近くて、遠い

作品集: 最新 投稿日時: 2010/11/06 23:50:28 更新日時: 2010/11/06 23:50:28 評価: 17/17 POINT: 74
 最近、鏡を見るのが辛い。
 理由は簡単、鏡に映る私に触れようとする度に、自分の限界という物を視界に叩き込んでくるから、だ。

『ふふん、また私の勝ちね』
『……あぁ、そうだな』
『…………ねぇ、何かあったの?』
『いや、今日も私は前を向いて進もうとしてるだけだぜ?霊夢』
『なら、いいん、だけど……』

 昨日のあの時も、嘘は言っていない。
 確かに私は前に、より前に進もうとはしている。
 ただ、どれだけ進もうとしても前に全然進めていないだけだ。
「こんな風に、な」
 私以外に誰もいない自宅だが、誰にともなく呟いて、指をそっと鏡へと近づける。
 鏡像の私の指は実物の私の指と近付いて行き……あと少し、の所でコツンと音を立てそれ以上は近付けなくなった。
 鏡は、ガラスを通り過ぎた光が奥で反射し、戻ってくる事で像を作り出す。
 つまり鏡像は【ガラスの向こう側】にある事になり、ガラスの厚さ以上に近づく事は出来ないのだ。
 これが、ガラスを使った鏡よりも古い時代の物である銅鏡であれば話は変わってくるだろう。
 しかし、鏡と銅鏡の関係を考えるとそれは退化だ。
 それでは、前向きではなく後ろ向きとなってしまう。
「ガラスを使った鏡はガラスを使った鏡である以上、これ以上は近付けない。構造上の問題、か……」
 私は、前に進もうとしている。
 しかしそれは、ガラスの向こう側に触れようとするに等しい行為なんじゃないか?
 ここ数日繰り返している、もう何度目ともしれない堂々巡りを強制終了させ身支度を整え森から飛び立った。
 今日は、早苗と勝負する約束があるんだった。



「白状してください!」
「…………判ったよ、2重の意味で私の負けだ」
 勝負所で雑念が混じり思考が千々に乱れだしたら最早どうにもできず。
 あっさり負け、さらに『何か悩み事を隠しているでしょう!』と問い詰められた。
 勝負で負けたうえに隠し事に対する詰問でも根負けした私は、まだ誰にも言った事のない最近の苦悩を全て話す事にした。



「……ちょっと、待っていていただけますか?」
 一部始終を聞いた早苗は、何かを思いついたのか家の中へと駆けていった。
 訝しんでいると、程なくして早苗は手に筒のようなものを持って私の元へ帰ってきた。
「なんだ、万華鏡じゃないか」
 筒状の物、それは万華鏡だった。
 手渡ししてもらって中を覗いてみたが、中に特殊な文様が刻んであったりするわけでもない、普通の万華鏡だった。
「確かに、普通の、万華鏡、ですけど、ね」
 私から万華鏡を返されると、早苗は底の部分を持ち力を込めて回したりし始めた。
「お、おいそんなことしたら――」
「いいんです!実際に見せるためならばこれくらいの事!!」
 見せる?何を?と問う間もなく。
 早苗は底の部分を外し底面の鏡を取りだした。
「さぁ、触ってみてください」
「え?」
「いいから!」
 勢いに圧され私は早苗の持つ鏡に触れ……驚愕した。
「な、何だこれ!?」
 家にある鏡とは全然違い、鏡像の指先と実際の指先はほとんどくっついていた。
「表面反射鏡、というのだそうですよ」
「ひょうめん、はんしゃ……?」
「この万華鏡に使われている鏡は、ガラスの表面を加工してあるんだそうです」
 なるほど、だからこんなに近くなるのか。
「どうです?ちょっと変えるだけでまだまだ伸び代はあったんです」
「さっきの話か?」
「そうです。これでもまだ限界がこんな手前にあるなんて思いますか?」
 とどのつまり、ただこれを実践するためだけにわざわざ万華鏡を持ってきてしかもそれを解体したらしい。
「……良いのか?その、外の世界由来っぽい万華鏡解体しちまったが……」
「水臭い事言わないで下さいよ、同じ人間同士じゃないですか」
 実にあっけらかんと言い放ってくれやがる。
 ……ここまではっきり言われちゃ、もう返す言葉はないな。
 最近めっきり使っていなかった筋肉を久しぶりに使い、今自分にできる最高と思える笑顔で別れの挨拶をして私は神社を後にした。



 まったくもって、最近の私は私らしくなかった。
 自宅の扉を開けながら、そう考える。
 鏡を見て、自分をそれになぞらえへこむなんて、きっと悪いものでも食べた所為に違いない。
 早苗が見せてくれたように、思わぬ発想の転換でまだ見ぬ地点が見えてくる事も十分にありそうだ。
 さっそく、パチュリーのいる図書館に顔を出して知識を深めてみようか。
 いや、今の自分が使える魔法を改めておさらいして、応用を考えたりあるいは一つの使い道をとことん極めたりするのもよさそうだ。
 ふと、朝と同じ鏡に目を向ける。
 だがもうその行為に辛さなんてない。
 むしろ、嬉々としている自分の顔を見るとさらに気分が高揚してくるようだった。

 大丈夫だ。私は、まだガラスの壁に遮られてなんかいない。
鏡、か……そういえば、鏡の像にはガラスの厚さがあるせいで触れないって話を聞いた記憶があるな。
よしこれをベースに話を考えよう。(鏡について検索中)表面反射鏡……だと……?

そんなこんなで生まれた一発ネタでした。
K.M
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最新
投稿日時:
2010/11/06 23:50:28
更新日時:
2010/11/06 23:50:28
評価:
17/17
POINT:
74
1. 1 パレット ■2010/11/20 00:38:57
 一発ネタ……にしても、ちょっとネタを原型ままで出しすぎてるような。せめてもう少しお話としての体裁が整っていれば……。
2. 5 tuna ■2010/11/25 15:33:01
万華鏡に使われる鏡って特殊なのかー。
面白かった……んですが、もっと長く読みたかったかも。
3. 4 さく酸 ■2010/11/25 20:25:24
鏡を通して、魔理沙の霊夢の強さに対する葛藤をうまく描いています。
励ましに万華鏡を使ったところはいい感じで個人的に好きなのですが、早苗にその行動をさせるだけの根拠がないため、何でそこまでするの?と思ってしまいました。
構成や表現はいい線行っているので、次はもう少し長い話にチャレンジしてみてください。
4. 3 asp ■2010/11/29 11:42:26
 短さにびっくり。唐突に始まって唐突に終わったような置いてきぼり感。お話としては悪くない(せっかく面白い"かがみ"の使い方なのに)のですが……。あと20kbくらい書いてもよかったような気がします。
5. 5 日比谷 ■2010/11/29 18:44:22
ふむ。
6. 8 みなも ■2010/11/30 17:26:01
友人のために万華鏡を解体するさなえさん、カリスマです。

まりさもかっこいいですね!
7. 7 yunta ■2010/11/30 22:43:03
執筆お疲れ様でした!

うーむ。なんだか、すごく面白くなりそうなネタですね。
それだけに掌編だったのが悔やまれます。鏡にも色々あるんですねぇ。
8. 10 さわでー ■2010/12/02 00:48:40
いいね、これでこそ魔理沙だ!
9. 2 とんじる ■2010/12/02 15:06:49
 全体的に説明不足に感じました。
 発想は面白いと思うのですが、それを納得させるだけの説得力と文章量が明らかに足りていない印象。

 鏡に映った自分=理想の姿だと考える、というあたりも説得力に欠ける。
 普通、鏡に映る自分って、ありのままの自分だと思うものではないのだろうか……。鏡に映った自分=理想の姿と思うに至る魔理沙のエピソードが欲しかった。
10. 5 ケンロク ■2010/12/07 13:39:14
実に明快な一発ネタ。
個人的に「魔理沙」というキャラについての考え方が近い気がしたのがちょっと嬉しいです。
11. 3 リコーダー ■2010/12/10 01:01:40
知らないと確かに意表を突かれますね。それで元気になってしまうんだから、人の気分なんて安いものです。
12. 2 ニャーン ■2010/12/11 20:46:54
表面反射鏡というものがあるのですね、勉強になりました。
魔理沙の悩みはこんなに簡単に晴れるものなんでしょうか。
13. 2 八重結界 ■2010/12/11 20:47:49
全速力で話が駆け抜けていったような。そんな印象を受けました。
14. 4 deso ■2010/12/11 21:00:45
うーん、ネタは良いと思うんですが、もう少し書き込んでもいいんじゃないかと。
このままだと、あっさりしすぎててもったいないです。
15. 5 如月日向 ■2010/12/11 21:53:53
早苗さんがステキっ。
16. 3 gene ■2010/12/11 22:31:14
これはとんち話のように読んでしまいました。
魔理沙なら鏡にぶつかって破壊して「向こう側に行ったぜ」とか言いそうな気もします。
表面反射鏡なんてのは初めて知りました。鏡にも色々あるもんですね……。
17. 5 兵庫県民 ■2010/12/11 23:02:01
そこは水面でおk、じゃないのか?ww
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