考えてみる。それで出した結論は、恨まないでくれよ」
「変な結論だったら絶対恨む」
「まいったな。なら、助言ついでに私の曲の感想も頼む。三姉妹の感想と自分の解釈を合わせたら、妙な方向へ行ってしまった。妹紅の感想も入れたら良い具合になるかもしれない。今度、プリズムリバー邸に招待するよ」
「お安い御用さ……とはいっても、感想は言うまでもないと思うな」

 妹紅は慧音の顔が見える位置まで起き上がると、ニカッと笑いかけます。

「だって、慧音の曲なら間違いなく素敵な曲に決まってるじゃん」

 まだ曲を聴かせてもいないのに、慧音は顔が真っ赤になっていました。








「ライブの成功を祝って、乾杯」
「乾杯!」
「かんぱ〜い」
「乾杯」

 自身の進むべき道を決定するまでには時間の猶予があります。しかし、それ以外に慧音には至急、やらなければならないことが存在していました。人里付近でのライブ禁止。慧音をプリズムリバー三姉妹の下へ向かわせた張本人でもあります。
 プロデューサーとなってから忙しい日々が続き、さらに人里から離れた場所でのライブばかりだったので、慧音は楽団に相談していませんでした。ですが、もう先送りにもできません。そこで幻想郷の伝統に従って、酒の席での意思疎通を図ることにしました。つまり飲みニケーションというわけです。
 今は地底の旧都でのライブから帰ってきて、プリズムリバー邸で打ち上げを行っているところ。夜道で通りがかる客をてぐすね引いて待つ夜雀のごとく、慧音は機会をじっと待ちました。

「せっかくノリノリの鬼がいる旧都だったのに、スーダラ節を飛ばすなんて〜。次こそはスーダラ節をやるんだからね!」
「はいはい」
「次は守矢神社の宴会に呼ばれてるからそこでやろう。それが終わったら、また自主公演をしようと思うけど、新しくできた命蓮寺はどうだろうか?」
「お寺ライブ、いいねぇ。私は賛成〜」
「そうね、人里の近くは最近やってなかったし、ちょうどいいかも」

 来た! 慧音の目が妖しく光を放ちました。

「そのことなんだが!」

 勢い良く立ち上がったので、手にしていたコップから梅酒がこぼれてしまいました。けれども、慧音にはそれを気にしている暇はありません。何事かと話を中断した三姉妹に、人里付近でのライブの危うさを説いていきました。
 力説が終わった後に残ったのは、ルナサの糸目、メルランの困ったような笑顔、少し不満そうに帽子をいじるリリカでした。

「子供たちの精神への影響、ね。慧音の危惧していることは良く分かった」
「じゃあ」
「いくら慧音プロデューサーのお願いでも、それは無理なのよ」
「……理由を聞かせてくれないか?」

 自由気ままに活動している騒霊にとって受け入れがたい提案であることは、慧音も承知していました。なにせプロデューサーとして行動を共にしたのですから。だからこそ、相手が納得してくれるまでとことん話し合うつもりです。
 一方の三姉妹も慧音の持つ曲を聴き、プロデュースされることで彼女がどのような性格であるか大まかには把握していました。ただでは引いてくれないと思い、ルナサの目がさらに細くなります。

「はて、何から話したものか」
「探偵は“さて”から解説を始めるんだよ。ルナ姉やり直し〜」
「そうやって姉さんに全部押し付けようとしない。私たちが思いを伝えるとしたら、これしかないでしょ?」

 そう言ってトランペットを取り出すメルラン。

「それもそうだな」

 うなずいてヴァイオリンをかまえるルナサ。

「うぇ〜、あの曲好きじゃないのに」

 面倒くさそうにシンセサイザーを出現させるリリカ。慧音がコップを置き、準備は完了です。

「私たちが騒霊だということは分かっているわね?」
「ああ、もちろん」
「花がいっぱい咲いた異変のとき、私たちも浮かれてあちこちで演奏しまくったんだ。それで幽香さんとか色々な人妖に会ったんだけど〜」
「嫌なやつにも会った」

 口上が終わって儚くも力強いメロディーが流れ始めます。四季の花が無節操に咲き乱れる中、威厳を崩すことなく咲き誇っている桜を思わせる“六十年目の東方裁判”。

「ヤバダバドゥーだっけ? 原始人の掛け声みたいな名前の説教魔」
「四季映姫・ヤマザナドゥ様に会ったのか?」

 幻想郷担当の閻魔様、四季映姫・ヤマザナドゥはプライベートな時間まで説教に費やすことで有名です。季節感なく花が咲いた六十年周期の大結界異変の際も、無差別にありがたい説教をして回り、大いに迷惑がられたそうです。

「あの閻魔に演奏を聴かせたら、拠り所が失われた霊は暴走するか消失するかのどっちかだ、と言われたのよ」
「最初は何言いやがんだこのやろー! って怒ったんだけど……」
「彼女の説教は真実だった」

 曲調は次第に本来のものとは異なり、ルナサのソロかと聞き間違えるほど暗くなっていきました。締めは消え入るようなため息のアンサンブルです。

「半年くらい前からかな、手を使わずに楽器を演奏する程度の能力をうまく使えなくなったの。近頃ではもうライブで聴かせられないほど悪くなってる」
「慧音の前で能力を使って見せたことも、ほとんどないはずだよ」

 言われてみればそうです。慧音がその能力を使ったところを見たのは、最初に屋敷へ迎えられたときのファンファーレくらいです。

「能力だけじゃなく、体力も低下してきている。前は一週間演奏し続けても疲れなかったのに、今では会場の準備をしただけでベッドに倒れこむ始末だ」
「プロデューサーを募集したのもそのため」
「四季様は……四季様は説教の中で解決法のようなものは言ってなかったか? あの方は相手のことを考えて説教をしてくれるはずだが」
「拠り所が失われて存在が不安定になっている。楽器を新しい拠り所と思っているようだが、存在理由をもう一度考え直せ、くらいしか。他は墓へ行って演奏しろだの、目上の人を敬えだの別々に言われただけ」
「私たちは音楽で頑張ってきたのに、全否定するようなこと言うんだもん。腹が立っちゃったよ。それで消失が始まってからも、がむしゃらになって音楽を聴かせてきたんだけど」
「自主公演まで増やしても、結局あの閻魔の説教が正しかったことを証明しただけだったよ」

 悔しそうにリリカがシンセサイザーをなでました。ルナサは普段より少し暗いだけのように見えますが、右手に持ったヴァイオリンを弾く弓が曲ってしまいそうなほど強く握られています。

「今まで相談しなくてごめんなさい。私たちの問題だったし、素晴らしいプロデュースのおかげで全てがうまくいってたから、消失もいつかは止まるんじゃないかなって甘く考えてたみたい」
「どうして謝るんだ。私だって気づくことができなかったのに……」

 陽気なメルランに似つかわしくない悲しげな笑顔をされて、慧音は反射的にそう答えていました。三人とも音楽家として誇りを持っている分、消失を止められない現状がやるせないのでしょう。
 慧音もまた後悔の念に襲われています。楽団の危機を救ったことに満足して、存在の消失という真の危機に気づけなかった自分に怒りさえ湧いてきます。はっきり言ってしまえば、どれほど注意していても慧音はそれに気づくことができなかったでしょう。それが分かっていても、悔いて自分に怒りを向けてしまう。上白沢慧音とはそういう半人半獣なのです。

「でも、私たちにとっての新しい拠り所は楽器か音楽しか考え付かないわ。多くの人妖に音楽を聴かせるためにも、今は人里やその近くでライブを禁止するわけにはいかないのよ」
「ライブ禁止のことは忘れてくれ。本来ならば私が会場を見回を強化して、子供がいたらつまみ出せばいい話だったから。加えて精神に影響を与えにくい曲を選択してくれればいいが……それよりも、失われてしまったという拠り所のことを聞かせてくれないか?」
「聞いてどうする?」

 ルナサが髪と同じ黄金の瞳を向けてきましたが、気にしていられません。安っぽい同情だと思われてもかまわない、そんな勢いで慧音は答えます。

「私も消失を止める方法を考える。プロデュースする相手が消えてしまったら、私は失業してしまうからな」

 言ってから、我ながらキザな言い回しだったか、と恥ずかしくなってしまうところが生真面目な慧音らしいです。

「……嫌だ、と言ったところで素直にうなずく慧音じゃないからな。いいだろう」
「ありがとう」

 じっと見つめていたルナサは、やがて肩をすくめて許してくれました。それからヴァイオリンを持ち直し、妹たちを確認します。

「よし、レイラの曲を演奏しよう。二人ともいいか?」
「オッケーよ。ほらほら、泣いてないで気持ちをハッピーにしなさい」
「うぐっ」

 耳元でトランペットを軽く吹かれて、リリカの身体がビクリと跳ねました。

「私たちの可愛い可愛い妹の曲を演奏するんだから、沈んだ気持ちで演奏したらあの子が悲しむわ」
「……泣いてなんかいないよ」

 袖でグイッと顔を拭けば、狡猾そうなリリカに元通り。鍵盤に優しく指を置き、音をつむぎ出していきます。慧音が聴いたことのない音でした。

「物語の出だしはいつだって同じ。それがハッピーエンドであろうとなかろうとね……昔々あるところに、プリズムリバーという貴族がいました」
「当主のプリズムリバー伯爵、その奥さんと四人の娘たちは幸せに暮らしていたのよ」
「しかし、伯爵が偶然手に入れてしまったマジックアイテムにより、幸せな家庭は崩れてしまう」

 軽やかなピアノと幸せそうなトランペットによって作り出される家族の光景。それが暗いヴァイオリンによって一瞬でかき消されてしまいます。

「東洋からはるばる運ばれてきたというマジックアイテムは、無情にも伯爵とその妻の命を奪い去ってしまった」
「深い悲しみに包まれる娘たち。ようやく悲しみを乗り越えた先に待ちかまえていたのは、伯爵家の富を狙う親族の群れだったわ」
「財産を奪うために繰り返される養子縁組。無力な姉妹はバラバラに引き裂かれた。それだけでなく、末っ子のレイラは……」
「度重なる不幸に幼かったレイラの心は耐え切れなかったの。ああ、かわいそうなレイラ! 大好きだった歌も歌えない身体になってしまって!」
「あの子は親族に引き取れることもなく、相続権を剥奪されて施設に送られた」

 交互に主張するヴァイオリンとトランペット、沈黙するピアノが曲をよりいっそう不安定なものにして、それを聴いている慧音の心に悲鳴を上げさせます。まるでレイラの心のように壊れてしまう、と。

「ある晩、姉たちに会いたい一心で施設を抜け出したレイラは、夜道を駆けて屋敷へと戻ったの」
「懐かしの我が家に人影はなく、空っぽの闇だけがそこにあった」
「いいえ、不幸を呼び寄せたマジックアイテムだけが輝いていたわ。まるで一筋の希望のように」
「誘われるようにしてレイラは元凶に触れてしまう。そして……」
「姉たちと再会したんだっ!」

 刹那、音が爆発します。
暗く嫌なものを振り払うため、三人の楽器が狂ったように音を生み出したのです。無秩序なようでいて、一つの方向へ流れる音。全ては愛するレイラへ。

「騒霊というまがい物に過ぎないけど、妹を思う気持ちは誰にも負けない三人の姉が戻ってきた」
「幸せな日々と一緒にね」
「それだけじゃない、あの素晴らしい歌声だって!」

 やがて音の奔流は混じり合って、三姉妹の中心で一つの形となります。慧音には、それが姉たちに囲まれて微笑んでいる少女に見えました。ただの幻想かもしれません。ですが、この曲が演奏されている限り、少女はプリズムリバー三姉妹と共に存在するのです。

「マジックアイテムの故郷である幻想郷に、屋敷ごと流されてしまっても、レイラは幸福なままだった」
「姉たちに音の楽しさを教えながら楽しく過ごしていたわ」
「歌い方はドレミの音から始めるのよ〜、ってね!」

 ふと、慧音にも聴き覚えがあるフレーズが飛び出しました。

「これは確か……“ドレミの歌”?」

 歌詞こそ違っていますが、音楽の基本である音階を歌にした“ドレミの歌”でした。慧音だって寺小屋で歌ったことがあります。生徒は耳を押さえていましたけど。

「Doe, a deer, a female deer(ドはディアー、鹿の女の子)」
「Ray, a drop of golden sun(レは光り輝く太陽のしずくよ)」
「Me, a name I call myself(ミーは名前、私を呼ぶ名前!)」
「Far, a long long way to run(ファーはずっと遠くのこと)」

 騒がしかった演奏も、段々と落ち着いてきました。それでも、三人は心の底から楽しそうに音を作り続け、フィナーレを飾ろうとします。

「姉たちに歌の才能はなかったけど、レイラの歌声は素晴らしかったわ」
「歌う姿はまさに幻想郷のマリア!」
「毎日楽しく歌って遊んで、時は過ぎていった」
「何年たっても、あの子の歌声と可愛さは衰えなかったの」
「それでも時の流れには勝てなかった。ある寒い夜、まがい物の姉たちに囲まれて……」
「幸せなまま、本当の姉たちがいるところへ昇っていった」

 美しい余韻を響かせたまま、演奏は終わりました。三人とも笑ったままで。彼女たちが笑顔でこの曲を演奏できるようになるまで、どれほどの年月が必要だったのでしょうか。
 慧音は力いっぱい拍手を送ります。拍手している自分に気づいた、と表現した方が正しいかもしれません。三姉妹の中心にいた少女はいつの間にか消えていますが、きっと涙でぼやけて消たように見えているだけだ、と慧音は思いました。

「トラップ一家とは違うけど、これもハッピーエンドの一つ」
「でも、三人の騒霊はなぜか消えずに残った」
「せっかく残ったんだし何もしないまま過ごすよりは、と歌えない私たちは手に手に楽器を取ってレイラの幸せを受け継いだのよ」
「これが私たちの愛しい妹にして母でもある、レイラ・プリズムリバーの話。慧音の心に届いているといいけど」

 メルランとルナサが吹き出た汗を拭いながら微笑みます。興奮が収まらないリリカはシンセサイザーを放り出して慧音に飛びつきました。

「どうだった!? レイラに会えた!?」
「ああ、ちゃんと会えた。ヒントまでもらってしまったよ」

 子供のようにはしゃぐリリカを、優しく抱きしめながら慧音は答えました。








 プリズムリバー邸を初めて訪問した際に通されたソファに慧音は座っていました。対面するソファにはメルラン、リリカ、前回はいなかったルナサが並んで座っています。今はプロデューサーでも教師でもなく、里の歴史家のつもりで慧音は三人と向かい合っています。

「これから話すことはあくまでも私見であり、提案することを実行しても三人の消失が止まるとは限らない。それでもかまわないかな?」
「いいともっ!」
「レイラからヒントをもらった慧音が考えた提案。これを信じなければ、私たちは何を信じればいいのかしら?」
「そう言ってくれると嬉しいよ」

 最後に残ったルナサもうなずいてくれました。慧音は慎重に話を進めていきます。なにせ、三姉妹の存在の危機がかかっているのですから。

「提案に先立っていくつか質問がある。まず一つ目だが、幻想郷へ流れ着いてからのレイラの活動範囲を教えて欲しい」

 意図のつかめない質問に三人は目をぱちくりさせました。

「んー、屋敷からほとんど出なかったなぁ。私たちがいるだけでレイラは満足してたから。出かけても庭か、ちょっと先までピクニックくらい」
「あの子はこっちの言葉を覚えなかったから、幻想郷の住人に会いたくなかったのかもしれないわ」
「食料の調達なども全部私たちの仕事だったからな」
「分かった。二つ目の質問だが、さっき演奏してくれたレイラの曲をライブなどで披露したことは?」

 次の質問も、やはり意図がつかめません。

「ないわ。長い間、あの曲を演奏すると涙が出ちゃって、とてもライブでやれる曲じゃなかったから。泣かなくなっても、レイラのための曲だから、人前で演奏する気は起きなかったわ」
「もしかしたら、私たち以外であの曲を聴いたのって、慧音が初めてだったかも!」
「そうだったのか。最後にもう一つ、これはあまり関係ないかもしれないので答えなくてもいいが、レイラの命日は?」
「ちょうど二週間後だ」
「それは……都合が良いかもしれない。ありがとう、これで整理がついた」

 最後だけ予想外の答えが返ってきましたが、先の二つはほぼ予想通りです。慧音は灰色の脳細胞をフル回転させ、結論を導き出します。

「では、本題に入ろう」

 里の堅苦しい歴史家の解説が始まりました。

「いきなり非情な話になってしまうが、普通の人間は死んでしまったらそれっきりだ。死んだばかりの頃は、周囲の人間に覚えてもらっていても、月日がたつにつれて忘れられてしまう。特に死んだ人間のことを覚えている人間さえ死んでしまったら、その人間は墓や文献に名前が残っているだけ。それさえも失われてしまったら、再び現世で名前を知られることはほぼないだろう。これが歴史の闇に消えてしまうということだ」
「……慧音が言いたいのは、レイラが人々から忘れられて、歴史の闇に消えてそうになっている、ということ?」
「そう、その通りだ。理解が早くて助かる」

 のっけから暗く、難解な解説です。糸目になって思案したルナサがようやく口を開くと、慧音は嬉しそうに微笑みました。寺小屋だと解説しても、分かってもらえなくて無反応ですから。

「だが、世の中には例外もある。それが歴史上に名を残した人物たちだ。例えば関羽。彼の活躍は多くの書物に記されて、現在まで語り継がれている。大陸では軍神としてあがめられているそうだ。彼はまさに、我々の心の中に生きていると言えよう。他にも“源氏物語”の主人公、光源氏。彼は架空の人物ながら、“源氏物語”が現在でも高く評価されて読み続けられているため、その名が知られている。彼もまた人々の心の中に生きているわけだ。例を挙げればきりがない。つまり、偉業を成し遂げるかいつの時代でも人々に名前を認識してもらえれば、その人物の名は歴史の一部になるということだ」

 慧音の舌が回るにつれて、ルナサの目がますます細くなり、リリカは頭を抱えます。メルランは無邪気な笑顔を見せるだけです。

「レイラの件だが、ルナサが指摘したように歴史の闇に消えかかっているといわざるを得ない。幻想郷……いや、世界でレイラのことを覚えているのは君たち三人と、今日私が加わって四人だけだろう。もはや風前の灯といってもいい。そこでだ……」

 解説は最高潮に達しました。のどが渇いて飲み物が欲しいところですが、慧音は我慢して話を続けます。

「レイラの曲をライブで演奏することを私は提案する。印象は強ければ強いほど良いから、今日が命日だ、ということをライブで発表すればさらに効果が出るかもしれない。できるだけ多くの幻想郷の住人にレイラの存在を心に刻み込んでもらえば、レイラは幻想郷の歴史として認識してもらえるはずだ。そうなれば、君たちも拠り所が人々の心の中に広く共有されるため、存在が安定するかもしれない。もちろん、これが最善策である保証はないし、四季様が望んだ答えではないかもしれない。最悪の場合、消失が止まらないことも……」
「つ、つまり、どういうこと?」

 必死になって理解しようとして糸目がグルグル回ってしまったルナサが悲鳴を上げました。
 ハッと慧音は我に返ります。慧音に向けられた視線は寺小屋で向けられたものと同じです。これでは堅苦しい教師をやっているのと同じではないか、と気づいて愕然としました。

「つまり……その、何だ」

 今までとは別の方向に頭をフル回転させます。が、なかなかうまくいきません。五つほど案が出てきましたが、すぐにボツ。易しく、やわらかく、噛み砕いてくれ! と願っていると、脳内にデフォルメされた妹紅が現れました。その可愛らしい妹紅は固くなった頭をほぐすマッサージ! なる怪しい術を施してくれました。

「レイラの命日に、とびっきり騒がしいライブを開いたら何とかなるんじゃないか、ということだ」
「最初にそれを言って!」
「すまない……」

 さすがはプリズムリバー楽団。文句も素晴らしいアンサンブルです。

「レイラの命日は四人だけのライブが定番なんだけどなぁ」
「あら、たまには大勢でやるのもいいじゃない。私は良いと思うわ」
「お客さんのハートにレイラの思い出をぶち込んでやれば、私たちの消えなくてすむわけでしょ? 賛成賛成!」
「二対一……いや、三対一。見事に少数派になってしまったか」

 ルナサは渋っていましたが、数の暴力には勝てません。抵抗する愚かさ悟って、さっさと白旗を揚げて降参することにしました。

「私たちが消えたら、レイラの命日に演奏をする者がいなくなってしまう。いいだろう、今年は派手にやるか」
「そうと決まれば忙しくなるわね」
「言い出しっぺさん、覚悟はできてる?」

 メルランが流し目を、リリカがソファから身を乗り出してきました。もちろん、答えは一つしかありません。

「できているとも」
「なら、手始めに向こう二週間の予定を空けておこう。呼ばれているライブは全部キャンセル」
「全部!?」
「楽団を呼んでくれた主催者には悪いが、ライブには最高のコンディションで挑めるよう調整したい。このくらいの我がままは許してもらおう」
「ファンの人たちだって長い間私たちの音楽を聴かなかったら中毒症状が出るわ。二週間後には会場があふれかえるんじゃないかしら」
「というわけで、頭下げて回るのと、ライブの宣伝よろしく〜」
「わ、分かった」

 いきなり心がくじけてしまいそうです。四ヶ所ほどライブを頼まれていましたし、特に面識のない守矢神社の二柱や巫女がどう反応するか。考えただけでもげっそりしてしまいます。
 うんうん悩んでいる慧音を尻目に、三姉妹の方は会場のセッティングを決め始めています。ライブ帰りの後で私的な演奏まで行い、時間もすでに深夜を回っているのですが、自分たちの消失を止められるかもしれないという希望、何よりも愛しい妹ためという思いが三人を動かしているのでしょう。

「やっぱり演奏するとしたら、レイラのお墓の前しかないわね」
「うーん、庭にお客さんが入りきるかな?」
「この機会に生垣を取っ払っちゃえば? 手入れが大変だし」
「幻想郷に来る前からある生垣だぞ。それに、白玉楼でやるライブの報酬で妖夢に手入れしてもらってるんだから……」








 風呂敷を背負った慧音が、里から少し離れた林で準備をしていた夜雀の屋台に降り立ちました。

「あっ、プリズムリバー楽団のニューボーカル! 博麗神社でやったライブを見に行ってあげたのに、あなた歌わなかったじゃない」
「何度も言うように、私がなったのはボーカルではなくてプロデューサーだ。変なところだけ記憶しおって」

 八目鰻を串に刺していたミスティアから言われた文句も、すでに恒例のものとなっています。

「分かったわよ。で、今日は何の用かしら〜? 打ち上げ用の八目鰻の蒲焼セット?」
「いや、これを置いて欲しいんだ」

 風呂敷の中からチラシの束を出して、黒光りするカウンターの上にドサリと置きます。両面刷りのチラシには硬派な毛筆でライブの日時や場所が記されています。

「何これ?」
「見ての通り、プリズムリバー楽団のライブのチラシだ。屋台に来た客が自由に取っていけるようにしてもらいたいんだが」
「まあ、ライバルグループのチラシを置けって!?」

 ライバルグループと呼べるほど張り合えているだろうか? と慧音は首をかしげます。飲みに来たら強制的に聴かせられることになるミスティアの歌は、プリズムリバーの演奏に比べていまひとつならぬ、いまいつつほど魅力が足りない気がします。愛嬌はあるのですが、いかんせん歌詞のセンスには閉口してしまいます。
 しかし、今はそんなことは気にしていられません。三姉妹の存在を安定させるためには、一人でも多くのお客さんに来てもらう必要があるのです。慧音は帽子を取って、頭を下げました。

「何とかならないだろうか。この通り、頼む」
「不気味なくらい低姿勢ね。ま、私だって鬼じゃないし、置かせてあげるわ♪」
「ありがとう」
「ただし、私がライブを開くようになったら、そっちの会場に私のチラシを置かせてもらうわよ」
「了解した。ライブを開けるよう、頑張ってくれよ」

 ミスティアが幻想郷のマリア・ヨスズメと呼ばれる日は果たして来るのでしょうか?

「そうだ、ミスティアも今度のライブに来てくれないか? 来たらプリズムリバー楽団がボーカルを断っている理由が分かると思うんだが」
「チラシだけじゃなくて、実際に来いって? ちょっと、何か注文していきなさいよ」
「暇だったらでいいさ。では、串揚げを一つ包んでくれないか?」
「まいど〜♪」

 次にチラシを置いてもらうよう頼みに行くのは、魑魅魍魎の巣窟と化してしまった博麗神社です。多くの人妖が集まるわりにはお賽銭が入らない神社ですので、何か手土産があれば話も円滑に進むはずです。

「はい、おまち〜♪」
「おいおい、チラシで包まないでくれよ」
「あらいけない。揚げ物にはやっぱり新聞紙よね♪」
「その文々。新聞にもライブの広告を載せてもらっているんだが」
「……」
「……」

 狐色に揚がった八目鰻の串焼きが行き場を失います。ミスティアは考え込み、しばらくして一つの結論にたどり着きました。

「ねえ、その珍妙な帽子を貸してくれない?」
「かぁーっ!!」

 結局、文々。新聞で包むことになった串揚げは、きっと頭突きのスパイスが効いているでしょう。

「どうも、プリズムリバー楽団だが」
「いらっしゃい。あら、今日はプロデューサーさん一人?」
「三人は猛特訓中だ。ライブのチラシを頼みたいのだが」
「もちろんいいわ。チケットは?」
「今回は無料にした。一人でも多くの人妖に聴いてもらいたいのでな」
「ふーん」

 一日中チラシを配って回ったので、背中の風呂敷もずいぶん軽くなってしまいました。今は最後の目的地、ススキが揺れる太陽の畑に来ています。風見幽香に一人で会いに行くなど勘弁願いたいところですが、ライブのためプリズムリバー姉妹のためと奮起して幽香と相対しています。
 そんな慧音の努力をあざ笑うかのように、幽香はまたまたジッと見つめてくるではありませんか。

「なっ、何か?」
「……ううん、前に会ったときより活き活きしてるなーって思っただけ」

 やはり大妖怪は苦手だ、慧音は心を見透かされていることを承知でそう思ってしまいます。

「まるでしおれていた植物が水を得たみたい。行動する目的があるから? それとも、時代遅れで何が悪い、って開き直ったから?」
「さあ……自己客観視は不得意なのでな、好きなように解釈してくれ」
「つれないわねぇ」
「ライブのプロデュースで忙しいんだ。用が済んだのなら、帰ってもいいかな?」
「ご自由に」

 興味を失ったのか、幽香はススキの海へ戻っていきました。トレードマークの日傘が穂の中に沈みそうになったとき、ふと慧音の脳裏に疑問が浮かんできました。

「すまん、一つ聞きたいことがある」

 慧音に声をかけられ、クルリと幽香が身をひるがえします。あくまでも笑顔で。

「プリズムリバー三姉妹が消えかけていることに気づいていたのか?」
「気づいていたら何なの?」

 幽香は微笑んだまま。少しだけ、幻想郷縁起に描いてあった身も凍るような微笑に近づいた気がします。

「あの三人に代わって感謝したい。ライブの会場を提供してくれただけでなく、チケットやチラシを配ってもらって、本当に助かっている」

 ぺこりとお辞儀をする慧音。幻想郷中を回って頭を下げてきたときと同じく、精一杯の誠意の気持ちを込めて腰を曲げます。

「別に、私は自分の好きなように動いただけ。あの子たちの音楽が聴けなくなると、暇つぶしの手段が一つ減ってしまうから」
「好きなように動いて誰かが救われるなら、それは素晴らしいことじゃないか」

 幽香は微笑んだままですが、慧音もいたって真面目な顔をしたまま返事をします。

「変な人間。獣人だったかしら」
「変なのはお互い様だろう」
「それもそうねぇ」

 慧音の切り返し方がよっぽど気に入ったのか、幽香はクスクスと可愛らしい笑い声をこぼしました。一息ごとに花の香りが周囲に散っているかのようです。

「ふふ、また一人でいらっしゃいな。お茶を淹れて差し上げるわ」
「ライブが終わったあたりにお邪魔させてもらうよ」

 二人は挨拶をして別れました。一方はススキの海へ、もう一方はプリズムリバー邸へ向かいます。
 霧の湖付近まで来たとき、慧音は急に寒気に襲われました。氷精チルノがいたからではありません。恐るべき妖怪、風見幽香と平然と会話していた自分に気づいて、思わず恐ろしくなったからです。

「わ、私は何て会話をしていたんだ……」

 あまりの恐ろしさに、慧音は湖面へ墜落しそうになりました。








 心まで透けてしまいそうな秋晴れの空、とまではいきませんが、ライブ当日はまずまずの晴れ模様でした。雲がちらほらと散りばめられていますが、プリズムリバー邸の庭からは紅葉が落ち着いた妖怪の山が遠望できます。

「晴れてくれたか……ふぁあ」

 寝不足気味の慧音は、のどの奥まで秋の空気を触れさせます。まぶたが閉店させろと不平を申し立てますが、明日寝ればいいさと顔を叩いて黙らせました。

「おはよう」
「おっはー」
「おっはよ〜う!」

 ルナサ、メルラン、リリカの三人がライブ会場である庭へ出てきました。慧音と違って目の下にクマができている、なんてことはありません。

「おはよう。調子はどうだ?」
「ばっちり!」

 リリカのピースサインが全てを物語っているようです。演奏家の体調が万全なら、それをライブが終わるまで持続させることがプロデューサーの仕事、と慧音は気を引き締めます。
 ライブの開始時間は夕方の五時。人間と妖怪が集まることのできる、一番妖しい時間です。開始まで余裕がありますが、かといってこの段階で音楽家にできることは限られています。

「私たちは二階で軽く練習してるから、何か問題が発生したら呼んでね」
「疲れないよう注意してくれよ」
「合点承知の介!」

 河童たちの協力で組みあがった舞台の出来栄えにはしゃいで、一曲演奏してから三姉妹は屋敷の中へ引き上げていきました。

「おいーす」

 三姉妹と入れ替わりに会場へ来たのは、そろそろ普通とは呼べなくなってきた森の魔法使い、霧雨魔理沙でした。常日頃から弾幕はパワーだ、とのたまっている彼女がそれを証明するために決闘を申し込んできた、わけではなく、ライブの照明を担当しているためその準備に来たのです。
 普段は光の妖精を手なずけているのですが、立派な舞台ができる規模となった今回のライブでは少々不安が残ります。なので、派手でキラキラした魔法を扱っている魔理沙に白羽の矢が立ったのです。

「朝早くからすまんな」
「いいってことよ。自分の派手な魔法が披露できて、ついでに楽しい演奏が聴ければ、私は言うことなしだ」

 プリズムリバー邸の珍しいものも失敬していこう、とは口に出しては言いませんが、慧音にはしっかりと伝わっています。慧音は反対したのですが、最終的に一回だけ盗みは見逃すとルナサが宣言しました。ただし、騒霊は仏ではないので二回目からは恐怖の不協和音フルコースをお見舞いするそうです。

「適当にやるから気にしないでくれ」

 そうとは知らない魔理沙は揚々とかび臭いカバンから奇怪な商売道具を取り出します。さらにはスカートの中にグイッと手を突っ込んでミニ八卦炉を出します。いやはや、同性ばかりだとついつい……いえ、何でもありません。

「三日前のリハーサルと同じことをしてくれればいいからな」
「私は行く道と帰りの道は別々の方が好きなんだが」
「……頭蓋骨の強度検査をして欲しいのか?」
「これだから冗談の通じないやつは嫌いなんだよ」

 慧音も頭突きの扱いには慣れたものです。
 その後も、河童の技術者や取材の鴉天狗、助っ人の妹紅たちが続々とやって来て、プリズムリバー邸はさながらお祭り会場といった様子です。
 祭りは準備が一番楽しいとは良く言ったものですが、会場の総責任者でもある慧音に楽しんでいる暇はありません。律儀に取材に応えつつ河童側の代表である河城にとりと打ち合わせをし、昼にはミスティアにスタッフの昼食である八目鰻丼を届けさせたりと、大忙しです。
 性懲りもなくケンカを始めた妹紅と輝夜には頭突きで対応しましたが、あまりの忙しさに力加減を誤ったのか二人ともしばらく復活できませんでした。

「お客さんが来てるけど、どうする?」
「もう庭に入ってもらおう。ああ、レイラのお墓と屋敷には近づかないよう注意しておいてくれ」
「お墓は分かるけど、屋敷も?」
「窓ガラスを全部割るつもりらしい」
「そりゃすごい」

 頭に包帯を巻いた妹紅が感嘆しました。
 昼過ぎから観客は三々五々集まり始め、おやつ時が過ぎてからは加速度的に増えていきました。慧音と三姉妹が練習室で最終打ち合わせをしていた頃には、集まった観客を相手にミスティアが商売を始めていたほどです。
 ただ、集まってきたのはお客さんだけではありませんでした。

「気圧が下がってる」

 ヴァイオリンの弦をチェックしていたルナサが、ポツリとつぶやきました。慧音もそわそわしながら窓から空を見上げました。
 鉛色の雲が空の大半を埋め尽くしていました。妖怪の山はもう見えません。もしかしたら、頂上にある守矢神社では雨が降っているかもしれません。

「まずいな……」

 雨天の対策も一応、慧音は考えてありました。紅魔館には負けるものの、プリズムリバー邸は元々伯爵家の屋敷です。立派なホールがありますし、全館開放すれば里の人口を超える人数を収容できるかもしれません。雨が降った場合は屋内ライブにすると決めていたのですが。

「慧音、どうする?」

 隣で不安そうに空を眺めていたリリカに聞かれ、慧音は苦虫を噛み潰したような表情になります。

「ホールに移動してもらいたいところだが……」

 慧音は視線を空から庭へと移しました。そこには慧音の予想をはるかに上回る数の観客が集まっていました。横断幕を持ったファン倶楽部の会員たち、地底から出向いてきた鬼のご一行、ライブの意味を分かっているか怪しい里の老人会の方々、山に住む妖怪たち。幻想郷に住むありとあらゆる人妖が集まったかのような混雑ぶりです。
 レイラの存在を知ってもらうには、またとないチャンスでしょう。しかし、天候は待ってくれないようです。

「弦の張りが弱くなっている。降り始めるまで時間がない」
「でも、こんなに多いとホールどころか屋敷にも……」

 時計の長針は四時を回ったところです。

「慧音!?」
「すまん、先に舞台裏へ行ってくれ!」

 慧音は練習室を飛び出しました。そのまま一階へ降りて正面玄関から外へ出て、一番近くにいた河童の名を叫びました。

「にとり!」

 最新版の幻想郷縁起には河城にとりは水を操る程度の能力を持つと記してあります。慧音はその能力に頼ろうとしたのです。
 雨が降った場合の対応はどうするのか聞こうと、屋敷へ向かっていた妹紅は、玄関前でスタッフの河童と押し問答をするプロデューサーを見つけました。

「長老ならできるかもしれないけど、私の能力はそこまで高くないんだって!」
「この屋敷の周辺、観客の上だけでもいいんだ!」
「そんな無茶な!」
「慧音!」

 妹紅は慌てて二人の間に割って入りました。にとりに掴みかかんばかりの勢いで慧音が吠えていたのです。

「お客が雨になりそうだって騒いでる。どうしたらいい?」
「今にとりに頼んで……」
「池や川の水ならともかく、高速で降ってくる雨を一粒づつコントロールするなんて私には無理だよ。それよりも巨大な傘かテントを作った方が早い。でも……」

 時間が足りない、と言いかけたにとりの鼻頭で、パッと水がはじけました。それが合図だったかのように、次々と雨粒が落ちてきます。秋雨ではなく、冬の冷たい雨です。

「何てことだ」

 天を仰ぐ三人。どす黒い雨雲が、これまでの努力をあざ笑うかのように雨を落としてきます。地面に水がしみこむように、慧音の身体を焦りと絶望が浸食していきます。
 にとりが助けを求めるかのように叫びました。

「天狗は!? 風を操る鴉天狗なら雨雲を吹き飛ばしてくれるんじゃ!?」
「二百年ほど前にそれをやろうとした天狗が竜巻を起こしてる。あの時は人里にひどい被害が出たんだ。もっと影響の少ない……鬼だ、鬼の伊吹萃香なら密度を操る程度の力を持っている。あの能力なら雨雲を散らすことができるはずだ。彼女を探そう!」
「慧音、慧音! 落ち着いて!」

 走り出そうとした慧音の両腕を妹紅が掴みました。無理やり振り向かせ、顔がくっつきそうにくらいの距離で話します。

「今日は地底から何人も鬼が来てるんだよ。それに、彼女がライブを聴きに来ているとも限らない」
「じゃあ、妹紅はどうするつもりなんだっ!?」
「慧音は? 慧音じゃ駄目なの?」
「私?」

 思いがけない提案が妹紅の口から出ます。強大な力を持っているわけではない自分が指名されたことに慧音は戸惑いました。

「永夜異変のとき、慧音は人里を隠したじゃない。慧音の能力でこの雨もなかったことにできないの?」
「……それは、無理だ」
「どうして!?」
「私の持っている歴史を食べる程度の能力とは、本当に歴史をなかったことにするわけじゃないんだ。ただ人々から認識できなくするだけ。人里だって単に見えなくなっただけで、今も存在し続けているだろう?」

 慧音は妹紅から視線をそらして自分の能力を説明します。背後では雨宿りできる場所を求めて観客たちが右往左往しています。

「もしここで雨が降っている歴史を食べたとしても、お客さんが気づかなくなっただけで、実際に濡れていることに変わりはないんだ。ライブの間は誤魔化すことが可能かもしれないが、能力を使うことを止めた瞬間、自分がびしょぬれになっていることに気づくだろう。私の能力は一時的なまやかしに過ぎないんだよ」
「それでいいじゃん!」

 得意とするピアノのように軽やかなソプラノが、立ち尽くす慧音にかかりました。振り向くと、そこには冷たい雨に濡れるのもかまわず、外に出てきた三人の騒霊。

「お客さんが困っている。まやかしでもいい、能力を使って欲しい」
「だが……」
「私たちの音楽を聴いている間だけ誤魔化せばいいのよ。それに、私たちの音楽は癒しの音楽なんかじゃない」
「騒霊の音楽だよ! 私たちの騒音を聴いたからには、古い身体を捨てて生まれ変わるくらいの衝撃を受けて帰ってもらわなきゃ」
「汗で濡れたか、雨で濡れたか判断できないくらい全身汗まみれにしてやるわよ」

 トランペットを振り回すメルラン。しきりに慧音の肩を叩くリリカ。どちらも自信に満ち溢れた瞳をしているではありませんか。
 水も滴る良い女。そんな言葉が似合ってしまうほど濡れてしまったルナサが、慧音の前に浮かびます。

「今日のライブは、雨で濡れていることを忘れるくらいのものになる。それは、慧音のプロデュースで私たちが演奏する、レイラのためのライブだから。少なくとも、私たちはそう信じている。だから、慧音は安心して見守って欲しい」

 一言づつ、諭すように話すルナサ。そこに秘められているのは、三人に渦巻く音楽家としての絶対的な自信、慧音への信頼、そして愛する妹への思いです。
 プリズムリバー三姉妹の音が伝わったのか、やがて慧音はうなずきました。

「よし……ライブを始めよう。三人とも舞台裏へ行ってくれ!」
「分かった」
「頼むわよ」
「また後でね〜」

 三姉妹は文字通り空を飛んで、舞台裏へと消えていきました。それを見送った慧音は矢継ぎ早に指示を出します。

「にとり」
「はいなっ!」
「舞台を頼むぞ。妹紅」
「私は何をすればいい?」
「音楽が始まったら、後ろから炎を出して観客たちを暖めてくれ。できるか?」
「もちろんさ」

 河童は水中を泳ぐように、蓬莱人は不死鳥と化して雨の中へ消えました。

「では……」

 一人残った慧音は天を見上げます。もうお前になんかに負けていられない、とにらみつけてから叫びました。

「今から歴史を食う!」








 プリズムリバー邸に集まっていた観客たちは困惑していました。雨が降ってきていたはずなのに、いつの間にか空が晴れて星が出ているのです。ざわざわ、ひそひそと話し声が会場に漂い始めました。
 突然、聞き覚えのある優しいメロディーがどこからか流れてきました。一斉にワァッという声が上がります。なにせ、このピアノの部分はプリズムリバー楽団の十八番、“幽霊楽団 〜 Phantom Ensemble”のイントロなのですから。
 会場にいた全員の注目が舞台に集まると、一人の女性が舞台に現れました。里の守護者であり、今やプリズムリバー楽団のプロデューサーとして名が知られた上白沢慧音です。

「みんな! 家に帰って熱い風呂に入るまでがライブだぞ!」

 何やらわけの分からないことを叫びました。

「イェーッ!!」

 観客は興奮状態なので意味が分からなくても叫び返します。それに満足したのか、慧音が微笑んだ瞬間、舞台全体から無数の流れ星が飛び出しました。どうやら魔法の仕掛けのようです。
 観客たちの目を奪った流れ星が収まると、そこには彼らが待ち望んだプリズムリバー三姉妹の姿。そう、ライブが始まったのです。

「んんー? やっぱりボーカルがいないじゃないのさ!」

 屋台そっちのけでライブに見入るミスティアは不満の声を上げました。やはり、慧音がボーカルになった、という間違った情報だけ覚えているようです。

「嫌だわ、雨のライブなんて」

 会場から少し離れた場所で大妖怪、風見幽香が日傘をさしながらぼやいていました。どうも慧音の能力は、慧音より力が強い妖怪には効果がないようです。
 幽香はやだやだ言いつつも流れてくる音楽を聴いて、誰に向けるでもなくつぶやきました。

「でも、素晴らしい騒音だから許してあげる」

 観客がどんな状態であろうと音は生み出され続けます。それもそのはず、この曲はプリズムリバー楽団の、楽団による、楽団のための曲なのですから。
 ヴァイオリン、トランペット、ピアノが交互に主張し合って、騒がしく、それでいてノリの良い音の嵐を作り出すこの曲は、まさにプリズムリバー三姉妹そのものなのです。

「なあ、妹紅」
「どうしたの?」

 熱狂に包まれる観客たちの後方で浮いていた妹紅は、ふわふわと漂ってきた慧音に声をかけられました。炎を出しているのですが、これも慧音に食べられて見えなくなっています。

「素晴らしいとは思わないか?」
「このライブが?」
「そうだ」

 のっけから有名曲が飛び出したので、会場のテンションは鰻登りです。慧音は目を細めてその様子を眺めていました。
 鬼が人と肩を組んで声援を送り、神が幽霊と酒を飲み交わしながら音楽に耳を傾けています。魔法使いは流れ星をばら撒きながら、箒にまたがって飛び回っています。様々な人妖が集まっていますが、共通しているのはみんな笑顔で音楽を聴いていることです。

「人と妖怪、その他もろもろが一緒になって騒ぐ。これが幻想郷のあるべき姿なんだ」
「何だか悟りを開いちゃったみたいだね」
「舞台の上に立ってあれだけの視線を浴びれば、嫌でも何か悟るさ」

 慧音は目を閉じ、独語しました。

「時代遅れだ何だと愚痴をこぼしている暇はない。これを守るためにも、寺小屋の教師を続けないとなぁ」

 一瞬、妹紅は間の抜けた顔をしましたが、すぐ慧音に抱きつきます。

「慧音大好き!」
「熱っ!? 炎を出してることを忘れないでくれ!」

 黄色い悲鳴と悲痛な叫び、さらに天空へ消えていくような“幽霊楽団 〜 Phantom Ensemble”のフィナーレが重なり合います。
 妹紅に抱きつかれたまま、慧音は涙に曇った瞳を舞台上の三姉妹へ向けました。ルナサは目をつぶって、メルランは飛びっきりの笑顔で、リリカはシンセサイザーにかじりつくようにして、それぞれが演奏を終えた余韻に浸っています。
 これから始まる二曲目はパンフレットにも載っていないサプライズ曲。そして楽団の存亡をかけた曲でもあります。

「さあ、次だ」
ここまで読んでくださった全ての方々に感謝を。

(2009年1月17日)

初めまして文鎮と申します。このたびは東方処女作にして超拙作「慧音プロデューサー」をお読みいただき真にありがとうございます。
さて、この作品は投稿時間が全てを物語ってると言っていいでしょう。書き上げられなくて本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
こんな未完成な作品にコメントまでいただけるとは、もう嬉しいやら恥ずかしいやら後悔やらで胸が一杯です。私としては偉大なるZUN氏が生み出した音楽やキャラクターの魅力が少しでも伝わっているのなら、それに勝る喜びはありません。


>>静かな部屋さん
台詞には気を使っていたので、そう言っていただけると嬉しいです。
地の文は誰かに語りかけるような気持ちで書いてみました。
最後は添削をする時間すらなくそのまま送り出してしまい、お恥ずかしい限りです。

>>歩人さん
完全なる不完全燃焼に終わってしまい申し訳ありません。
楽しんでいただけたなら私はハッピーハッピーです。

>>nanashiさん
幻想郷はこんな感じかなぁ、と妄想を膨らませつつ書いたのですが、素晴らしいと思っていただけたなら何よりです。
人妖が平和的に共存する幻想郷に仕上げたつもりでした。

>>ケンロクさん
幻想郷にはすごい人妖がゴロゴロしてますからね。私も調査に行ってみたいものです。
ZUN氏の音楽は素晴らしいものばかりなので作中でも聞いて欲しい、と考えてこのような形になりました。
ですます調は個人的にけっこう書きやすい文体なので今回選択したのですが、それでも書ききれなく、テーマはそえるだけになってしまい、もはや何と弁解していいやら……

>>冬。さん
どうも月並みな発想しかできなくて……
文句無し、とまで言っていただけるとは。目から塩水と後悔が流れてきそうです。

>>はばさん
慧音が古臭いということで色々と古臭い言葉を入れてみました。特に当たり前田のクラッカーを知っている人がいたかどうか非常に不安です。
プロデューサーさんは真面目な人が似合っているからでしょうか?

>>御洒落さん
ですが死神の船に乗るとあの世行き。危ないものです。こまっちんぐ。
面白かったと思っていただけなら幸いです。

>>藤木寸流さん
ええ、間に合わなかったんです……
最後まで丁寧に竜頭蛇尾になってしまいすいません。落ちてるっぽく偽装するのが精一杯でした。

>>神鋼さん
ものすごく丸投げなんです。
博打的なものではなく、しっかりした最後を考えていたのですが、書き終えることができませんでした。

>>zarさん
時間切れ臭だだ漏れで恥ずかしいばかりです。
完成させたい気持ちは山々なのですが、かなりの改編や付け足しが必要になるため、自分への戒めの意味も含めて誤字訂正だけに留めておきます。申し訳ありません。
音楽ネタは飾りくらいのつもりなので、あまり気にせず雰囲気だけ楽しんでいただければと。

>>パレットさん
はい、私のだらしなさにより見事に途中で切れてしまいました。
創想話の方へ投稿することは何度も考えましたが、結局そのまま投稿を選んでこんな結果に、すみませんでした。

>>白錨さん
最初はもう出落ちに限りなく近い何かですから。
とんでもなさで一杯のストーリーを評価していただけるとは光栄です。
ただ、話自体が完成していないのは致命的なミスですよね……

>>椒良徳さん
誤字脱字の報告ありがとうございます。
そんなに期待していただけたなんて、その期待を裏切ってしまい本当にすみません。
打ち切ってしまったのは、私に時間内に書き切る力が欠落していたからなんです。できるだけ精進して力を付け、見苦しい作品を世に出さないようにします。

>>詩所さん
そうですよね。
ただ、残念なことに現在音楽表現の多様化によって伝統音楽やクラシックは停滞しています。
もし、お住まいの地域に昔から伝わる歌などがあるのなら、幻想入りさせないためにも次の世代に伝えていただけないでしょうか。

>>desoさん
登場人物が生き生きとしていて読んでいて楽しい、ああ、こんな褒め言葉をいただるなんて。
締まらない所で終わりにしてしまい、大変申し訳ありません。

>>バーボンさん
クライマックスすら書けずに終わってしまいました……すみません。
私もプリズムリバーが好きです。私自身が音楽を好きなこともあり、いつの間にか思い入れのあるキャラクターたちになっていました。彼女たちの魅力が伝わっていたのなら、私も踊りだしそうです。

>>17さん
申し訳ありません。文字化けしてコメントが読めなくなっています。
お手数をかけますが、できたら再度コメントしていただけると嬉しいです。

>>やぶHさん
私の中のイメージに従って書いただけなのですが、気に入っていただけるとは。慧音先生可愛いですよ、もう。
最後の部分は時間切れで書けなかったんです……
どうもタイトルをつけるのが苦手でして、アイマスと間違われそうだなぁ、でもやってることはアイマスと同じだなぁ、と決定しました。

>>八重結界さん
口に出してしまうほど……あわわ、本当にごめんなさい。
コンサートは成功したはずです。なにせ慧音がプロデュースしていたのですから。

>>2号さん
完全に尻切れトンボですよね……
投稿見送りも考えていたのですが、時間内に書ききれないのも実力の内と言い聞かせて投稿してしまいました。

>>鼠さん
ちゃんとコンサートが終わったところまで書くつもりでしたが、時間切れでこんなところでの投稿となってしまいました。
まとまっているように見えるよう誤魔化しただけなんです。

>>木村圭さん
漫画雑誌の打ち切り、まさにソードマスターヤマトですよね……
あんまりな投稿をしてしまって申し訳ないです。

>>零四季さん
この終わりは偽装です。偽装なんです。
単調にならないよう書いたつもりだったので、そう言っていただけると幸いです。
真面目に頑張る慧音はかっこいいですよ。

>>時計屋さん
承をところどころ省いても終わらせることができない、自分の力不足を痛感しました。
好きなものと好きなものを合体させたらすごいものができるはず!と妄想を重ねた結果こんなことに。
好印象を持っていただけるなんて嬉しいです。


次回からは未完成のまま投稿するようなことは絶対にしないよう心がけたいと思います。そして、できればリベンジをしたいです。
最後になりますが、この素晴らしい東方SSこんぺとこんぺに関わった全ての人々に感謝を。
では、またどこかでお会いしたら、その時はよろしくお願いします。
文鎮
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/11/21 23:59:28
更新日時:
2010/01/18 03:11:43
評価:
23/26
POINT:
148
Rate:
1.44
1. 8 静かな部屋 ■2009/11/22 09:13:56
台詞回し、終わり方がきれいで良かった。
地の文も静かで、そのまま沁みこんでくる。
ただ、誤字が気になりました、時間を見る限り仕方なかったとも思いますが
2. 7 歩人 ■2009/11/23 01:10:12
ラストが惜しい。不完全燃焼っぽい。

でもこれは中々。楽しませていただきました。
3. 8 nanashi ■2009/11/23 09:12:43
素晴らしい幻想郷がみれて満足です
4. 4 ケンロク ■2009/11/23 13:43:49
>暇人が集まっただけなのに、やたらと豪華な教師陣です。
この一文になんとなく噴きましたw確かにw

面白いお話でした。原作に出てくる音楽を、こういう風に解釈して使うというアイデアがスゴイと思います。
ただ、少し消化不良感もありました。せっかくならライブの結果、三姉妹がどうなったのかまで書いて欲しかったです。それにテーマの雨があまりに出てこなかったので、なんとなくオチが読めてしまったのも残念です。
あと、個人的な意見ですが、ですます調はやはり少し野暮ったいかもしれません。
5. 9 冬。 ■2009/11/23 16:19:47
雨というお題を上手く生かしきれてなかったのでマイナス1。
でも、お話は文句無しで面白かったです。
6. 9 はば ■2009/12/08 20:15:37
ナウいってw
意外に相性いい組み合わせでした
7. 7 御洒落 ■2009/12/17 17:34:37
「乗りかかった船、と大きく書かれた旗を振る死神が慧音の頭に侵入してきました」の文がステキでした。
最後まで丁寧で、面白かったです。
8. 5 藤木寸流 ■2010/01/03 23:12:12
 間に合わなかったのだろうか……
 途中までは、普通だけれども丁寧に書き込まれてて良かったのですが。ううむ。
 落ちているといえば確かに落ちていると言えなくもないのですが、やっぱりすっきりしないものが残ります。
9. 9 神鋼 ■2010/01/08 00:12:29
兎に角終わり方が凄い。悪く言えば丸投げですがそこまでの話をしっかりと積み重ねているので
どっちに転んでも幾らでもイメージ出来ます。正解の決まっていない気持ち良さ。
10. 2 パレット ■2010/01/10 05:44:45
 と……途中で切れてませんか……?
 時間的に間に合わなかったのかコピペミスかはわかりませんが、一番盛り上がるはずのところで切られると、さすがに……。
11. 7 白錨 ■2010/01/10 13:03:29
最初の印象と話の印象が違いすぎる(笑)だが、それが良かったです。
慧音の頭の固さの優劣を色々な視点で表現していく様。そんな慧音がなんとプロデューサーになってしまった。永遠亭組の授業。
面白く、慧音を意外な視点で成長させるストーリーの完成度は高かったと思います。
12. 5 椒良徳 ■2010/01/11 20:42:28
>思わず自生の句を読んでしまいそうなプレッシャーを感じ、慧音は生きた心地がしません。
自生の句でなく辞世の句です。お気を付け下さい。
>特に死んだ人間のことを覚えているさえ死んでしまったら
何か大事なものが抜けているようです。お気を付け下さい。

一言感想を申し上げますと、「良い所で終わらせやがって、畜生!」
これに尽きます。

慧音がプリズムリバー三姉妹のプロデューサーを務めるという設定は面白かったですし、
依り代を失った三姉妹が消滅しようとしているというシリアスな展開も最高でした。
丁寧に書かれた文章も読みやすく、非常に良く出来た作品だなと思いました。
これは素晴らしい結末がやってくるに違いないと期待が膨れ上がりました。
ええ、最後までは。

これから盛り上がるぞー! というところでなんで打ち切ってしまったのかが判りません。
そのことが非常に残念なので減点しておきますね。
13. 5 詩所 ■2010/01/13 22:44:38
 伝統芸能ではないけど、音楽を残していくことも歴史としての重要な一部分であると思います。
14. 8 deso ■2010/01/13 23:11:22
ここで終わりぃぃぃーっ!?
すんごい面白かったです。とにかく登場人物が生き生きとしていて読んでいて楽しい。
ただ、締めが締められてない感じです。
本当はもう少し先まであるんじゃないかと……。
まあ、ともあれ、素敵なプロデューサーとプリズムリバーが読めて幸せです。
どうもありがとうございました。
15. 8 バーボン ■2010/01/14 17:15:48
おおう……クライマックスどころか、その一歩手前で終わると言う……。興奮が収まりつかないじゃないですか、どうしてくれる。
筋道のわかりやすいストーリー、軽くて読みやすい文体に楽しげな雰囲気……と、個人的にはとても楽しんで読める物でした。結末がどうなるのか気になっただけに、終わり方が少しだけ残念な気もしましたが、まぁこれはこれでアリだな、とも。
あとは個人的にプリズムリバー好きってのがあるんで、その補正もあると思います。好きなキャラが魅力的に描かれているって、凄く嬉しいわけでして。
16. 7 ホイセケヌ ■2010/01/14 21:54:52
スK、、キス、ャ、チ、遉テ、ネフニヘサ、タ、テ、ソ、ホ、ャイミト。」
、筅ヲメサ・キゥ`・モ、キ、ォ、テ、ソ。」

・ュ・罕鬣ッ・ソゥ`、ホホカ、ャチシ、ッウ、ニ、、、ソ、ネヒシ、、、゙、キ、ソ。」
、ノ、ホ・ュ・罕鬢簔シ、ッチ「、テ、ニ、、、ニ。「・讖`・筵「、ソ、テ、ラ、熙ヌ。「、ス、ホ、荀ネ。、熙ヒ、マヒシ、、コミヲ、テ、ニ、キ、゙、テ、ソ。」
、゙、ソ。「・・・ォ、ホ・ニ・・キ・逾、ャ、荀荳゚、皃ヌ。「拳ユユオト、ヒ・皈・鬣、ャ、ェ、ネ、ハ、キ、皃ハ、ホ、ャ゚`コヘクミ、ネムヤ、ィ、ミ゚`コヘクミ。」
、ヌ、籌ェ壥メサアュ、ホ・・・ォ、ホ、ユ、、゙、、、セス、皃蒲、ネ、キ、ニ、ホ・皈・鬣、ホ、ホメサ、ト、タ、ネ、ケ、、ミ、ス、、筵「・熙ハ、ホ、ォ、ハ。「、ネヒシ、テ、ソ、遙」、ネ、、、ヲ、ォ。「・・・ォソノ摂、、。」
17. 7 やぶH ■2010/01/15 03:02:22
いやはや。この慧音先生、イメージとぴったりです。古臭くて焦っている、いいじゃないですか可愛くて(笑)

さて内容ですが、最後の部分はあえて書かなかったのでしょうか、それとも時間が足りなかったのでしょうか。
でもそれは些細なことです。むしろ、ちょっと雨のお題分が弱いかなーという方が引っかかりましたが、全体として、タイトルからは想像できない丁寧な作りで、素敵なお話でした。
18. 7 八重結界 ■2010/01/15 19:10:10
 ここで終わるのか、と読み終わった瞬間に口から出ました。
 前半と中盤の盛り上げが良かっただけに、もう少しだけ先の展開が読みたかったものです。ただ、コンサートが成功したのは間違いないでしょうね。
19. 7 2号 ■2010/01/15 19:24:41
とても面白かったのですが、最後が尻つぼみの印象でした。
時間がなかったんでしょうか。
ちょっともったいなかったです。
20. 3 ■2010/01/15 22:46:22
えっ ここで終わるか
あー、でも慧音が主役ならここまでか
強く惹きつける展開ではなかったですが、やわらかくまとまっていたと思います
21. 1 木村圭 ■2010/01/15 23:28:53
彼女たちの戦いはこれからだ!
さすがにここで終わるのはあんまりだと思います。
22. 9 零四季 ■2010/01/15 23:31:54
ここで終わらせるとは。でも違和感はありませんでした。
冒頭で笑わせ、所々にも笑を織り交ぜ、実に読みやすい作品でした。慧音はカッコいいですね、やはり
23. 6 時計屋 ■2010/01/15 23:39:47
 慧音先生がプリズムリバーのプロデューサーを務めるという発想はとても素晴らしいと思います。
 文章も丁寧で読みやすく、語り口も柔らかで好印象でした。
 ただ、起承転結でいえば、承と結の部分が弱いような気がしました。
 特に慧音先生がプロデューサーとして楽団を盛り上げていく過程はもっと読んでみたかった。
24. フリーレス 匿名評価
25. フリーレス blulaDawskela ■2010/07/05 09:29:08
parr http://www.omfgg.com/profiles/blogs/buy-estrace-online buy estrace online laurie http://www.omfgg.com/profiles/blogs/buy-tenormin-online buy tenormin online grazeach http://www.omfgg.com/profiles/blogs/buy-atenolol-online buy atenolol online universitydr http://www.omfgg.com/profiles/blogs/buy-amaryl-online buy amaryl online takashi http://www.omfgg.com/profiles/blogs/buy-anastrozole-online buy anastrozole online hereunder
26. フリーレス たすた ■2010/10/15 11:31:54
例えるならゴール直前で盛大にすっころげてビリになった感じ
名前 メール
評価 パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード