かがみよかがみよかがみさん

作品集: 最新 投稿日時: 2010/11/05 23:19:34 更新日時: 2010/11/05 23:19:34 評価: 22/23 POINT: 110
レミリア・スカーレットは屈みこんだ!
フランドール・スカーレットはひらりと身をかわした!
レミリア・スカーレットは屈みこんだ!
フランドール・スカーレットはひらりと身をかわした!


「ぜぇぜぇ」
「はぁはぁ」

狭い地下室で姉妹は踊るようにぐるぐると回る。
もっとも実状は踊りなどという優雅なモノではない。

「フラン! 大人しくスカートの中を見せなさい!」
「誰が見せるかこのバカ!」

レミリア・スカーレットは妹のスカートを覗こうとしているのだ。
レミリアの目は獲物を狙う肉食動物のように鋭く、欲望に滾っていた。

「なんでスカートを覗こうとするのよ!」
「フランのドロワが見たいからに決まってるでしょ!」

ドロワーズ、略してドロワ。要するに下着である。
妹の下着が見たい、と迷い無く宣言するレミリア。
もはや紅魔館の主とは思えない変態っぷりであろう。
フランドールはやむなく部屋の隅の衣装箪笥を指さし、

「ドロワが見たいならそこにいっぱい入ってるから勝手に見てよ!」

と叫んだ。
あの欲望まみれの目で箪笥の中のドロワを見られると思うと、身の毛もよだつ思いだが背に腹は変えられない。
これで姉が満足して帰ってくれたらとフランドールは考えていたが、レミリアの変態癖は予想を遙か上回っていた。

「ちっとも分かってないわねフラン」

ちっちっちっと人差し指を左右に振るレミリア。

「ドロワは履いてるからこそドロワなの! 履いていないドロワなんてただの布よ!!」

きっぱりと言い切った。
フランドールは目眩で倒れそうになる。

「だから早くあなたのドロワを見せなさい。はぁはぁ」

鼻息荒くにじり寄ってくる姉に、ただならぬ恐怖を覚えたフランドールは脇目も振らず逃げ出した。




「待ちなさいフラン!」
「誰が待つか!」

必死に逃げるフランドール。
今はまだ距離が開いているが、スピードに関してはレミリアの方が上。
その上フランドールはスカートを手で押さえながら飛んでいる。
そうしなければ後ろから覗かれてしまうのだが、故にスピードは上がらない。
このままでは程なく姉に追いつかれてしまうだろう。
もし捕まったら、想像しただけで真っ青になるフランドール。

「フラン!」

すでにレミリアはすぐ後ろまで迫っていた。もう逃げることはできそうにない。
かといって戦うとなると技量に長けた姉のこと。接近を許せば逆にこちらが取り押さえられてしまう。
そうなれば、後は姉の思うがまま。
となれば、取るべき手は一つ。

「こうなったら、えい!」

可愛らしいかけ声とともに地下通路の天井に弾幕を放つフランドール。
天井が瓦礫となってレミリアに降りそそぐ。

「ちっ!」

レミリアは舌打ち一つして落ちてくる瓦礫を手で捌く。
だが、一度崩れ始めた天井は亀裂を広げどんどん崩れる。
そしてフランドールの思惑通り崩れた瓦礫は姉と妹を完全に隔てる壁となった。
とはいえ姉はすぐに瓦礫を排除して出てくるだろう。
それまでに隠れる場所を見つけなければならない。
フランドールはスカートを押さえていた手を離し、スピードを上げて廊下を進んだ。

隠れ場所を探そうにもなかなかいい場所は見つからない。
上に行こうかとも思ったが、もしメイドや魔女が姉の手駒だったらまずい事になる。
あの姉のこと、口八丁手八丁でなにを吹き込んでるかわかったものではない。
なんとしてでも姉が諦めるまで地下でやり過ごさなければならない。
そのとき、地響きのような音がした。おそらく瓦礫相手に全力で力を揮ったのだろう。
そんなにドロワが見たいのか、フランドールは心の中で突っ込むが、幸か不幸か答えてくれる人は居なかった。
曲がり角を曲がったところで、ふと、視界の端に一つの扉が見えた。
あそこに隠れよう。なぜかそう判断し、フランドールは扉を開いた。


部屋の中は薄暗かった。
しかし吸血鬼は夜の種族である。
月明かりだけでも普通の人間が晴天の下にいるぐらいに眼が利く。
フランドールは部屋をぐるりと見渡した。
なにも無い。フランドールが身を隠すどころか、虫一匹隠れる場所もない。
それでもフランドールはこの部屋に隠れることにした。今出たら姉と鉢合わせする危険があったからだ。
部屋の隅まで歩いていき、壁に背を預けるフランドール。今はなにより心を落ち着けたかった。

フランドールは純粋な乙女である。
そして実のところ姉に好意を持っていた。
いつかはロマンチックな夜を……なんて考えたこともある。
だがしかし、こんな展開はまったく予想していなかった。望みもしなかった。
フランドールの中でレミリアはたまにドジを踏むけど、尊敬できる姉だったのだ。
それがまさかあんな変態だったとは……

「どうして……お姉様」

フランドールの瞳にうっすらと涙が浮かんだ。



だが運命は彼女に厳しかった。否、運命は彼女の敵だった。



「フ〜ラ〜ン〜」
「ひっ!!」

血が凍てつきそうな声が響いた。
まさかこんなに早く見つかるなんて。
フランドールがそう思うのも無理は無い。
紅魔館は地下部分だけでも相当数の部屋がある。
この部屋に隠れていることを初めから知らない限り、こんなにも早く見つけられるはずがない。
そんなフランドールの思いを察してか、レミリアは得意げに口を開く。

「フランはうまく隠れたつもりだったでしょうけど、
 実は私が運命を操作してこの部屋に誘導したのよ!」

なんという恐るべき能力の無駄遣い。
だが無駄遣いはこれで終わりではなかった。


パチンッ!!


レミリアが指を鳴らす。
それに答えるかのように、部屋に明かりが灯る。
急な光に一瞬目が眩むフランドール。
この隙に姉が仕掛けてくるか、と身構えたがレミリアはその場から動かず黙って床を指さしていた。
フランドールは警戒しつつ視線を下に落とす。
そして驚愕した。

「これってまさか!!」
「そっ、この部屋は床が全部鏡張りなのよ!!」
「なんでそんな部屋があるのよ!!」
「フランのドロワを見るために決まってるじゃない!!」

妹が履いているドロワを見る、そんなことのためになんという執念。
ある種の人間がみたら尊敬どころか信仰の対象としかねない気迫がそこにはあった。
レミリアはすぐさま視線を下に向ける。そこにはレミリアが望んだ幻想郷が見える……はずだった。

「へっ?」

なにも見えない。
鏡はただ色気の無い天井を映しているだけだった。一瞬呆気に取られるレミリア。
そしてはっと気づく。自分達が吸血鬼であるということに。
慌てて顔を上げるレミリア。
しかし致命的な隙を見逃すほどフランドールは甘くなかった。

「バカなお姉様、吸血鬼は鏡に映らないのよ」

古来より鏡はその魂を映すとされる。故に魂と肉体の結びつきが弱い吸血鬼は鏡に映らないのだ。
それは肉体が映らないだけでなく、吸血鬼の存在を示す服や持ち物も映らない、という意味だ。
レミリアは自分が吸血鬼でありながら、すっかりそれを失念していたのだ。間抜けの極みである。

「フッフラン、ちょっと待って!!」

待てと言われて待つバカはいない。
フランドールは力いっぱい振り上げたレーヴァテインを、レミリアの脳天に振りおろした。





「ねえお姉様、なんでこんな事したの?」

仰向けに倒れるレミリアに、フランドールは離れたところから話しかける。

「私、お姉様のこと、好きだったんだよ。それなのになんで……」

フランドールの言葉に、レミリアはそっと口を開く。
先ほどまでとは違う、威厳すら感じさせる口調で。

「過ぎた姉妹愛は悲劇しか生まないわ」

その言葉に、フランドールはレミリアの真意を悟った。
姉は自分の想いを知ってわざとこんな事をしたのだ。
自分が誤った道に進まないように憎まれ役を演じていたのだと。

「そんな……でもっ、私お姉様のことを嫌いになんてなれない!
 なれるわけないよ! だってお姉様のこと愛してるから!!」

たまらずレミリアに駆け寄るフランドール。
だがフランドールが近づくと、レミリアの顔が途端ににやける。

「?」

疑問に思ったフランドールだが、姉の目線を追ってすぐに答えを導き出した。
見えてるのだ。スカートの中が。仰向けに倒れてるところに近づけば当然だろう。

「でへへ〜」

捜し求めた幻想郷を目の当たりにして、鼻の下を伸ばしきっただらしない顔をするレミリア。

「お……お……お……」

反面、怒りに震えるフランドール。
レーヴァテインを高く高く掲げると、

「お姉様のばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

姉の顔面に叩きつけた。










ここは閻魔の裁判所

「……なにか申し開きはありますか?」
「無いわ」

フランドールはレミリアを完膚なきまでに叩きのめした後、死神の渡し船に放り込んだ。
一度骨の髄まで生まれ変わってこい、という言葉とともに。

「無い、つまり罪を全て認めると?」
「認めるもなにも、私は間違った事などしていない!
 だから反省することも、省みることもないわ!」

閻魔相手に堂々と胸を張るレミリア。
その姿はまさに変態の鑑であった。
















『救いようがありません』

閻魔から熨斗をつけて返された姉に、フランドールはただ唖然とするしかなかった。
それでも、絶対に姉を更正させる、そう決意するフランドール。
閻魔すら匙を投げた姉を救わんとするその姿は、まさに妹の鑑と後の世まで語り継がれることだろう。
鏡、屈み、鑑、三つ混ぜたらこんなものが出来ました
clo0001
http://twitter.com/clo0001
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2010/11/05 23:19:34
更新日時:
2010/11/05 23:19:34
評価:
22/23
POINT:
110
1. 9 奇声を発する(ry ■2010/11/07 00:22:44
本当に救いようの無い姉だwwww
2. 7 名無し ■2010/11/07 14:39:13
酷い、これは酷いぞ!
3. 1 たて ■2010/11/13 15:16:47
レミリアは更正する必要はないと思います。
ただただ自分の感情に正直なだけなんです。
4. 6 みなも ■2010/11/13 16:15:07
笑いました、すごい発想ですね。
5. 2 パレット ■2010/11/20 00:03:34
 鑑と屈みはともかく鏡の使い方が冒頭で見当ついちまったような気もしますが、パクッと食べられるおやつ的な掌編という意味でいい感じでした。
6. 3 さく酸 ■2010/11/25 20:28:37
お嬢様のドロワに対する熱い想いは大いにベネ!

まあ、それはともかく、壊れ系のSSということなのですが、短編なのが災いしたのか勢いに乗れないまま終わってしまっています。
読んでいてクスッといく前に終わってしまったようななんかやるせない気持ち。
もう少し話が長ければまた変わっていたでしょうか?
7. 2 asp ■2010/11/29 10:52:29
 私的に全体のテンションに少しついて行きにくかったです。これならオチでもっとインパクトというか大きな展開が欲しかった。
8. 8 yunta ■2010/11/30 22:04:15
執筆お疲れ様でした!

イイハナシダナー。ドロワウォッチャーレミリア、何故か違和感がない。
9. 4 とんじる ■2010/12/02 14:25:57
 まさか閻魔にまで救いようがないと言われるなんて……!

 変態レミリアということで、ギャグとしてはよくある感じですが、テンポよくてサクッと読めるのは良かったです。
10. 7 Admiral ■2010/12/07 12:17:49
なにこれ、レベル高いw
でもこういうのは嫌いじゃないぜ。
キーワードの使い方が上手いですね〜。
テンポの良い文章で一気に読ませる、文章力の高さもお見事ですが…

いいぞもっとやれw
11. 6 PNS ■2010/12/09 20:40:05
うむ、なんとストレートな変態だ
12. 5 藤村・リー ■2010/12/09 22:33:33
 またドロワか。ドロワならしょうがないな。まあドロワだからな。
 あとは基本的にいつものよくあるスカーレット姉妹でした。
13. 5 TUNA ■2010/12/10 00:25:04
レミリアの変態具合に笑ってしまった。
14. 7 リコーダー ■2010/12/10 01:46:59
ドロワが見たかったなら仕方ない。
気がついたらニヤけてたのでこの点数で。
15. 4 deso ■2010/12/11 20:12:49
ちょっと捻りが足りないというか、ギャグならもっと弾けてほしいなあ、と思いました。
16. 2 八重結界 ■2010/12/11 20:21:20
転生、あるいは天性。これはさすがの映姫でも持てあます。
17. 7 木村圭 ■2010/12/11 20:25:37
フランちゃんはドロワを脱ぎ捨てた! レミリアは前言を撤回してもっと発情した!
みたいなオチを思い浮かべていた私は爆発するべき
しかし潔いなこの変態。「履いていないドロワなんてただの布よ」ってオイ。
18. 4 gene ■2010/12/11 20:43:46
軟着陸するかと思いきや変態の鑑で笑わされてしまった……。
19. 5 ニャーン ■2010/12/11 21:01:21
ツカミからノリが良くて、頭を使わずに一気に読めるのが良かったです。
屈みガードは誰かがやってくれると思っていました。
お題を上手く消化されている作品は好印象です。
鑑だけは、文章中に単語が出てきただけのような気もしますが。
20. 6 兵庫県民 ■2010/12/11 21:34:52
えっとつまり…どういうことなんだってばよ(読み終えた後の直感
もうやだ、こんな変態www(褒め言葉
21. 5 如月日向 ■2010/12/11 21:42:58
こういうごり押しな感じのお話しは、けっこう好きだったりしますっ。
お嬢様がもっと突き抜けた変態ぶりを見せてくれたら、もっとよかったですね。
22. 5 リペヤー ■2010/12/11 23:28:57
しょっぱなでやられたww
23. フリーレス 774 ■2017/01/07 20:38:19
普通で普通に面白い
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